犬の外耳炎|症状・原因・治療法・予防法・対処法を皮膚専門獣医師が解説
外耳炎は、犬の病気の中でも特によく見られる病気です。今回は、耳の病気に力を入れている獣医師としてhiff cafe tamagawa院長の後藤が、犬の外耳炎の症状や原因、治療法や予防法、対処法などについて解説します。
犬の外耳炎とは
外耳炎とは、外耳という耳の中でも、鼓膜の手前の領域に炎症が起きることをいいます。
外耳炎は命に関わる緊急性の高い病気ではないものの、犬が苦しむ病気です。その理由として「治りにくく、治療が長期化する」「治ったと思っても、治療を辞めるとまた悪化する」「毎年繰り返す」ことが挙げられます。
外耳炎の原因はさまざまあり、またいくつかの原因が組み合わさり、病態を複雑化・長期化している場合もありますので、愛犬の耳の異常に気づいたら、早急に動物病院へ連れて行きましょう。
犬の外耳炎の症状
初期症状
- 耳が赤い
- 耳が臭う
- 耳を振ったり、掻いたり、こすったりする
- 耳垢が出る
- 元気がない
慢性症状
- 痛み
- 耳道閉塞
- 音に対する反応が低下
- 斜傾や神経症状
慢性症状にまで進行すると、日常生活に支障が出る恐れがあります。
外耳炎は比較的、発見しやすい病気のため、愛犬の耳が臭ったり、汚れていたり、よく耳を気にする様子が見られれば、動物病院へ連れて行きましょう。
前述の通り、外耳炎は治りにくく、治療が長期化する病気です。早期発見・早期治療が愛犬のためになります。
犬が外耳炎を引き起こす原因
主因
- アレルギー性疾患
- 内分泌疾患(ホルモン疾患)
- 分泌腺(耳垢腺)の問題
- 異物(植物のノギ、耳毛など)
- 感染性疾患
- 免疫介在性疾患・自己免疫性疾患
- 角化障害
- 微生物、寄生虫やウイルス
二次的原因
- 細菌、真菌、酵母菌
- 薬剤に対する反応
- 過剰な耳掃除
上記の通り、原因はさまざまあります。
原因が1つの場合もありますが、複数の原因が関与する場合もあります。そのため、外耳炎の病態は複雑化する場合があります。
犬の外耳炎の治療法
- 経口薬
- 外用薬(軟膏や点耳薬)
- 耳洗浄
- 外科手術
すべての外耳炎に万能な薬はありません。
外耳炎は発症した時期によって、原因が異なることがあります。原因によって使用する薬が変わったり、複数の薬を組み合わせたりします。
また剤形も「外用薬(点耳)」「経口薬」「注射薬」などさまざまあります。外耳炎の治療は、まさにオーダーメイドの治療となります。
犬の外耳炎の予防法
定期的な受診
炎症反応とは、火事と似ているといわれています。というのは、より小さな火事(軽度の炎症)を消火(消炎)するほうが、大火災(重度の炎症)を消火するより、簡単に消すことができます。つまり、外耳炎も定期的な獣医師のチェックを受け、より早期に炎症を見つけることができ、早期に治療を開始することが可能となります。
外耳炎を起こしやすい犬は、調子が良いときでも月に1回、不安がある季節や時期は、月に2回程度の定期検診を受けることをお勧めします。
定期的な耳のケア
病院や家での定期的な洗浄を行うことで、外耳炎を予防することができます。病院では家でのケアと異なり、カテーテルなどを用いてより積極的な洗浄やケアができるので、可能であれば定期的に病院で、獣医師や看護師に行ってもらうことをお勧めします。
プロアクティブ療法
人のアトピーの治療を元にした治療法です。外耳炎を起こしやすい犬に対し、調子がいいときにも消炎効果のある点耳薬を週に二回程度投与することで、外耳炎を予防する方法です。
犬の外耳炎の予後
外耳炎の予後は実にさまざまです。短期間の治療で治癒する場合もあれば、再発を繰り返さない場合もあります。
重症例の場合、耳道が閉塞したり、内耳炎へ発展し、神経症状を引き起こす恐れもあります。
繰り返す犬の外耳炎の要因
外耳炎の再発には、外耳炎になりやすくする要因(促進要因)が関連しているかもしれません。
促進要因
- 耳の形状や耳毛の発育具合など、構造上の特徴
- 過度の湿度
- 腫瘍やポリープなどにより、耳道が塞がっている
- 中耳炎がある
- 全身状態の低下
- 治療の結果(不適切な方法での耳掃除、正常細菌叢の異常な変化)
つまり、再発を繰り返す外耳炎には、実は耳道内に腫瘤があったり、中耳炎があったりなど、思わぬ要因が根底に隠れている可能性があります。
犬の外耳炎はそれぞれに合った治療が大切
外耳炎は「治療の長期化」「治療を辞めると悪化する」「毎年繰り返す」といった可能性がある病気です
原因はさまざまあるため、治療もオーダーメイドになります
早期発見・早期治療が重要です
外耳炎の予防には耳のケアや月に1〜2回の定期検診をオススメ
再発を繰り返す外耳炎には、思わぬ要因が根底に隠れている可能性も
さまざまな原因で引き起こされる外耳炎。
一度発症すると、臭いや痒みだけでなく、重症化すると痛みや元気の消失や神経症状をもたらすこともあり、生活の質を著しく下げます。
動物病院で定期的なチェックを受け、より早期の発見に努めましょう。
引用文献
- Small Animal Dermatology – A Color Atlas and Therapeutic Guide – By Keith A. Hnilica, Adam P. Patterson
- Muller and Kirk's Small Animal Dermatology 7th Edition By William Miller Craig Griffin Karen Campbell
- 『アニコム家庭どうぶつ白書2016 』(アニコムホールディングス)
- 『犬と猫の耳の疾患』(文永堂出版)小方宗次監訳