感情が不安定な人は犬に噛まれやすい!? 咬傷事故の実態を海外論文から紹介

皆さんの中には子どもの頃、犬に追いかけられた経験や噛まれた経験がある方がいると思います(もちろん大人になってからも)。最近では赤ちゃんが犬に噛まれて亡くなったニュースが記憶に新しいですよね。犬の咬傷事故はどれくらい起きているのでしょうか? 今回はイングランド北西部のチェシャー州の一般家庭において、犬にかまれた経験がある人がどれだけいるか調査した論文を紹介します。噛まれやすい人にはどんな特徴があるのでしょうか?

感情が不安定な人ほど噛まれやすい?

犬の咬傷事故は病院の記録に基づいて行われることが多いため、治療を必要としない咬傷事故は調査対象から外れがちです。そこでイギリス・リバプール大学のCarri Westgarthら研究チームは、聞き取りによって「犬に噛まれた人がどれだけいるか」「どんな人が犬に噛まれやすいのか」を調査しました。その結果わかったのは、主に以下の3点です。
  1. 4人に1人が犬に噛まれた経験がある。
  2. 女性より男性の方が噛まれやすい。
  3. 感情が不安定な人ほど噛まれやすい。
アンケートに回答した人のおよそ25%が人生で一度は犬に噛まれたことがあると回答しました。男女を比較すると女性より男性の方が咬まれる確率が1.18倍高くなり、多頭飼いをしている人のほうが犬を飼ったことがない人に比べて3倍ほど高いということもわかりました。犬に咬まれる人の特徴としてわかったのは、怒りっぽかったり涙もろかったり、感情の起伏が激しい人ほど犬に咬まれるリスクが高いということでした。

また、多くの咬傷事故は医療処置を必要としないことも分かりました。これは病院の記録としてデータが蓄積されていないということです。Carri Westgarthらは公衆衛生の観点からも、咬傷が起きた状況や怪我の特徴などを調べることが事故の減少につながるとしています。

人の性格で犬に噛まれるリスクが変わる

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Carri Westgarthらは、主に以下の4つを目的として今回の調査を行いました。
  1. 病院での報告例と地域レベルでの実態調査によって、咬傷事故の平均値を推定する。
  2. 治療を必要とする咬傷事故がどれくらいあるかを調べる。
  3. 犬に噛まれたことがある人にどのような特徴があるかを調べる
  4. 咬まれた人と犬の関係を調べる (飼育経験や初対面かどうかなど)。

実は2001年にアメリカ・ペンシルベニア大学のKL Overallら研究チームによって同様の調査が行われていたのですが、この調査では年齢と性別に偏りがありました。そこで今回の調査ではチェシャー州の1280世帯を対象にアンケートを行い、回答をした385世帯、合計694人の結果から分析が行われました。

その結果、回答者のおよそ25%である172人が人生で一度は犬に噛まれたことがあると回答しましたが、1年以内に犬に噛まれた人は13人でした。その13人以外はいつ噛まれたのか調べたところ、回答者の44%は16歳未満のときに噛まれていました。

Carri Westgarthらは、今回の調査はチェシャー州という限られた地域で、若干女性の方が多く、5歳未満が対象になっていなかったことから、今後さらに広範囲での調査が必要だとしていますが、病院の記録に無いデータが収集できたことには一定の成果があったと述べています。

過去の調査では、2012年にスイスの医学誌「Int J Environ Res Public Health.」に、アメリカの子ども約900人を対象に調査したところ、内気な子どもほど犬に噛まれるリスクが高かったという報告が掲載されています。また、動物誌「Anthrozoos」においても犬がストレスを感じる要因は飼い主の人格や犬との関わり方が重要だと報告されており、Carri Westgarthらは、今回の結果がそれらを裏付けるものになったとしています。

ペトこと専属トレーナーコメント

噛まれやすい人にはいくつか共通する特徴があります。

  • 犬を怖いと思っている。
  • どんな風に触っていいかわからない。
  • 噛まれないか不安。
こういった人たちは、「噛まれたくない」という不安な気持ちから、無意識に威圧的な行動をとりがちです。犬の視界から外れる場所を触れようとして上から覆い被さるように頭を撫でようとしたり、犬が見てないすきに背中を触ろうとしたりするなど…。

犬は、視覚、嗅覚を使って挨拶をします。「見えない」「嗅げない」状態で触れようとすれば、「怖い」「警戒すべき対象」になるため、噛まれやすくなるのです。

犬にもそれぞれ性格があります。怖がりな子もいれば、全然気にしない子もいます。犬と触れ合う時には飼い主さんに「触ってみたいけどすこし怖いんです」という自分の気持ちを伝えるようにしましょう。そうすることで、飼い主さんが「触って大丈夫ですよ」「この子も怖がりなので、まずにおいを嗅がせてください」など、その子にあった触り方を教えてくれます。


犬に噛まれる原因は性格以外にもあるか

2017年時点でイギリスにはおよそ850万匹の犬が飼育されており、犬の咬傷によって入院する患者は年間に約7000件にのぼります。今回の調査で犬に咬まれる原因には人間の性格が関わっていることがわかりましたが、Carri Westgarthらはさらに飼い主の経済力など、噛まれやすい特徴として別の要因がないかを調べていくとしています。

調査概要