
猫の体が傾いていないにもかかわらず、首が曲がったまま頭だけが片方に傾いているような場合や、フラついたり、一方的に円を描いて歩くようなときは注意が必要です。重症化すると転倒や起立不能に陥ります。これは前庭疾患と言い(前庭=耳の内部にあるバランスを保つ器官)、原因は大きく末梢性と中枢性の二つに分かれます。今回は猫の前庭疾患について、考えられる原因と病気を白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問獣医師で獣医循環器認定医の佐藤が解説します。
この記事のまとめ
- 猫の頭が片方に傾くのは、平衡感覚を保つ前庭の異常(前庭疾患)が原因のことがある
- 原因は耳の奥に原因がある「末梢性」と、脳に原因がある「中枢性」に分かれる
- 最も多いのは外耳炎が進んだ中内耳炎で、ほかに腫瘍や突発性前庭障害、脳炎などが考えられる
猫の顔が片方に傾いている場合に考えられる原因と病気
猫の頭が傾く原因は、耳の奥の前庭などに原因がある「末梢性」と、脳に原因がある「中枢性」に分けられます。
中内耳炎(末梢性)
最も多い原因としては、中内耳炎が考えられます。真菌、細菌、ダニによる外耳炎が進行し、炎症が鼓膜の奥にある前庭という器官にまで影響を及ぼすことで発症します。前庭は平衡感覚を保つ役割を担っているため、ここが侵されると、頭が傾いてしまうことがあります。また、不適切な耳の洗浄により神経を損傷させて症状を起こすこともあるため注意が必要です。
耳道や中耳の腫瘍(末梢性)
高齢の猫は耳の中に腫瘍が存在している場合もあり、これが平衡感覚を狂わせている可能性があります。
突発性前庭障害の場合(末梢性)
頭が傾くのに加え、嘔吐を繰り返すことがあります。原因が特定できないような場合には突発性前庭障害と診断される場合が多いです。
その他(末梢性)
まれに甲状腺機能低下症、アミノグリコシド中毒、頭部の外傷などが挙げられます。
脳炎(中枢性)
髄膜部分に細菌が入り込み、症状が出る髄膜脳炎という病気が考えられます。また、猫伝染性腹膜炎(FIP)といったウイルス感染症による脳炎がかかわることもあります。生後6ヶ月〜3歳の子猫に多く見られ、発症すると命を落としてしまうケースもあります。初期症状としては、頭が傾く以外に元気や食欲の減退、急激な体重減少や発熱などが見られます。
その他(中枢性)
まれに脳腫瘍、頭部外傷、脳血管障害、メトロニダゾール中毒などといった病気が考えられます。
さいごに
ペットが健康な状態を維持するためには、獣医師が最善の治療をすることはもちろん、飼い主の皆さんがペットの異変を察知することが必要です。しかし、動物の病気を判断することはとても難しいことです。ペットへの知識を増やせば、最悪の事態を防ぐ手助けになることは間違いありません。