犬のアナフィラキシー|症状・原因・対処法・治療法などを獣医師が解説
アナフィラキシーとは、アレルギー反応のひとつで、食べ物やワクチン(薬)、毒物などを外部から摂取した際に激しい免疫反応を起こして全身に症状を引き起こし、最悪の場合、命を落とす恐れがあります。今回はアナフィラキシーの中でも重篤なアナフィラキシーショックを中心に、獣医師の越後谷が説明していきます。
病態 | アナフィラキシー | |
---|---|---|
症状 | 緊急度の高い場合(アナフィラキシーショック) | 複数回の嘔吐・下痢・失禁、痙攣、呼吸困難など、全身に症状が表れ、時間の経過と共に重症化します。 |
軽度の場合 | 顔面の腫れ、痒み、喘息など、部分的な症状が見られます。 | |
原因 | ワクチンや薬物、食べ物、蜂や蛇の毒、感染症など | |
危険度 | 高め。アナフィラキシーショックを起こすと命の危険がありますので、早急に動物病院へ。軽度の場合でも、重症化する恐れがあるため、落ち着いたら受診しましょう。 |
犬のアナフィラキシーの症状
緊急性が高い場合(アナフィラキシーショック)
アナフィラキシーショックを起こすと全身に症状が表れ、時間の経過と共に重症化します。- 複数回の嘔吐、下痢、失禁
- 呼吸困難
- 瞳孔散大
- 粘膜蒼白
- チアノーゼ(舌が真っ青になること)
- よだれ
- 意識混濁
- 昏睡状態
- けいれん
軽症の場合
軽度の場合は、以下のように部分的な症状が見られることが多いです。- 痒み
- 顔面の腫れ
- 皮膚炎
- 蕁麻疹
- 鼻炎
- 気管支炎
- 喘息
- 元気がない
- 単発の嘔吐や下痢
他の病気と区別ができる特徴的な症状がないため、アナフィラキシーを特定するには、発症前にどのようなことがあったか、飼い主さんからの情報がとても重要になります。
犬のアナフィラキシーの原因
ワクチンや薬物
投与直後または数分から数時間後に症状が現れます。まれに翌日に出ることもあります。そのため、アナフィラキシーが出ても対処できるように、ワクチン接種はなるべく午前中に行いましょう。
また、激しい運動や過度なストレスはアナフィラキシーを誘発するため注意してください。
食べ物
人のようにアナフィラキシーを引き起こす可能性がある食べ物は詳しく分かっていません。犬種や個体差も発症要因として考えられます。新しいご飯を与えるときや、草むらで遊んでいるときに虫やカエルなど、普段食べていないものを食べたときには、様子をよく見てあげることが大切です。
蜂やヘビの毒
蜂に刺されたり、ヘビに噛まれたりすることで命に関わるアナフィラキシーショックを発症する恐れがあります。症状は急速に表れるため、蜂に刺された場合はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
感染症
寄生虫などが体内に侵入した場合に、発病しないようにする抵抗力を「免疫」といいます。この免疫が過剰に反応するとアナフィラキシーを発症します。犬のアナフィラキシーに対する対処法
愛犬にアナフィラキシーが出たら、その原因次第では以下のような対応ができます。
アナフィラキシーショックを起こすと、一刻を争う緊急事態のため、飼い主さんで応急処置をしようとせず、早急に動物病院で医療処置を受けましょう。
ワクチン接種後
軽症なものだと、犬を興奮させずに落ち着かせることによって、症状が緩和していくこともあります。しかし、重篤となるか、軽症になるかを飼い主が見極めるのは困難です。そのため、症状が出たらまず動物病院に連れて行きましょう。症状が早く出る場合は重症になる傾向があるため、接種後15分~30分は病院内で待機してもらうのはこのためです。
食べ物によるもの
食べ物が口に入っている場合は窒息する危険性があるため、噛まれないように注意しながら口から出してあげてください。蜂やヘビの毒によるもの
まず刺された箇所を確認し、針が残っているようなら針を抜きます。ヘラ状の物や固い紙などではじき飛ばすようにすると良いとされています。その後は毒を絞り出すように患部を流水で洗い流し、腫れや痛みを和らげるために患部をよく冷やします。
この処置はあくまで犬が大人しい場合のみで、無理強いはしないでください。
犬のアナフィラキシーの治療・薬
急性アナフィラキシーの場合
犬の状態を判断しながら早急に治療を行います。はじめにショックを緩和させる薬(エピネフリン)を投与します。エピネフリンはアナフィラキシーショックの治療に使われる最も重要な薬物です。
筋肉内に投与されるとすぐに吸収され、ショック状態を素早く改善させることができます。
次に気道を確保して酸素吸入を行い、点滴をしながら血圧が安定するまで薬の投与を繰り返します。
この時に心臓が停止していれば同時に心臓マッサージも行います。症状が出始めてから処置までの時間が長いほど命の危険性は高まります。
軽症の場合
抗ヒスタミン剤やステロイド剤の薬を投与して症状がひどくならないかを観察します。基本的には薬の効果が出てくる数時間後には症状は軽減されますが、症状によっては動物病院で1日経過観察する場合もあります。
犬のアナフィラキシーの予後
症状が出始めてから処置を始めるまでの時間が長いほど命の危険性は高まり、最悪の場合は手遅れになります。また心臓が止まっている時間が長ければ、蘇生しても脳の機能障害が残る可能性があります。
症状が改善された後も数日間は再発の可能性があるため、3日間程度は十分な経過観察が必要です。
アナフィラキシーを起こした場合、原因物質を特定して今後はそれを摂取しないようにしなくてはいけません。
また以前にワクチン接種で反応が出た犬に対しては、接種前に予防薬を投与してからワクチンを接種する場合もあるため、獣医師と相談しましょう。
まとめ
アナフィラキシーとはアレルギー反応のひとつです
軽度な場合は部分的、重篤な場合は全身に症状が出ます
アナフィラキシーショックを起こすと、生死に関わります
アナフィラキシーショックの原因は日常にも潜んでいます
愛犬がアナフィラキシーショックを起こしたら早急に動物病院へ
アナフィラキシーは、日常生活の些細な変化で起こる病気のため、飼い主が注意深く観察し、可能性のある原因を取り除くことが最も効果的な予防となります。
少しでもいつもと違うと感じたら、動物病院に連れて行き、早期発見・早期治療を心がけましょう。
参考文献
- ワクチン副反応 ~緊急時の対処法~ Small Animal Clinic No187 2017年7月
- What’s up with my DOG? チャートでわかる愛犬の症状と応急処置 インターズー 2010年
- イラストで見る獣医免疫学 ~免疫疾患の仕組みから治療まで~ 第7版 2011年
- 動物の免疫学 文永堂 2001年
- アナフィラキシーガイドライン 2014年 日本アレルギー学会
- Anaphylaxis in dogs and cats :Jouranal of Veterinary Emergency and Critical Care 2013年
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女性獣医師は、獣医師全体の約半数を占めます。しかし、勤務の過酷さから家庭との両立は難しく、家庭のために臨床から離れた方、逆に仕事のために家庭を持つことをためらう方、さらに、そうした先輩の姿に将来の不安を感じる若い方も少なくありません。そこで、女性獣医師の活躍・活動の場を求め、セミナーや求人の情報などを共有するネットワーク作りを考えています。
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