猫のおしっこが臭いときの対策や理由などを獣医師が解説
以前はペットといえば犬が主流でしたが、現在では共働き世帯の増加や少子化の影響で散歩などの手間のかからない猫を飼う方が増えています。ペットフード協会が実施した全国犬猫飼育実態調査では2017年に初めて犬の飼育頭数よりも猫の飼育頭数が上回りました。猫は完全室内飼いが可能で狂犬病予防接種の義務がないなど飼う上でのハードルが低いことから人気が上昇していますが、おしっこの独特な匂いが苦手で踏み出せないという方もいます。今回は猫の独特なおしっこ臭について獣医師の福地がご説明します。
猫のおしっこについて
おしっこは腎臓で作られます。体に摂取されたタンパク質は分解されてアンモニアになった後、肝臓で尿素に変えられたのちに腎臓でおしっことして排泄されます。代謝される前のタンパク質自体は腎臓の糸球体という網目のような部分で濾し取られるため、ふつう動物のおしっこにタンパク質はあまり含まれていません。
なのでおしっこにタンパク質がたくさんある時はいわゆるタンパク尿ということで腎臓の異常を示すものとして知られています。
しかし猫は腎臓の機能が正常であってもおしっこにタンパク質が多く含まれています。タンパク質の構成単位であるアミノ酸にはさまざまなものがありますが、フェニリンというアミノ酸は猫やネコ科のおしっこにだけ存在しています。
このフェニリンが作られる際にコーキシンというタンパク質が必要なのですが、これがおしっこにそのまま排泄されるため腎臓に問題なくても猫のおしっこはタンパク尿になっています。フェニリンが分解されてできるル3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールなどが猫の独特のおしっこの匂いのもとになっています。
猫のおしっこが臭いときに考えられる病気
猫のおしっこは他になんともたとえがたい独特の臭いを持っています。どれだけ健康な猫ちゃんであっても基本的におしっこは臭いものです。
危険な尿と正常な尿の見分け方
普段から愛猫の正常な尿の色や臭いをチェックしておくとわかりやすいかもしれません。泌尿器疾患
細菌感染による膀胱炎がある場合、健康な時のおしっことはまた違う臭いを発するようになります。細菌をやっつけようと白血球がたくさん出てくるため、おしっこは全体的に白っぽくなったり、細胞のかけらが白いくずのようなものとしてみられるようになります。また、ウレアーゼ産生菌が尿に存在すると、アンモニアを発生してきつい臭いになります。
糖尿病
糖尿病が進行してケトン尿になってくると、甘酸っぱい臭いになります。猫のおしっこの臭い対策
この独特な匂いの原因物質であるフェニリンのおしっこへの排泄は、去勢していない雄猫でとくに多く、去勢済みの雄猫や雌猫では 少ないことも明らかになっています。また、生後3ヶ月未満の子猫ではフェニリンがみられず成長とともに増加することもわかっており、猫の縄張りを示す臭い物質や異性を惹きつけるフェロモンの前駆体になっていると考えられています。
現在この臭いの大元から消臭するような製品や方法はありませんが、猫ちゃんが病気でなければ以下のような対策である程度は臭いを抑えることができます。
- こまめなトイレ掃除
1日2回は最低でも汚れている部分をとって捨てたり、週一度の砂の全替えやトイレ自体の水洗いで臭いを最低限に抑えることができます。 - 去勢手術
去勢していない雄猫の尿には多くのフェニリンが含まれています。去勢することである程度臭いを抑えることができます。
その他、おしっこがついた布製品をクエン酸やミョウバン水で洗ってから洗濯機をまわすのも有効です。既成のペット用品でも臭い対策としてさまざまなものが販売されています。市販されている猫のフェイシャルホルモン製剤を粗相してしまう場所に用いることでそこでの失敗がなくなることもあります。
何回もトイレ以外の場所でおしっこをしたり、いつもと違う臭気がする場合は病気の可能性もあるのでその時は受診するようにすることをおすすめします。
猫のおしっこが臭い場合はこまめなトイレ掃除を
猫の祖先はもともと雨の少ない地域で生息していたため、限られた水分を効率的に利用するためにさまざまな工夫をしていました。他の動物にはみられない臭い物質を尿中に出すのもその生態が残っているためかもしれません。
トイレはこまめに掃除するなどして猫につきものの臭いと折り合いをつけていけるとよいですね。
参考文献