猫のかぎしっぽは幸運を運ぶ?かぎしっぽになる原因や種類を紹介!
猫のイラストを見ると、ほとんどの場合は長くてまっすぐな、すらりとしたしっぽに描かれていることが多いです。しかし実際は、猫のしっぽには短かったり長かったり丸まっていたりと、いろいろな形があります。曲がっていたり丸まっていたりするしっぽは「かぎしっぽ」と呼ばれ、日本の猫に多く見られるといわれています。今回は猫のかぎしっぽについて、種類や原因などを紹介します。
猫のかぎしっぽって?
英語で猫のかぎしっぽはなんて呼ぶ?
かぎしっぽのことを英語では「Kinked tail(キンキッド・テイル)」と呼びます。日本語では「かぎしっぽ」なので、そのまま英語に直すと「Key tail」になりそうですが、英語では「よじれたしっぽ」という意味の「Kinked tail」と呼ばれているようです。「ごめん寝」や「アンモニャイト」のように、猫の様子を表す際にほかのものに例える言い方は、日本特有なのかもしれません。
猫のかぎしっぽが幸運のしるしといわれる理由
かぎしっぽは幸運のしるしといわれているため、「かぎしっぽの子が欲しい」という方もいます。かぎしっぽは言葉どおり、かぎの形をしているので、日本では「財産を守ってくれる」、「商売繁盛をもたらしてくれる」といわれ大事にされてきました。
またヨーロッパでは、曲がっているしっぽが「幸運を引っ掛けてくる」ということで幸運のしるしとされているようです。
猫のかぎしっぽの種類
猫の長いかぎしっぽ
長くてまっすぐに見えても、途中で曲がっていたり先のほうだけキュッと丸まっているようなかぎしっぽの猫もいます。このタイプのかぎしっぽの子は、かぎしっぽの中でも一番多いタイプかもしれません。一見まっすぐに見えても、触ってみたらちょっとだけかぎしっぽだったということもあります。
猫の短いかぎしっぽ
猫のしっぽの長さはさまざまで、長いしっぽの半分、もしくは3分の1くらいの長さしかない、短いしっぽの子もいます。そのような短いしっぽでも、しっぽの途中や先が曲がっていることがあり、これもかぎしっぽと呼ばれます。しっぽの長さが中途半端な子も珍しくはありませんが、長いかぎしっぽよりは少ないでしょう。
猫の丸まったかぎしっぽ
ジャパニーズボブテイルに代表されるような、まるでウサギのしっぽのように丸く見えるかぎしっぽもあります。豚のしっぽのようにくるっと丸まっている子もいれば、ちょっとだけ曲がっている子もいます。筆者は保護活動しているので、これまでに100匹以上の猫を保護してきましたが、ジャパニーズボブテイルのような丸いしっぽがちょこんと付いているタイプのかぎしっぽの子は少なく、数匹しか保護したことはありません。
猫がかぎしっぽになる原因は?
かぎしっぽにはさまざまな形があることがわかりました。スタンダードな猫のしっぽはまっすぐに伸びた長いしっぽですが、ではなぜかぎしっぽになるのでしょうか。原因は三つあります。
- 野生で生き残るのは難しい
- 遺伝による
- 事故による後天性のもの
1. 野生で生き残るのは難しい
猫の祖先は、中東からエジプトにかけての砂漠地帯に生息しているリビアヤマネコであることがわかっています。このリビアヤマネコのしっぽを見てみると長くすらりとているので、かぎしっぽの個体はいないように見えます。猫がペットとして飼われるようになったのは古代エジプトの時代であるとされていますが、古代エジプトの猫の銅像や壁画を見ても、猫のしっぽはすらりと長く表現されています。
これらのことから、現在のように猫が世界中に広まるようになる以前は、かぎしっぽの猫はほとんどおらず、ヒョウやチーターのしっぽのように長くまっすぐなしっぽであったと考えられます。
しっぽは猫にとって重要な器官であり、走ったり高いところに登ったりする際にバランスを取る役割も担っています。ですので野生で生きるうえでは、長くすらりとしたしっぽであることが重要になってきます。
それらのことをふまえると、かぎしっぽや短いしっぽの子は、野生で生きるには不利であると考えられます。野生の猫として暮らしていたときには、かぎしっぽの子が生まれたとしても淘汰されてしまう可能性が高かったでしょう。
2. 遺伝による
かぎしっぽになる原因は、主に遺伝によるものであると考えられています。猫のしっぽは、18~20個の尾椎という骨で形成されています。その骨が、くっついてしまったり少なくなってしまうことによって、しっぽが短くなったり曲がったりします。猫は、突然変異によってさまざまな毛色やかぎしっぽの子が生まれるようになりました。また、人間と暮らすようになったことで、そのような子でも生き延びられるようになりました。
そのような子が生き残って子孫を残した結果、しっぽが長い子や短い子、曲がった子などの交配が進み、かぎしっぽの子も多く生まれるようになったと考えられます。
3. 事故による後天性のもの
生まれたときからかぎしっぽであるほかに、事故などによりかぎしっぽになることがあります。猫のしっぽは長いので、ドアに挟まれたり車にひかれたりなどの事故に遭ってしまうことがあります。その事故によって骨折してしまい、それが固定されると後天的なかぎしっぽになる可能性があります。筆者は高速道路に捨てられた子猫を保護したことがあります。高速道路でしっぽの先を車にひかれてしまったのか、しっぽの先が骨折し、折れ曲がり、最終的にミイラ化してちぎれ落ちてしまいました。
しっぽがちぎれてしまった当初は骨が見えていたのですが、徐々に肉が骨を覆い、ちょっと丸まったしっぽになったことがあります。このように、後天的な理由によってしっぽの形が変わってしまうこともあるでしょう。なお、その子は現在は里親さんのところで幸せに暮らしています。
かぎしっぽになりやすい猫の種類は?
では、どんな種類の猫がかぎしっぽになるのでしょうか。
雑種に多い
前述したとおりに、かぎしっぽになる原因の多くは遺伝によるものです。さまざまな形のしっぽを持つ猫同士の交配により、かぎしっぽの子が多く生まれると考えられますので、雑種の猫にかぎしっぽは多いようです。筆者が観察したところによると、約3~4割くらいはどこかしらが曲がっているかぎしっぽの子が多いようです。4匹の兄弟を保護したら、そのうち2匹はかぎしっぽということも珍しくありませんし、2匹の姉妹どちらもかぎしっぽということもあります。
日本の猫に多い
かぎしっぽは日本の猫に多いとされています。江戸時代になって、一般庶民も猫を飼うようになり猫の数が爆発的に増えたのですが、当時は猫が歳をとると猫又という妖怪になると考えられていました。猫又は猫のしっぽが二本になり、言葉を話すようになったりするといわれていますが、猫が猫又になるのを恐れた人々が、短いしっぽの猫を好んで飼うようになったことから、かぎしっぽの猫が多くなったと考えられます。
実際に江戸時代の浮世絵を見ると、描かれている猫のほとんどが短いかぎしっぽです。短いかぎしっぽの猫のDNAが多く残されることによって、日本ではかぎしっぽが多くなったのかもしれませんね。