猫の目薬のさし方やコツ、種類などを獣医師が解説
愛猫が、目のトラブルに見舞われたことはありますか? 傷や感染などにより目にトラブルが起こると、多くの場合、治療のために目薬が処方されます。目は体の中でも特殊な器官なため、治療には、直接目に投与する目薬が欠かせません。ぜひ一度、目薬の使い方などを確認してみてください。今回は猫の目薬について、獣医師の飯塚が解説します。
猫の目薬の種類
目薬にはさまざまな種類があります。外傷や結膜炎など、日常のトラブルとして起こりやすく、比較的頻繁に処方されるものとしては、抗生剤を含むものや抗炎症作用を持つ目薬があげられます。
この他、白内障や緑内障などの病気にかかった場合は、症状に合った点眼薬が処方されます。以下に、処方される頻度の高い目薬と、その特徴を述べます。
- タリビット
- ゲンタシン
- トブラシン
- ティアローズ
- ヒアレイン
タリビット(薬剤名:オフロキサシン)
抗生物質を含む点眼薬で殺菌作用があります。目の内部への浸透性があります。結膜炎や角膜炎を発症した際に処方されます。ゲンタシン(薬剤名:ゲンタマイシン)
抗生物質を含む点眼薬で殺菌作用があります。多くの細菌に効果的。角膜感染防止に有効です。トブラシン(薬剤名:トブラマイシン)
抗生物質を含む点眼薬で殺菌作用があります。上記のゲンタマイシンとほぼ同じ作用の抗生剤を含みます。ティアローズ(薬剤名:プラプロノフェン)
非ステロイド性抗炎症薬を含む点眼薬で抗炎症作用があります。結膜炎などで炎症が強いときに処方されます。ヒアレイン(薬剤名:ヒアルロン酸)
保湿作用を持つ薬剤を含む点眼薬で角膜保護作用があります。目の表面の潤いを保つためや、外傷治療の補助などに処方されます。眼軟膏
多くの眼軟膏は、含まれる薬剤は、点眼と同じものが多いです。違いとしては、薬剤を溶かしている物質(基材)が、水性でなく油性という点です。このため、水性の点眼より目に長く留まるため、効果が長期間続きます。従って、頻繁に点眼薬を点せない場合(例えば真夜中の時間帯など)に使用するために処方されます。
この他、目自体でなく、まぶたや目の周囲のトラブルには、眼軟膏のほうが効果が高いです。
猫の目薬の使用期限
未開封の状態であれば使用期限は長く、冷暗所の保存で、おおむね1年ほど保存できます。
ただし、開封した場合は「瞼に点眼瓶の先を触れさせない」など使用方法を守っていても、雑菌の混入など品質の劣化は防げません。
症状や使用回数によっては、治癒後も点眼薬が残ってしまうこともありますが、使用した場合は、2週間程度で廃棄するようにしましょう。
また、目薬の種類によっては冷蔵庫保存が必要な場合もありますので、かかりつけの動物病院でよく確認してください。
猫の目薬のさし方のコツ
顔、特に目は、人間にとってもそうですが、猫にとって急所です。なので、急に目に何かが迫ってきたら、当然怖いです。愛猫を怖がらせないために、まず頭をなでたり体を触ったりして安心させましょう。
猫は、イヤなことから逃げようとする場合は、前に飛びだすのではなく、後ずさって逃げようとすることが多いです。そのため、飼い主が愛猫の背後に回り込んで、後ろに逃げられないようにするといいでしょう。
膝に乗せて行うのが、態勢的にはやりやすいと思いますが、点眼の儀式として抱っこをすると、それだけで緊張したり、逃げようとする場合もあります。
あまり意気込まず、愛猫がリラックスしているタイミングで点眼しましょう。「目薬を見せたらおやつをあげる」「目薬を点した直後におやつをあげる」などの工夫をしても良いかもしれません。
目薬のさし方
- 猫の顔を、後ろから上に向かせる
- 上まぶたを引っ張って、逆あっかんべーのような状態にする
- 後ろ(頭側)から目薬をさす
このとき、瞼や目に点眼瓶の先がつかないように気をつけましょう。点眼の量としては1~2滴で十分です。
眼軟膏のさし方
- 猫の顔を、後ろから上に向かせる
- 上まぶたを引っ張って、逆あっかんべーのような状態にする
- 後ろから、引っ張った瞼の裏に指で塗る。あるいは、引っ張ることで開いた目の隙間に、直接指で塗る。イメージとしてはアイシャドウを塗るようなかんじで、目の縁取るように指を動かしましょう
量としては、指先1/3くらいで十分です。また、目周囲のトラブルに対して、まぶたの際などに塗る場合は、目は開けず、閉じたままで目を縁取るように塗りましょう。
猫が目薬を嫌がる場合
点眼前後におやつなどのご褒美をあげる、などの工夫をしても、愛猫が点眼を嫌がることがありますね。猫は特に、目の前の嫌なことは、手(前足)で払いのけようとします。
体にバスタオルなどを巻いて、手が出ないようにすると、スムーズに点眼できるかもしれません。このとき、前述のように、後ろに後ずさって逃げられないようにすると、より良いでしょう。
愛猫を押さえてくれるご家族が別にいるなら、点眼をする係と、愛猫を抑える係とで、役割分担をすると上手に点眼できるでしょう。なるべく、愛猫がリラックスしているタイミングを狙えるといいですね。
猫の目薬の購入方法
目薬は、動物病院はもちろん、ネット通販や種類によってはホームセンターなどで買うことができます。
ただし、目薬を自己判断で購入して愛猫に使うのは危険です。症状に合わない点眼を使った場合、病状を悪化させてしまうこともあります。
特に、市販の人間用の目薬を、「とりあえず」と思って使うのはやめましょう。人は、目のトラブルに対する治療を目的としてだけでなく、眠気覚ましや気分転換を目薬に求めることもありますよね。
市販で買える目薬は、特にその傾向が顕著なものが多いです。愛猫にとってはそれらの成分が刺激になることもあります。
また、猫に対する安全性も認められていないため、万一何かトラブルがあった場合も、対応に困る場合がある可能性があるため、おすすめできません。
まずはかかりつけの動物病院を受診し、症状に合った点眼薬を処方してもらいましょう。
猫の目薬の正しい使用を
目の治療には欠かせない目薬。軟膏も含め、処方されたときに正しく使えるように知っておけるといいですね。
最初は難しいと思いますが、猫にも飼い主さんにもストレスなく目薬をさしたいところです。かかりつけの獣医師に相談しながら、点眼に慣れていきましょう。
参考文献
- 江島博 康著「眼病カラーアトラス -小動物臨床-」インターズー,2001/03
Spcial Thanks:獣医師として、女性として、 両立を頑張っているあなたと【女性獣医師ネットワーク】