人気インスタグラマーさんに聞く「猫の写真の撮り方」 アプリ加工はせずフィルターで世界観を統一

人気インスタグラマーさんに聞く「猫の写真の撮り方」 アプリ加工はせずフィルターで世界観を統一

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猫の魅力を最大限に引き出すカメラマンたちにその技を披露していただく連載「猫の写真の撮り方」。今回は、犬1匹猫6匹と暮らす人気インスタグラマーの「おかさん」こと、寺田さん(@toupie)にお話を伺います。寺田さんの写真は「白」と「木」をベースに統一された色合いの世界観が特徴で、その撮影方法を教えていただく予定だったのですが……お話を伺う中で、実は写真からは見えないもう一つの計算があったことがわかりました。皆さんもぜひ参考にして、愛猫の素敵な写真を撮ってあげてください。

たくさんの犬猫と暮らすインスタグラマーさん

山本:今回は高知県で旦那さまと娘さん、そして犬1匹に猫6匹と暮らす寺田さんにお話を伺います。寺田さんは革作家をされているんですね。

寺田:よろしくお願いします。革作家として活動するようになったのは3年前からで、その前は布作家をやっていました。

toupieさんの作品

山本:かなりたくさんの犬猫と暮らしていますが、どのような経緯で迎えたか教えてください。

寺田:時系列でお話しすると、ダックスフンドのクルミちゃんと、グレーのアメショでももちゃんの2匹と長く暮らしていました。5年前に高知市内にペットショップができて、ペットショップに行く機会がなかったのでふらっと寄ってみたんです。そしたら久しぶりに子猫を見て「かわいい!」と思って迎えたのが茶トラのアメショでマロンちゃんでした。

マロンちゃんはもうすぐ返品になるみたいな子でお値段も安くて。病気もあって隔離されててかわいそう、という理由を付けて連れて帰りました(笑)。それからだんごちゃん、おはぎちゃん、うにちゃん、最後はこんぶちゃんで、この子は保護猫です。預かりをしていた子だったんですが、迎えるはずだった方が急にだめになって、ずっと預かってたのでうちの子にしました。

山本:食べ物の名前だらけですね。

寺田:食いしん坊なんですよ。私が(笑)。凝った名前を付けると、短くしたりニックネームを付けたりするので、最初からニックネームみたいな名前を付けるようにしています。あとは……呼んだときのフィーリングですね。「この子は海鮮だ。うに!」みたいな。

うにちゃん
海鮮系? のうにちゃん

山本:名前の付け方からして寺田さんの世界観が垣間見えますね(笑)。それでは撮影についてお聞きしていきます。

いつもと同じ「色味」にこだわる

山本:最初に、撮影機材についてお聞きしたいんですが、何を使われていますか?

寺田:iPhone XS MaxとオリンパスのOM-Dというミラーレス一眼です。そこら辺に置いてあるので、「あ、かわいい」と思ったときに手元にあるカメラで撮っています。

オリンパスOM-D

山本:加工するためにアプリやソフトを使ったりはしていますか?

寺田:何も使ってないです。撮ったままの写真をInstagramにアップして、色調節とフィルターをかけるくらいです。フィルターはすべて同じで、「Reyes」(レイズ)というのを使っています。

山本:フィルターを決めているのは統一感を出すためですか?

寺田:そうですね。このフィルターの色合いが好きで、私のアカウントページに写真が並んだとき同じ色になるように、気分で変えないようにしてます。

toupieさんのアカウントページ

山本:一眼で撮ったときはどうやってアップしてるんですか?

寺田:カメラにWi-Fi機能が付いているので、スマホに転送して後は同じようにアップしています。

山本:iPhone XS Maxだとボケ機能が付いてますね。

寺田:前はiPhone 7で、写真をより良くしようと思って買い替えました。できるだけボカすようにしています。いらないものが写らないように(笑)。あと写真の明るさとかが全然違うんですごく感動してます。色味も変わって、茶色よりグレーがかった感じになって良いですね。

iPhone XS Maxのポートレートで撮影したこんぶちゃん
iPhone XS Maxのポートレートで撮影したこんぶちゃん

山本:光について意識しているところはありますか?

寺田:逆光以外は特に意識していないですね。とりあえず撮って、インスタの明るさ設定とかで変えてます。明るめに設定するようにはしてます。あと照明が電球色なので夜は撮らないようにしてます。オレンジっぽい写真になってしまって、フィルターで加工してもレンガ色みたいな写真ができてしまうので。なるべく昼間か夕方くらいに自然光で撮るようにしています。

山本:夜撮りたくなったときはどうするんですか?

寺田:夜の写真はストーリーズで公開します。すぐ消えますから。とりあえず楽しんでいただく用ですね。あと、蛍光灯の部屋を一つ作ってあるので、夜はそこで撮ってます。

外を見るおはぎちゃん

山本:Instagram用の部屋ってことですか!?

寺田:そうです。小部屋ですけどね。ホワイトバランスにうるさいんですよ(笑)。

山本:こだわりが凄いですね。家具や雑貨にもこだわりがあるように思えました。

寺田:スチールとかはあんまり使わないですね。DIYすることも多くて、インテリア好きなんです。いつかインテリアで注目されたらって思ってたんですけど。意外に猫のほうがフィーチャーされるようになりましたね。

おはぎちゃんとストーブ

生活感を消すため「撮る場所」を決める

山本:フォロワーさんから撮り方について聞かれることはありますか?

寺田:ありますよ。「カメラ何使ってますか?」と「アプリ何使ってますか?」というのが多くて、答えはお話しした通りですね。

山本:僕も寺田さんみたいな写真が撮りたいですが、部屋が汚いのでまずそこから真似しないと……。

寺田:そうですね。いきなり変えるのはなかなか難しいと思うので、ここで撮るって決めた場所でしか撮らないってことにして、そこだけ綺麗にするっていうのもいいかもしれないですね。うちも汚れてて撮影NGにしてるところがああります。お風呂とかパッキンがカビだらけで。でもおはぎちゃんはお風呂場が好きなので、写るところだけ綺麗にしてあります(笑)。

お風呂場のおはぎちゃん

山本:お風呂の写真がいつも同じアングルだったのはそういうことだったんですね!

寺田:あと生活感は絶対入れないようにしてます。娘の脱ぎかけはあらかじめのけておくとか。生活感は消しつつ出すように。

山本:撮りたいと思ったとき、出したくない生活感のある場所だったらどうしますか?

寺田:わざと生活感のある内容にしてしまいますね。「洗濯物早く片付けない私」みたいな投稿に変えて、笑いに変える感じですね。キャプションも大事なんで、ただ普通に撮った写真も見方を変えて。


山本:なるほど。気をつけるべきところは写真だけじゃないんですね……。過去の投稿を拝見していて、以前は猫が中心の写真が多かったのが、だんだん引きで「猫と何か」に変わってきた気がするんですが、それは意識していますか?

寺田:猫ちゃんとの生活を楽しんでる感は出したいですね。猫だけだとつまらないじゃないですか。毎回同じで。私フォロワーさんを意識してしまうんですけど、面白くないのは読みたくないし、ただ「かわいい」だけだとよっぽどのファンじゃないと。いつも楽しませ方を考えています。


過去の経験から生まれた「キャラクター設定」

寺田:実はうちの子たち一つずつキャラクターを作ってるんですよ。

山本:えっ……?

寺田:おはぎちゃんは「ちょっとなよっとしたイメージでしゃべる」。こんぶちゃんは「すごく礼儀正しいけどずる賢い」みたいな。それに沿った写真を撮ったり、撮ってから考えてキャプションで面白くする。そうするとすごく生き生きとしてくると思うんですよ。


山本:まさか撮影技術とは違う視点の話が出てくるとは思いませんでした。

寺田:実は私、昔漫画家をしてた頃がありまして。

山本:そうなんですか!?

寺田:『マーガレット』という雑誌に月1でコテコテの少女漫画を描いていて。そのときに担当してくれた編集者さんが、「キャラクターをしっかりとさせてください」というのを教えてくれてたんです。それで、写真も見た人の心の中でおはぎちゃんっていう猫が生き生きとするようにしたくて、けっこうこまかくキャラクター設定をしてるんです。ちょっとオカマキャラとか。おはぎちゃんは「なの」って言ったりとか。キャラクターが見えると情が入るじゃないですか。知らない猫ちゃんでも、かわいく思えるんです。


山本:めちゃくちゃ勉強になりますね。確かにそういう設定があると、写真撮るとき「この子はこういうふうに撮ろう」とか、一つの基準になってきますね。

寺田:そうですそうです。キャラクターに沿った写真を撮るようになりますよね。見せるインスタですね。何も考えていないように見せといて、すっごい考えてるんですよ(笑)。

山本:なるほど……そこまで考えているからこその素敵な写真だったんですね。寺田さんにとってInstagramってどんな存在ですか?

寺田:私家にずっといる仕事をしているので、世間との関わりが少ないんですよ。だから自分の生活を簡単にみんなと共有できる場所ですね。写真とちょっとの言葉っていうのが私にあってるんだと思います。

山本:ありがとうございました。

toupieさんの犬と猫たち

ポイントは世界観をしっかり持つこと

今回、寺田さんのお話をお聞きして共通していると感じたのは、ブレない世界観があることでした。「色味」や「撮る場所」「キャラクター設定」など、ついついその場その場で変えてしまいがちですが、あらかじめ決めておくことで撮影もしやすくなりますし、何より、見る側もその世界観に引かれ、「次の写真が見たい」となります。「何を撮ればいいのかわからない」「いいねの数が多かったり少なかったりする」「フォロワーが増えない」といった悩みをお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。