犬のチェリーアイ|なりやすい犬種や原因、治療法を獣医師が解説
チェリーアイは、犬の目の瞬膜(第三眼瞼)が飛び出して赤く腫れる病気です。さくらんぼのように見えることから「チェリーアイ」と呼ばれます。初期では戻すことも可能ですが、根本的な原因が解決されないと自然治癒は難しく再発してしまいます。原因や外科手術など治療法について、獣医師の佐藤が解説します。
犬のチェリーアイとは
チェリーアイは、「第三眼瞼腺逸脱」(だいさんがんけんせんいつだつ)もしくは「第三眼瞼腺脱出」とも呼び、瞬膜(第三眼瞼)が飛び出して赤く腫れた状態を指します。さくらんぼ(チェリー)のように見えることから、一般的に「チェリーアイ」と呼ばれます。
瞬膜は目頭から出てくる膜のことで、瞬間的に出てくることから「瞬膜」と呼ばれます。鳥や爬虫類は瞬膜でまばたきをしたりゴーグルのように覆ったりして目を保護しますが、犬は目を開けている時に出ることがないため3つ目のまぶたという意味で「第三眼瞼」とも呼ばれます(※)。
瞬膜(瞬膜線)は涙の産生に関わっていることから、チェリーアイを放置するとドライアイになります。炎症が悪化すると結膜炎や角膜炎にもつながるため、早期治療が大切です。
※ヒトを含む多くの哺乳類は瞬膜が退化して痕跡器官になっています。
チェリーアイになりやすい犬種
チェリーアイはどの犬種でも起こる可能性がありますが、年齢では1歳以下の子犬で見られることがほとんどです。アメリカンコッカースパニエルやビーグル、ボストンテリア、シーズー、フレンチブルドッグ、ペキニーズなどで多いことから、遺伝が関係していると考えられています。犬のチェリーアイの症状
チェリーアイは目頭に特徴的な赤い腫れが見られるため、見てすぐに分かります。初期では脱出した瞬膜が自然に戻ることもありますが、次第に戻らなくなって炎症も悪化していきます。
犬は腫れを気にして掻いてしまうことで腫れが大きくなったり、炎症を起こして涙や目やにが出るようになります。そのまま進行するとドライアイや結膜炎、角膜炎になる場合もあります。
両目で起こる可能性が高く、最初は片目だけでも、数週間から数カ月で反対側でも起こります。ほとんどは子犬で起こりますので、シニア犬(老犬)で起こった場合は腫瘍など別の問題である可能性が高くなります。
犬のチェリーアイの原因
チェリーアイが起こる原因は明確になっていませんが、先天的に瞬膜を留める靭帯が存在していないか、伸びたり切れたりして、飛び出したりひっくり返ったりすると考えられています。他にも眼球の大きさや軟骨の変形、腫瘍、老化、外傷、感染症などが原因になる可能性があります。犬のチェリーアイの治療法
チェリーアイは基本的に自然治癒しませんので、動物病院で処置が必要です。軽症であればピンセットや綿棒で一時的に戻し、ステロイドなど炎症を抑える点眼薬もしくは内服薬で元に戻すことが可能です。
ただ、チェリーアイの原因は瞬膜を留める力の弱さにありますので、一時的に戻せても再発してしまうことが少なくありません。進行するとより深刻な問題に発展してしまうため、基本的には外科的な処置が推奨されます。
以前は飛び出した瞬膜を除去する手術が一般的でしたが、涙を作る機能が失われることでドライアイの原因になるため行われなくなりました。現在は飛び出した瞬膜が入るスペースを作って埋没させるポケット法や、瞬膜を周りの組織に縫い付けて固定するアンカー法が選択されます。
まとめ
チェリーアイは瞬膜が飛び出して赤く腫れる病気
自然治癒しないため動物病院で処置が必要
悪化すると結膜炎や角膜炎になる可能性も