犬が電池を誤飲した際の危険性や症状、対処法を解説【獣医師監修】
犬が電池を食べてしまうと炎症や腸閉塞、最悪の場合は死に至るリスクがあります。今回は犬が電池を食べてしまった際の危険性や症状、対処法などを獣医師監修のもと紹介します。
この記事を監修した専門家
獣医循環器学会認定医
佐藤 貴紀獣医師
目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師。獣医循環器学会認定医。麻布大学獣医学部卒業。dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長、白金高輪動物病院院長を経て2011年、中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任(現在は顧問獣医師)。獣医循環器学会認定医。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。
犬が電池を食べることは死に至るほど危険
電池が床に落ちていたり、机の上に放置されていたりすると、好奇心旺盛な犬が間違って飲み込んでしまうかもしれません。電池のように消化できない異物を飲み込むこと自体が危険ですが、中でもアルカリ電池に含まれるアルカリは中毒を引き起こす原因にもなります。
アルカリ電池は特に危険
アルカリ成分は融解壊死といって、組織や細胞を壊死させ、壊死領域を液化させる作用があります。アルカリ成分は、組織によって中和されるまで深部組織へ浸透する危険な成分です。犬が電池をかじって成分が漏れ出た場合、口腔粘膜への刺激が顕著に現れます。激しく鳴き、涙を流したり、よだれを垂らしたり、口腔内潰瘍や火傷になったりする可能性もあります。パンティング、腹痛、吐血およびショックという症状も報告されています。
応急処置
電池を食べてしまった場合は死に至る場合もあるのですぐに動物病院に行きましょう。飼い主が勝手に判断をして様子見をしたり、催吐などの処置をしたりすると重病化する恐れもあります。獣医師が的確な判断をできるよう、いつ、何の種類の電池を飲み込んだのか説明しましょう。治療法
できるだけ早期の回収が必要です。電池の存在部位を特定するために、X線検査を行います(本当に飲んでいるかどうかの確定診断ができます)。誤食した直後に胃内であれば、大きさなどを見て催吐処置を行うこともあります。摂取されたアルカリ電池が食道にある場合、穴が開く「穿孔(せんこう)」を起こす可能性がありますので内視鏡下でできるだけ早く取り除く必要があります。
誤食後、長時間経過した場合は、胃内にあり吐き気などの症状が出ているようであれば内視鏡もしくは胃切開になります。腸内にある場合は、糞便に出るのを待ちますが、症状によっては腸切開などが必要な場合もあります。必ず、内視鏡がある動物病院を受診しましょう。
腹部レントゲン検査で腸内にボタン電池が見つかった犬のケースでは、電池に接していた腸壁が穿孔し、初診から158日後に死亡しています(※)。
※参照:「ボタン電池の誤飲により回腸穿孔が生じた犬の1例」(獣医麻酔外科学雑誌)
まとめ
電池の誤飲は死に至る危険な誤飲。
アルカリ電池の場合、特に危険性が高い。
犬が触れる場所に電池を放置しない。
電池に限らず、犬がおもちゃにして飲み込んでしまう可能性があるものは普段から床や机の上に放置しないようにしましょう。飼い主が犬の健康を守る環境作りをすることが大切です。