「噛まれたけど、ペットだから大丈夫」は危険 重症化もある身近な病気「パスツレラ症」を解説

「噛まれたけど、ペットだから大丈夫」は危険 重症化もある身近な病気「パスツレラ症」を解説

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ペットの飼育において気を付けるべき感染症は約20種ほどありますが、今回は「パスツレラ症」について解説します。

白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問獣医師で獣医循環器認定医の佐藤です。

先日、Twitterで猫に手を噛まれた方のパスツレラ症に関するツイートが話題になりました。その方のツイートによると、実家の猫に噛まれてパスツレラ菌に感染し、切開手術を経て3週間ほどで完治したそうです。



野良犬や野良猫に噛まれたり引っかかれたりした傷が重症化する危険性があるのは一般的に知られていると思いますが、ペットでも同様のことが起こるのは意外だった方が多かったようです。

ペットの飼育において気を付けるべき感染症は約20種ほどありますが、今回は「パスツレラ症」について解説します。

ペット飼育において注意が必要な感染症は約20種

人と動物には共通した感染症が存在し、それらは「人畜共通感染症」や「人獣共通感染症」「動物由来感染症」、英語では「zoonosis(ズーノーシス)」と呼ばれ、全て同じ意味合いがあります。

世界には人と動物の共通感染症が800種あると報告され、WHO(世界保健機関)は200種について重要だと考えています。日本においては、そのうち数十種が問題となっています。

感染症の原因にはウイルス、細菌、寄生虫、真菌などがあり、感染経路も疾病(しっぺい)により違うことが報告されています。多くの方は野生動物よりペットと触れ合う機会のほうが多いと思いますので、特にペット飼育における感染症を理解する必要があります。その中で注意が必要なものは、以下の約20種です。

人と動物の共通感染症の表


犬の保菌率は75%、猫はほぼ100%

パスツレラ症は、パスツレラ属の菌に感染することで起こる感染症で、日本では4種の細菌が犬猫から感染する原因菌として確認されています。犬猫の保菌率は非常に高く、犬が75%、猫はほぼ100%で保菌しています。

パスツレラ菌は犬猫の口の中に常に存在しており(口腔内常在菌)、噛まれることによる創傷(そうしょう)感染や、舐められたり飛沫感染といった非外傷性の感染もあります。

人が発症すると、噛まれた場所が腫れ、赤みや痛み、発熱などを伴います。また近くのリンパ節の腫れが見られる場合もあり、関節に近いと関節炎を起こすこともあります。

非外傷性の感染では、健康な人でも気管支炎や副鼻腔炎、外耳炎などを起こすことも知られています。抵抗力の弱っている人は、敗血症や骨髄炎となり死亡するケースもあります。

なお、菌を保有している犬猫はというと、通常は無症状で、猫の場合はまれに肺炎を起こすことがあります。

黒猫

最後に

予防として一番大事なことは、ペットとの触れ合い方をしっかりと理解することです。きちんと犬猫と人の生活の場を分けることや、口を近づけた濃厚な接触を避けることが一番の予防と言えます。

万が一、噛まれてしまった場合は、創傷部位を石鹸できれいに洗いましょう。動物と共存していくためには、お互いに気を付ける必要があります。