犬のホルネル症候群|症状や原因、治療法を獣医師が解説

犬のホルネル症候群|症状や原因、治療法を獣医師が解説

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ホルネル症候群は神経に障害が起こり、瞳やまぶた、眼球などに異変が現れます。交通事故やチョークチェーンなどの外傷で起こることもありますが、多くは原因不明です。症状や考えられる病気、治療法などを獣医師の佐藤が解説します。

犬のホルネル症候群とは

犬

ホルネル症候群とは、眼と脳をつなぐ交感神経に何らかの障害が起こることで生じる目の異常で、以下4つの症状を総称します(※)。犬種や年齢、性別に関係なく、どの犬でも発症する可能性があります。

  1. 縮瞳(しゅくどう):瞳が小さくなる
  2. 瞬膜突出(しゅんまくとっしゅつ):白い膜が目を覆う
  3. 眼瞼下垂(がんけんかすい):上まぶたが下がる
  4. 眼球陥没:目が奥にヘコんだように見える

このうち1つ、もしくは複数の症状が片目で起こり、両目で起こることは非常にまれです。いずれも目が小さくなったように見えるのが特徴で、基本的に痛みや痒みを伴うことはありません(症状を引き起こす原因によって痛みや痒みを伴う可能性はあります)

ホルネル症候群はさまざまな原因で起こりますが、多くは数日から数カ月で自然治癒します。ただし、中には命に関わる病気が原因になっている可能性もありますので、放置せず動物病院で検査するようにしてください。

※スイスの眼科医「ヨハン・フリードリヒ・ホルネル」(Johann Friedrick Horner, 1831-1886)の名から名付けられました。ホルナー症候群と呼ばれることもあります。

犬のホルネル症候群の症状

犬

ホルネル症候群では先ほど挙げた4つの症状が見られますが原因は別にあり、それが神経に障害を起こした結果として症状が現れます。そのため原因によっては4つの症状以外にも食欲不振や過剰な唾液分泌でよだれが垂れる流涎(りゅうぜん)、麻痺、痙攣などが見られることもあります。

1. 縮瞳(しゅくどう)

瞳は明るい場所で小さくなり(縮瞳)、暗い場所で大きくなる(散瞳)のが正常ですが、ホルネル症候群では片方の瞳が常に小さい状態になります。そのため明るい場所では左右の瞳の大きさが異なり、暗くなるとその差がさらに顕著になります。見えにくくなることでモノにぶつかりやすくなるかもしれません。

2. 瞬膜突出(しゅんまくとっしゅつ)

瞬膜は目頭から出てくる膜のことで、瞬間的に出てくることから「瞬膜」と呼ばれます。鳥や爬虫類は瞬膜でまばたきをしたりゴーグルのように覆ったりして目を保護しますが、犬は目を開けている時に出ることがないため「第三眼瞼」(だいさんがんけん)とも呼ばれます(※)

ホルネル症候群では目を開けても瞬膜が収まらずに出ている状態「瞬膜突出」が見られます。同じ瞬膜突出でも瞬膜(正確には瞬膜の裏にある涙を出す瞬膜腺)がサクランボのように腫れた状態は「チェリーアイ(第三眼瞼逸脱)」と呼びます。

※ヒトを含む多くの哺乳類は瞬膜が退化して痕跡器官になっています。

3. 眼瞼下垂(がんけんかすい)

眼瞼はまぶたのことで、上まぶたが通常より下がって目を開けようとしても開かない状態になります。眠そうに見えるかもしれませんが、ホルネル症候群では片目だけ起こるのが特徴です。

4. 眼球陥没

眼球陥没(眼球後退)は眼球が収まっている眼窩(がんか)に後退することで陥没したように見える状態です。眼球自体が陥没するわけではなく、視力に異常もありません。ホルネル症候群では片方の目が後退して小さく見えます。

犬のホルネル症候群の原因

柴犬

ホルネル症候群の原因はさまざま考えられ、特定することが難しく多くが原因不明(特発性)です。いずれにしても脳から脊髄、胸、首などを通って眼に至る交感神経のどこかで問題が起きていると考えられます。

原因を特定するために交感神経は大きく以下3つの経路にわけられます。

  • 1次(中枢):脳(視床下部)から脊髄まで
  • 2次(節前):脊髄から首の神経節(神経が集まるところ)まで
  • 3次(節後):首の神経節から眼までの末梢神経

1次ホルネル症候群で考えられる原因

ホルネル症候群以外の神経症状が見られることがあります。

  • 脳梗塞
  • 腫瘍
  • 頚椎骨折
  • 脳脊髄炎
  • 椎間板疾患
  • 炎症

2次ホルネル症候群で考えられる原因

交通事故やチョークチェーン、リードによる外傷で起こることがあります。

  • 外傷
  • 腫瘍
  • 炎症

3次ホルネル症候群で考えられる原因

  • 中耳炎
  • 腫瘍
  • 膿瘍
  • 炎症

犬のホルネル症候群の治療法

ビーグル

目の異常からホルネル症候群が疑われる場合、他にも体に異常が見られないか以下のような検査を行います。

  • 触診
  • 行動観察
  • 血液検査
  • 眼科検査
  • 神経学検査
  • X線(レントゲン)検査
  • 超音波検査
  • CT・MRI検査
  • 脳脊髄液検査
  • フェニレフリン検査

原因が見つかった場合は、その治療がホルネル症候群の治療につながります。フェニレフリンという瞳を大きくする点眼液が効く時間を計ることで、問題が起きている経路を判別できる場合があります。

ホルネル症候群は原因不明であることが多いものの、多くは数カ月以内に自然治癒します。ただし、原因が腫瘍や椎間板ヘルニアに起因する進行性脊髄軟化症などであった場合、放置すると死に至る可能性があります。

まとめ

犬
ホルネル症候群は神経の問題で起こる
目が小さく見える変化で気付きやすい
チョークチェーンで起こることも
自然治癒が多いものの検査は必要
ホルネル症候群は神経の障害によって目に異変が起こります。ほとんどは片目で起こり、目が小さく見えるのが特徴です。多くは自然治癒しますが、重症化する病気が原因の可能性もあります。必ず動物病院で検査を行うようにしてください。