猫の尿石症 | 症状や原因、治療・予防法など【専門獣医が解説】
猫の尿石症とは、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に石ができる、あるいは留まる状態を指します。今回は、猫の尿石症の症状や検査、治療法などについて、日本獣医生命科学大学臨床獣医学部門 治療学分野I・講師で獣医師の宮川が解説します。
猫の尿石症の基礎知識
尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に石ができる、あるいは留まる状態を指します。結石成分は、リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイド)、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウムが一般的です。原因
- 結石の主成分の摂取が多いこと(食事やおやつ)
- 猫の場合には、感染症は関連しない
- 去勢、避妊、肥満
- 水分摂取量が少ない、尿が濃い
- 肝臓の病気(尿酸アンモニウム)
症状
- 頻尿、血尿、尿が臭いといった泌尿器症状
- 小さな結石や部位によっては症状が認められないこともある
- 猫ではストルバイトは、尿道栓という細胞,粘膜などが集まった軟らかい物質と一緒になることが多く、これが尿道につまり、閉塞の原因になることが多い
- 尿管、尿道に閉塞することがあり、閉塞すると排尿ができなくなり、腎臓の機能が低下し、腎不全になる
- 腎不全に至ると、食べない、吐く、元気がなくなるなどの症状が急激に認められる
検査・診断
- 腹部X線検査、腹部超音波検査:結石の有無、位置を調べる
- 尿検査:炎症や細菌の有無を調べ、結石の成分を調べる(正確な評価はできない)
- 結石の成分分析:結石を取り出した後にその成分を調べる
治療
- ストルバイトや尿酸アンモニウムは食事療法により溶解する
- シュウ酸カルシウムは溶解しないため,手術による摘出が必要となる
- 尿管が詰まることにより腎臓が大きく膨れ上がる(水腎症)ことがないかぎり、腎結石は外科手術の対象とはならない
- 尿石症は再発しやすいため、再発予防としての食事療法、十分な水分摂取が重要である
治療で使用する療法食、薬剤
- 尿石症用療法食 溶解用と予防用に分かれている。ストラバイドと尿酸アンモニウムは溶解する尿のpHが真逆なため(酸性とアルカリ性)、尿酸アンモニウム用は異なる療法食になっている
- 抗菌薬 細菌性膀胱炎の場合に使用される(猫では多くない)。細菌培養によって細菌を特定し、効果を示す薬剤を選択する必要がある