【獣医師執筆】猫は鹿肉を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説
猫は鹿肉を食べても大丈夫です。牛肉や豚肉と比べても脂肪分がかなり少なく鉄分がとても豊富なため、健康食材としても近年注目を集めています。今回は鹿肉に含まれている栄養素や猫に鹿肉を与える際に知っておきたいことを紹介します。
猫は鹿肉を食べても大丈夫
鹿肉は猫に与えても良い食材です。ただし、鹿肉を猫に生で与えると危険が伴います。生肉だけでなく、アレルギーなど猫に鹿肉を与える際はいくつか注意点がありますので、事前に知った上で愛猫に与えることをおすすめします。
猫が食べて大丈夫な鹿肉の栄養成分
鹿肉にはビタミンB群、アセチルカルニチンなどが豊富に含まれています。
日本鹿(赤身)の成分(100gあたり) | |
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エネルギー(kcal) | 110 |
たんぱく質(g) | 22.3 |
脂質(g) | 1.5 |
ナトリウム(mg) | 58 |
カリウム(mg) | 350 |
リン(mg) | 200 |
鉄(mg) | 3.1 |
参照:『食品成分データベース』(文部科学省)
たんぱく質(アミノ酸)
たんぱく質は、アミノ酸が鎖状になってできたものです。たんぱく質には動物性と植物性があります。以前は動物性たんぱく質が植物性たんぱく質よりも消化吸収しやすいと考えられていましたが、食品の加工技術により、植物性たんぱく質でも十分に消化吸収が可能になりました。たんぱく質は原材料のまま使用するよりも、加工することで消化性が格段に上がります。例えば、大豆などは良い例です。たんぱく質は、消化されることで、アミノ酸に分解され、小腸から体内に吸収されます。そのため、肉食動物の猫や肉食動物に近い雑食性動物の犬にとって、たんぱく質はエネルギー源とされています。
脂質
鹿肉の脂質は、不飽和脂肪酸の割合が多いのが特徴です。これは主に魚に多く含まれている成分で、血液をサラサラにする効果があります。ビタミンB群
ビタミンB群とは、エネルギーを作リ出す役割をする「ビタミンB1」や皮膚や粘膜を健康に保つ「ビタミンB2」、筋肉や血液の作成を補助する「ビタミンB6」などの総称です。ナトリウムとカリウム
ナトリウムとカリウムは相互に作用しながら、細胞を正常に保ったり、血圧を調整したりして恒常性を維持しています。ナトリウムは過剰摂取すると高血圧やガンの可能性が高まります。また、カリウムは過剰摂取してしまうと腎臓の機能に異常を来たす恐れがあります。
リン
リンは歯や骨を丈夫に保ったり、神経や筋肉を正常に保ったりする効果があります。アセチルカルニチン
アセチルカルニチンは、脳の機能を向上させる働きを持っています。鹿肉には、牛肉の約2倍のアセチルカルニチンが含まれています。参照:『LC-MS/MSを用いたシカ肉に含まれる遊離およびアシルカルニチン含有量の測定』(日本食品科学工学会誌)
猫に鹿肉を与える際の注意点
栄養満点で猫にも嬉しい成分が多く含まれている鹿肉ですが、与え方を間違えてしまうと健康を害してしまう可能性があります。猫に鹿肉をあげる前に、注意点を確認しておきましょう。
与えていい量
鹿肉を総合栄養食へのトッピングやおやつとして与える場合、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。生肉の危険性
生肉は嗜好性が高く、餌に対する食付きがよくなることもあります。また、鹿肉に限らず生肉には酵素が多く含まれているため、老猫でも与えると毛艶が良くなる効果が期待できます。酵素は加熱処理をすると死滅してしまうため、生肉や生野菜のみでしか摂取することができない貴重な栄養分です。しかし、生肉はO157(腸管出血性大腸菌)やサルモネラ属菌などの食中毒だけでなく、E型肝炎に感染する可能性もあります。
E型肝炎
E型肝炎とは、E型肝炎ウイルスによる一過性の急性肝炎です。症状はA型肝炎と似ていて、食欲不振や嘔吐、発熱などが挙げられますが、E型肝炎の致死率はA型肝炎の約10倍とまでいわれており、十分に気を付ける必要があります。日本では2003年の4月に兵庫県で野生の鹿肉を生で食べた人がE型肝炎に感染する事例が報告されています。万が一の事態に備えるためにも、猫に鹿肉を与える際は十分に火を通したものをあげることを推奨します。
参照:「最近のE型肝炎の増加について(2016年4月27日現在)」(国立感染研究所)、「食肉を介するE型肝炎ウイルス感染事例について」(厚生労働省)
鹿肉アレルギー
鹿肉に限った話ではありませんが、アレルギーには生まれつきの体質による先天性のものと、長い期間同じ食材を食べて発症してしまう後天性のものがあります。鹿肉は牛肉や豚肉に比べると、「低アレルゲンの食品」といわれていますが、鹿肉アレルギーを持っている子もいます。食物アレルギーには、生まれつきの体質による先天性アレルギーと、長い期間同じ食材を食べることで発症する後天性アレルギーがあります。
初めて食べる食材を与える際は少量からスタートさせてあげましょう。アレルギーには以下の症状になる可能性が挙げられます。
- 下痢
- 嘔吐
- 皮膚の痒み
- 元気がない
- 目の充血
上記のような症状があれば、すぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。一方で、アレルギーテストで陽性が出たから食べられないと思う飼い主さんも多いですが、それは間違いです。症状が出ていなければ食べさせても問題ありませんので、特定の食材を食べさせてアレルギー反応が出るか確認してみてください。
腎臓に疾患を持っている場合
鹿肉などのたんぱく質が豊富な食材は、猫にとって悪影響になる場合もあります。猫がダイエットをしていたり、皮膚の健康を促したりする場合は、たんぱく質を摂取することは効果的です。鹿肉は嗜好性が高いため、老化などの影響で猫の食欲が落ちてしまった場合に、鹿肉とキャットフードを混ぜて食付きをよくするという方法もあります。しかし、腎不全や慢性腎臓病などの腎臓に疾患を抱えている場合にたんぱく質が豊富な食材を摂取してしまうと、病気の症状が悪化してしまう恐れがあります。
腎臓病に関して詳しくは、以下の記事をご覧ください。
猫は鹿肉を食べても大丈夫!
猫はアレルギーで限り鹿肉を食べても大丈夫です。肉食動物である猫はタンパク質の必要量が多くなりますが、炭水化物も摂ることで効率的にエネルギーを生み出すことができます。何かだけを食べる偏った食事ではなく、バランスの良い食事を心がけましょう。
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