【獣医師執筆】愛猫が長生きするキャットフードの正しい選び方!栄養成分表示の見方などを解説
キャットフードの選び方として「総合栄養食を選ぶ」「ウェットフードを選ぶ」「愛猫に合ったごはんを選ぶ」「原材料表示をチェックする」「誰のためのフードかを知る」といったポイントがあります。獣医師の佐藤が解説します。
キャットフードの正しい選び方【基礎知識】
01【キャットフードの選び方】総合栄養食を選ぶ
キャットフード選びの基本中の基本は「総合栄養食」を選ぶことです。総合栄養食とは「それだけを食べ続ければ栄養の過不足が起こらないごはん」で、一般的にはAAFCOというアメリカの団体が策定した栄養基準に準拠したごはんのことを指します。総合栄養食の他には「一般食」や「療法食」があり、一般食は主におやつのことで、副食や間食、栄養補完食などと表記されることもあります。栄養バランスには偏りがあるため、主食として毎日のごはんにすることはできません。
療法食は病気のケアを目的としたもので、ダイエットや消化器ケア、腎臓ケア、結石予防などがあります。何かしらの栄養を制限しているごはんですので基本的に総合栄養食ではありません。獣医師の指示に従って与えるようにしましょう。
02【キャットフードの選び方】原材料の表記
体に良いごはんと言われても、どの商品も「体に良いごはん」として売られているはずですから、何を見て良い・悪いを判断すればいいのか迷われる方も多いでしょう。判断基準の一つとして「原材料表示のチェック」が挙げられます。
使用割合は表示されているか
原材料はペットフード安全法のもと、割合が多い順に記載すべきとされています。しかし、配合割合は見えていないフードがほとんどです。食材の配合割合が明記されているフードを選ぶと良いでしょう。主原料は肉類か
猫は肉食動物ですから、雑食の人間や犬より多くのタンパク質を摂る必要があります。ですから、まずは原材料の最初に書かれている材料が肉かどうかを確認しましょう。猫にとっても炭水化物は大事なエネルギー源ではありますが、肉より優先順位が高くなることはありません。原材料表示は基本的に含む量が多い順に書かれていますので、最初にトウモロコシや小麦粉などの炭水化物が書かれているものは避け、チキン、ビーフ、フィッシュのような肉や魚が書かれているものを選びましょう。
◯◯ミールが使われていないか
原材料の最初に肉や魚が書かれていたとしても、「チキンミール」のように「◯◯ミール」と書かれているものはお薦めしません。ミールとは肉骨粉のことで、文字通り肉や骨をごちゃ混ぜにして粉末にしたものです。家畜のエサとしてよく利用されます。ミールは絶対に体に悪いということではありませんし、安い飼料を作ると考えれば価値のあるものと言えます。しかし、問題は何がごちゃ混ぜになっているかわからないところにあります。家族が食べるごはんですから、飼い主さんが「これなら安心して食べさせられる」と自信を持って言えるごはんを選んであげましょう。
03【キャットフードの選び方】不必要な添加物の使用
添加物は体に悪いというイメージを持たれがちですが、添加物のお陰で食中毒にならずに済んでいるという事実も忘れてはいけません。添加物を考える上で重要なのは「なぜその添加物は使われているのか」という「添加する目的」です。ドライフードに酸化防止剤は必要でしょうし、ウェットフードに保存料は必要でしょう。でも、「ウェットフードなら酸化防止剤は必要ない」とも言えますし、「冷凍されたウェットフードなら保存料は必要ない」とも言えます。
安いフードには「着色料」が使われていることがありますが、それは猫ではなく人が見て楽しむために添加されています。「香料」や「動物性油脂」は食いつきを良くするために添加されますが、「香り付けでもしなければ食べてもらえない」とも言えるのです。そのため、基本的にサプリメント以外の添加物が入っていないフードが理想です。
04【キャットフードの選び方】アレルギーの有無
アレルギー症状が出る猫はアレルゲンを含む食材を避けましょう。よく、「アレルギー検査を受けて陽性だった食材は食べてはいけない」と考える飼い主さんがいますが、症状が出ていなければ食べて問題ありません。間違って食の選択肢を狭めてしまわないように、ご注意ください。なお、「美味しそうに食べるから愛猫に合っている」と考えるのは注意が必要です。「美味しい」と「体に良い」は、イコールとは限りません(体に悪いものほど美味しいですよね……)。猫も「美味しい」を優先させてしまう子のほうが多いと思いますので、まずは「飼い主さんが体に良いごはんを選ぶ」、その中で「猫が美味しいと思うごはんを見つける」というのが正しいごはん選びの順番です。
05【キャットフードの選び方】透明性があるか
原材料はヒューマングレードと謳っていても実際は海外で作られていて製造過程が見えない課題もあります。そのため、以下の点に注意するといいでしょう。- どんな会社が作っているか
- 専門家がレシピを作っているか
- どんな食材・添加物が使われているか
- 科学的に正しいことを伝えているか
どんな会社が作っているか
販売サイトや商品サイトにはいろいろな「良いこと」が書かれていると思いますが、なぜそんなことを言っているのか目的を知るためにも、それを書いているのがどんな会社なのか、メーカーサイトを確認することが大事です。猫愛が伝わってくる会社が作るごはんのほうが安心できますよね。専門家がレシピを作っているか
よく「獣医師監修」と書かれていることがありますが、獣医師はあくまで動物のお医者さんですので、「獣医師=栄養学の専門家」とは限りません。獣医師であれば「獣医栄養学専門医」など栄養学の専門家であることを証明する資格を持っている人がレシピを作っているかを確認しましょう。どんな食材・添加物が使われているか
原材料表示や商品サイトなどを見て、どんな食材が使われているか、どんな添加物が使われているかを確認しましょう。そういった情報を分かりやすく伝える姿勢を持っているかも大事なポイントです。5-4. 正しいことを伝えているか
専門家がレシピを作っていたとしても、メーカーは売ることを一番の目的にして飼い主さんの不安を煽ったり、科学的な根拠もないのにもっともらしく伝えたりする場合があります。最近だと「グレインフリーフード」が良い例です。グレインフリーフードは、穀物にアレルギーのある子には有効ですが、グレインフリーだから猫の体に良いという科学的な根拠はありません。それなのにすべての猫に良いと思わせるような売り方をしていたら、猫のことを一番に考えているメーカーとは言えないでしょう。
キャットフードの正しい選び方【年齢による違い】
前提としてオールステージの総合栄養食でOK
子猫用や成猫用フードがありますが、基本的に猫種・年齢別に違う必要はなく、全猫種・全年齢対応のオールステージ対応キャットフードを与えていれば問題ありません。その中でも年齢別に必要な食事を解説します。
小猫期の食事
生後約1年までの子猫期は身体の基礎をつくる成長期であり、成猫の2倍ものエネルギーを必要とするため、高タンパク・高脂肪を基本にたくさんの栄養を摂る必要があります。生後1カ月までは初乳成分を含んだ粉ミルク、1~2カ月頃にはウェットフードやドライフードをふやかした離乳食を与えます。生後3カ月以降はタンパク質、ミネラル類、ビタミン類も多く含んだ子猫用フードかオールステージのフードを与えるといいでしょう。食の好みを形成する時期でもあるのでドライや冷凍フレッシュなどさまざまなフードを与えてあげましょう。そうすることで、将来の偏食が防げます。
成猫期の食事
体ができた1~7歳程度までの成猫期は子猫期よりもエネルギーを必要としなくなるので、肥満に要注意。タンパク質を豊富に含み、脂質やカロリーを抑えた成猫用のフードに変更しましょう。とくに避妊・去勢をした成猫はホルモンバランスの関係で太りやすいので、避妊・去勢をした猫用のキャットフードや比較的カロリーの少ないキャットフードがおすすめです。猫に多い腎臓病予防としてアルギニンやオメガ脂肪酸などが配合されたキャットフードを選ぶのもいいでしょう。
老猫期・シニア期の食事
7歳以降のシニア期は、運動時間が減り筋肉も衰え、さまざまな病気のリスクが高まる時期です。タンパク質、脂質、カロリーともに高すぎるものを避け、ビタミンや腸の働きを助ける成分が含まれたフードなど健康状態に合わせたシニア用のフードかオールステージのフードを選びましょう。咀嚼力や消化機能が衰えてきた猫は、飲み込みやすいようドライフードをふやかしたり、ウェットフードに切り換えたりするのも方法のひとつです。それでもあまり食べない時は獣医に相談しましょう。
キャットフードを与える際の注意点
適切な食事回数
猫は年齢や個体に応じて適切な食事回数や一度に与える量が変わります。例えば、成長期の子猫はたくさん栄養が必要ですが、消化器官が未発達で一度には食べられないため1日に4~5回に分けて与えます。健康な成猫は1日2回。咀嚼力や消化機能が衰えてきたシニア猫は1日3~4回を目安にしましょう。
適切な食事量
総合栄養食も少なければ健康な成長ができませんし、多ければ肥満になってしまいます。特に迎えた際に聞いた量のまま与え続けていたり、目分量で与えていたり、パッケージの目安が適正量だと誤解していたりする方に多く起こります。食べるべき量は猫ごと、ライフステージごとに異なりますので、必ず愛猫に合った量を与えるようにしてください。まとめ
総合栄養食を選ぶ
ウェットフードを選ぶ
愛猫に合ったごはんを選ぶ
原材料表示をチェックする
誰のためのフードかを知る
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