猫のフケ|原因・病気の可能性・予防法などについて獣医師が解説
私たち人間と同様に、猫の皮膚にもフケが出ることがあります。フケはほとんどが白っぽく、人間のそれとよく似ていますので、ひと目でフケとわかるでしょう。黒猫や毛の色が濃い猫なら一目瞭然。白猫でも、毛をかき分けてみるとわかります。愛猫の身体の表面に、フケは浮いていませんか? もしくはフケに見えても、角栓やシラミかもしれません。今回は、猫にフケが出る原因や、病気の可能性、市販の保湿スプレー、シャンプーなどの対策について猫の診療室モモ院長の獣医師谷口が解説します。
猫にフケが出るメカニズム
フケは医学的には「落屑(らくせつ)」といい、「鱗屑(りんせつ)」と呼ばれる分厚くなった角質が、表皮から剥がれ落ちたものを指します。フケとは皮膚の新陳代謝によって出る老廃物なので、人間も猫も、多かれ少なかれ必ず出ます。皮膚の表面では常に新しい細胞が作られ、古くなった細胞は最終的には死んだ角質細胞になって皮膚から脱落するからです。
健康な猫は自分でグルーミング(毛づくろい)を念入りに行いますので、このときにフケも一緒になめてキレイにできています。つまり、フケが目立つ状態のときは、毛づくろいで処理ができないほど多量のフケが出てしまっているか、毛づくろいが充分にできていないかのいずれか、もしくはその両方ということになります。
例えば年を取った猫は、皮膚が乾燥してフケができやすくなるとともに、毛づくろいをあまりしなくなるのでフケが目立つようになります。また、とても太った猫で、自分で毛づくろいができない(お腹やお尻などに舌が届かない)子がいます。このような子もフケがたまりやすいです。
猫のフケの原因と考えられる原因と病気
フケの正体は剥がれ落ちた角質。つまり、フケが出る主な原因は「フケが作られる量が増えている」「出たフケが皮膚表面にそのままたまっている」のどちらかが考えられます。
フケが作られる量が増えている場合の原因
主に「フケが作られる量が増えている」場合は、以下の3通りの原因が考えられます。- 皮膚の乾燥
- 皮膚の病気
- 全身性の病気
皮膚の乾燥
最も一般的なのは皮膚の乾燥です。毛をかきわけて皮膚を観察すると、皮膚全体がカサカサとした質感になっている場合は、皮膚が乾燥しているサインです。皮膚の病気
アレルギー、感染症などの皮膚の病気が原因でフケが出ている可能性もあります。これらの病気の結果としてフケが出ている場合は、赤み、かゆみ、炎症などを伴うことが多いです。一般的に、アレルギー性皮膚炎、寄生性皮膚疾患(ツメダニ、シラミ等)、皮膚糸状菌症(水虫菌のような菌の感染による皮膚病)のときには、小さめのフケがポロポロと出ます。特に皮膚糸状菌症では、白っぽいカサブタのような病変ができ、そのカサブタが毛と一緒にポロポロと剥がれ落ち、円形脱毛のようになるのが特徴的です。余談ですが、シラミに感染しているときは、「フケ」と「シラミそのもの」の区別がつきにくいこともあります。顔・耳・背中にばかり細かいフケがたくさんついていたら、フケに見えているうちの一部はシラミかもしれません。
全身性の病気
全身性の病気がフケの原因になっていることもあります。例えば猫免疫不全ウイルスなどの感染症や、糖尿病や甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患が挙げられます。これらの病気は皮膚のバリア機能を弱めてしまうので、結果的に脂漏性の皮膚炎を引き起こしたり、二次的に感染性の皮膚炎にかかってしまったりします。全身性の病気が見つかった場合は、まずその病気の治療をしっかり行いましょう。猫から出たフケが皮膚表面にそのままたまっている場合の原因
出たフケが皮膚表面にたまってしまう場合ですが、「高齢」か「肥満」が原因の可能性が高いです。よく見られるのは高齢により毛づくろいをあまりしなくなり、今までは毛づくろいの時に取り除かれていたフケが体表に残ってしまう場合です。それから、肥満によって毛づくろいできない部分ができると、その部分に抜け毛や皮脂汚れが溜まってしまい、フケの原因になることもあります。ちなみに、動物病院や極度に緊張する場面で一気にフケが出ることがありますが、これはその時にフケが生成されているわけではなく、毛が逆立つことで、徐々に落ちるはずだったフケが一気に落ちてきているために起こる現象です。
猫の黒いフケは?
皮膚全体のベタつきが気になる子では、黒っぽいフケのようなものが見られることがあります。これは皮脂や汚れが固まった「角栓」で、顎の下や尾の付け根に特に多くみられます。皮脂の分泌が盛んな子では、皮脂によって腰〜尾の付け根あたりの毛が固まったようになることもあります。
猫のフケの治療法
必要な場合は投薬や外用薬などで治療を行います。体質的にフケが病的に出る場合や、皮膚表面の免疫バランスが乱れて一定の菌などが繁殖している場合は、シャンプーによる薬浴治療を行うこともあります。一般的に、乾燥やアレルギーなどの場合は保湿力のある低刺激シャンプーで洗い、真菌やマラセチアなどの菌が繁殖している場合は抗菌作用のあるシャンプーで洗います。
洗う頻度は原因・症状によってまちまちです。症状がひどいときは集中的に週2〜3回のペースで洗うこともあります。症状が落ち着いている場合は、1カ月に1回程度か、それより間隔をあけます。皮膚表面の状態を良好に維持するためには、その子に合ったシャンプーの頻度がわかったら、そのペースを守ることです。
猫のフケの予防法
特に病気や炎症がない場合、猫のフケは乾燥が原因になっていることが多いです。特に高齢の猫などでは乾燥が問題になります。特に冬場などは適度に部屋を加湿するなどして、乾燥を避けるようにしましょう。
逆に、皮脂の分泌が盛んすぎてフケが出ている子は、フケや皮膚そのものがベタっとした感じになっています。黒っぽい皮脂の汚れである角栓が出るのも特徴的です。その場合は、脂の出やすい部分は定期的に脱脂力のあるシャンプーで洗ってあげましょう。シャンプーの種類や頻度は本人の皮膚の状態によってさまざまなので、自己判断で行うとフケが悪化する場合もあります。
お家でシャンプーする場合でも専門家の指導を受けましょう。また、乾燥が原因の場合は保湿力のあるスプレーを使う、ベタつきが原因の場合は特に気になる部分を蒸しタオルなどで重点的にきれいにしてあげるなど、シャンプー以外の日常的なケアが効果的な場合もあります。保湿スプレーは病院でも処方してもらえますし、近年は市販品でもかなり優れた製品が売られていますので、あわせて相談してみましょう。
また、毛づくろいがうまくできなくてフケがたまっている場合は、人間がブラッシングや蒸しタオルなどで日常的にケアしてあげることが必要です。この場合、抜け毛もうまく抜けずにたまっているので、ブラッシングは必ず行いましょう。高齢になり体が思うように曲がらず、これまでできていた毛づくろいができなくなる子は非常に多いです。本人の太り過ぎでなめられない部位ができている場合は、言うまでもなくダイエットが必要です。
猫のフケにおすすめのフード
皮膚の状態は食事内容によっても左右されます。皮膚に良質な脂肪酸を含むフードがおすすめです。また、アレルギー性皮膚炎でフケが出ている場合は、アレルギーに配慮したフードや、タンパク質を低分子に分解した治療目的の処方食などが有効です。かゆみや赤みを伴い、しきりに毛づくろいをする場合、アレルギー性皮膚炎の可能性が高くなります。市販のフードでも、銘柄や味を変更することで偶然に症状が改善することもありますが、症状が強い場合は早めに病院で薬を処方してもらって、しっかりと治療しましょう。
猫のフケが出ないように日頃からブラッシングを
フケが出ること自体は病気ではありませんが、皮膚病や全身性の病気に続発して起こっている場合があるので、フケが多いなと感じ、皮膚の赤みや炎症を伴う場合は必ず動物病院に相談してみましょう。結果、日頃のケアやシャンプーで対処できる場合もあります。ブラッシングや本人の毛づくろいが充分にできていないなと感じたら、まずは毎日ブラッシングするところから始めてみてください。