犬に血統書は必要? メリット・デメリットや発行手続き、詐欺について解説

犬の血統書は、「あったほうが良いもの」「価値の高さを示すもの」とイメージする方が少なくないと思います。しかし、それらのイメージと血統書が持つ本来の意味には少し違いがあります。そこで今回は「血統書とは何か」をテーマに、発行手続きやメリット・デメリット、血統書詐欺について解説します。

犬の血統書とは何か

血統書というのは「血統証明書」の略で、「血統証」と略される場合もあります。文字通り犬の両親をはじめとした血筋を示したものです。血統書は純血種を繁殖させるために必要なもので、犬の質や価値を表すものではありません。犬種にこだわらない人にとっては意味を持たないものです。

どんな人に血統書が必要?

では、具体的にどのような人に血統書が必要なのでしょうか。主に以下の三つが挙げられます。

1. 特定の犬種を飼いたい
血統書は、犬の血筋をジャパンケネルクラブ(JKC)や日本社会福祉愛犬協会(KCJ)といった血統書発行団体の審査によって保証したものです。そのため、特定の犬種を飼いたいと思っている方にとっては、別の犬種の血が混じっていないことを知るための資料となります。

2. 競技会に参加したい
ドッグショーや訓練・アジリティー競技会は、犬種ごとに部門が分かれていたり、血統書があることを参加条件にしていたりします。もちろん血統書を必要とせず、雑種でも参加できる競技会もたくさんありますが、同じ犬種で競いたい方には血統書が必須のものとなります。

3. 特定の犬種を繁殖させたい
ブリーダーの中には雑種(いわゆるミックス犬を含む)専門の方もいますが、多くは特定の犬種にこだわって繁殖を行っています。販売する際には別の犬種の血が混じっていないことを証明しなければいけませんので、血統書が必要となります。

血統書の歴史

血統書はいつ頃から存在するのでしょうか。歴史をたどると、19世紀の終わりから流行するようになった「優生学」という考え方を説明する必要があります。これは1859年に発刊されたダーウィンの『種の起源』から影響を受けたもので、遺伝を恣意的に操作することでより優良な種を生み出すことができるという考え方です。しかし、この考えはナチスの人種政策を招くきっかけにもなり、現在は倫理的に問題のある疑似科学とされています。というのも容姿や頭脳、身体能力などで定義される「優良」は、往々にして主観的なものでしかないからです。

一方で、速く走れることを優良とするサラブレッド(競走馬)や、定められた姿形の標準(スタンダード)をもとに競うショードッグでは、優良とする性質を発現させるための交配が行われ、その証拠や資料として血統書が利用されます。

ジャパンケネルクラブによると、日本で血統書が発行され始めたのは、1914年に始まった第一次世界大戦がきっかけです。軍用犬としてジャーマン・シェパードやドーベルマンなどの洋犬種が活躍するようになると、日本原産の犬種を守ろうとする単犬種団体が設立されるようになりました。そして第二次世界大戦が終わるとドッグショーが開催され、さまざまな洋犬種が持ち込まれるようになり、血統書の役割も増していくのです。

誰が血統書を発行しているの?

血統書は国ごとに複数の団体によって発行されています。日本では、

が代表的で、

のように犬種を限定して発行している団体もあります。海外の団体との連携により、国際的な血統書として認められる場合もあります。ジャパンケネルクラブによると、2015年は134犬種、30万1605匹が登録されたそうです。ちなみに犬種別で多かったのは1位がプードル、2位がチワワ、3位がダックスフンドでした(※)。

※プードルはトイ・ミニチュア・ミディアム・スタンダードの合計。ダックスフンドはカニヘン・ミニチュア・スタンダードの合計。

血統書の発行に必要なもの

犬種には、その犬種の理想の姿を定めた「犬種標準(スタンダード)」があり、犬種標準を満たしていなければ血統書は発行されません。例えばアメリカの単犬種団体ペンブローク・ウェルシュ・コーギークラブ・オブ・アメリカ(PWCCA)が定めたコーギーの犬種標準は、

  • 体高は10〜12インチ(25.4cm~30.48cm)
  • 体重はオスが30ポンド(13.5kg)以下、メスは28ポンド(12.6kg)

といったことが詳細に決められています。ちなみにコーギーには尻尾が無いのが一般的ですが、それは生まれたときに断尾をしているためです。もともと牧畜犬だったときに牛に踏まれてケガすることを避けるためといった理由があったのですが、家庭犬となった今では、「犬種標準に断尾と書かれている」というのが唯一の理由です。

また「鼻ぺちゃ」として知られるフレンチブルドッグは、鼻が短いほどよいとされてきましたが、その結果として「短頭種気道症候群」というさまざまな病気を引き起こすことなりました。そこでジャパンケネルクラブは2017年3月、フレンチブルドッグの犬種標準として、鼻の項目に記載していた「たいへん短く」を「短く」に改正しています。

血統書には何が書いてあるの?

血統書は発行団体によって異なりますので、一般的な記載内容を紹介します。

血統書見本

まず犬名ですが、これは飼い主が付ける名前(コールネーム)とは異なり、ブリーダーが付ける名前です。洋犬種の場合はアルファベット、和犬種の場合は日本語で表記され、名前の後ろにはブリーダーの犬舎名が続きます(血統書にコールネームを併記することも可能です)。ドッグショーで優秀な成績を収めた犬にはチャンピオンという称号が与えられ、血統書に記載されます。祖先犬のチャンピオンタイトルも数世代前まで記載されるのが一般的です。

次に犬種名、登録番号、性別、生年月日、毛色、繁殖者、所有者のほか、DNA登録番号やマイクロチップのID番号が記載されます。所有者の欄は、飼い主が決まった際に繁殖者から名義変更をすると新しい所有者と譲渡日が記載されます。そのほかジャパンケネルクラブでは、犬の代表的な遺伝性疾患である股関節形成不全症と肘関節異形成症を減少させるため、任意で股関節評価、肘関節評価を血統書に記載しています。

犬の血統書の発行手続き

血統書はどのように発行されるのでしょうか。団体ごとに手続きも異なりますので、ここではジャパンケネルクラブを例にして、発行手続きや名義変更、発行されない場合に考えられる理由について説明します。

血統書はいつ発行される?

血統書は登録(一胎子登録)が生後90日以内かどうかで料金が変わってきます。90日以内の場合は2200円で、91日以降は5600円です。なお生後2年を超えると登録はできません。申請から血統書が発送されるまでの期間は15日が目安となっています。

血統書の名義変更

ジャパンケネルクラブの会員になっているブリーダーがブリーディングした犬は最初、所有者が飼い主ではなく繁殖者として登録されています。そのため、同クラブのデータ上で所有者を飼い主にするためには、名義変更を行わなければいけません。変更料は発行日からどれだけの期間がたったかで異なり、6カ月以内であれば1200円ですが、6カ月以上だと3400円です。

血統書の所有者は所有権を証明するものではありませんので、名義変更をしなくても飼い主の家族であることに変わりはありません。ただ、血統書を再発行したり繁殖をして生まれた子犬の血統書を作成する際に正しい所有者の確認をしなければいけませんので、同クラブは早めの名義変更を推奨しています。

血統書が発行されないとき

書類に不備があると血統書が発行されません。不備は、単純な記入・捺印漏れや誤記入のほか、父犬のDNA登録が完了していない場合、名義変更が完了していない場合などが挙げられます。ちなみに、先ほどジャパンケネルクラブでは生後2年を超えると登録ができないと説明しましたが、親子すべてのDNA確認ができる場合は登録が認められます。

血統書詐欺とは

血統書はブリーダーと発行団体の信頼関係で成り立っている部分が多く、悪意のある申請が通るケースも少なからず存在します。よく知られているのが出生数を実際より多くして申請し、余った血統書を血縁関係のない犬に使ってしまうというものです。そういった犬が販売するのは詐欺であり、犯罪行為です。ただし、最近はDNA登録が義務付けられていたり、DNA検査で後から確認する方法もありますので、以前に比べると血統書詐欺の数は減ってきたようです。

血統書を購入時にもらえない!?

血統書付きとしてブリーダーやペットショップ販売されている犬を購入しても、購入時に血統書がもらえない場合があります。これは二つ理由があり、一つは血統書の申請から発行までには2週間ほどの時間が掛かるためで、購入日が早いと届くまでの期間が開いてしまう場合があります。

もう一つの理由は、申請に時間が掛かる場合です。毛色など生まれてすぐに分からない部分がありますので、申請が遅くなり発行されるのも遅くなる場合があります。ただブリーダーさんが飼い主に送付するのを忘れているパターンもありますので、購入から何カ月もたつ場合は確認してみたほうがいいでしょう。

血統書のメリット・デメリット

前述した通り、血統書は犬としての価値を表すものではなく、あくまで繁殖の際の資料や純血種の保存のためとして存在しています。一般の飼い主にとっては、

  • 犬種標準により成犬の容姿が想像しやすい
  • 繁殖者が誰なのかが明確になる
  • ドッグショーや競技会に参加できる

といったメリットが存在します。一方で、血統書があることで販売価格が上がったり、犬種標準が犬の負担になっている場合がありますので、血統書は無いよりはあったほうがいいものというわけではありません。

血統書が無いことのデメリットとしては、

  • 想像している犬種と違う姿形になる場合がある
    (※血統書があるからといって100%保証されるわけでもありません)
  • ドッグショーや競技会に参加できない

といったことが挙げられます。繁殖をせず、ドッグショーや競技会に参加しなければ無いことのデメリットはほとんど無いと言えます。

血統書のある犬は健康的で寿命が長い?

血統書が犬の健康と直接的に結び付くことはありません。むしろ犬種標準を満たすために無理な交配をして先天性の遺伝病を強くしてしまった短頭犬種のような例もあります。ただ犬種標準によって平均寿命が想像しやすいと言えます。

兄弟や親戚の探し方

血統書の登録番号を使うことで兄弟や親戚を探せるインターネットサービスがいくつか提供されています。

Relative Navigator

Relative Navigatorホームページ

老舗の検索サイトで、血統書の情報を手入力することで情報が蓄積され、兄弟や親戚を探すことができるようになります。

PEDI

PEDIホームページ

昨年オープンしたばかりのサービスで、こちらは血統書のデーターベースと紐付いているため、情報を手入力する必要はありません。

本当に血統書が必要か考えてから迎えましょう

血統書は犬の価値を決めるものではありませんので、犬種標準を重視したドッグショーや競技会への出場を考えていなければ必要のないものです。血統書にもメリットデメリットがありますので、本当に必要かよく考えてから迎えましょう。

ペットを飼うなら「OMUSUBI」から

OMUSUBIサイト

犬を迎えることを検討されている方は、ぜひ保護犬の里親募集サイト「OMUSUBI」を覗いてみてください。血統書付きの犬が里親を募集していることは非常に少ないですが、犬種標準に近い犬や、雑種でも魅力的な子たちがたくさんいます。ペットショップやブリーダーからの購入を検討する前に、保護犬を迎える選択肢も検討してみてください。

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第2稿:2017年5月23日 公開
初稿:2016年10月11日 公開

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