高齢者でもペットを飼える? アニマルセラピーのメリットや支援サービスを紹介

高齢化が進む中、高齢者がペットを飼うことも増えています。ペットと暮らしたい気持ちはどの世代でも同じです。ましてや子どもたちが独立し、自分も仕事を引退した後の「第二の人生」を考えると、ペットは新たな家族として大切な存在になるでしょう。高齢者がペットを飼うことには問題もあり、安易には飼えませんが、最近ではペットを飼う高齢者を支援する仕組みもできています。今回は、高齢者がペットと楽しく暮らしていくために知っておくべきこと、注意すべき点を紹介します。

高齢者のペット飼育率(年代別の割合)

一般的に高齢者とは65歳以上を指します。ペットフード協会が2017年1月に発表した2016年度の「全国犬猫飼育実態調査」によると、各年代ごとに「過去10年間に飼育していたペット」(現飼育含む)を聞いたところ、60代が最も高い26.8%となりました。

猫(※) 飼っていない
20代 22.4% 12.5% 56.0%
30代 19.3% 12.6% 59.7%
40代 19.0% 13.0% 54.9%
50代 23.6% 14.4% 52.0%
60代 26.8% 14.8% 3.9%
70代 22.3% 12.7% 57.6%
※外猫(野良猫、地域猫)は除く

高齢者がペットを飼うことで起きる問題とは

犬と高齢者

若くても高齢でも、動物を一緒に暮らしたい気持ちは変わりません。同時に、命を預かる責任も変わりません。若くても時間や経済的な余裕が無ければペットを飼うべきではありませんし、それは高齢でも同じです。さらに、高齢の方の場合は自分の体のことも考えなければいけません。

高齢の方とペットの生活起こりやすいこと

ペットの世話が大変になってきた

自分の体力が落ちてきて、毎日世話をするのが大変になってくることが多いです。散歩に連れて行ったり、糞尿の掃除など、ペットも恒例になってくると介護も大変です。また視力や握力が低下し、ケアも大変になってきます。

少しの間、預かってもらいたい

自分が検査入院などをする必要になった場合、ペットがいるから入院ができないことも考えられます。もちろんペットホテルなどで預かってもらうことは可能ですが、長期間だと出費も大きなものになります。周りに預かってもらえる家族や友人を事前に探しておきましょう。

高齢の方が飼えなくなったペットの引き取りが増加中

現在の日本において、平均寿命は男性が80歳、女性が87歳とされています。一方で犬の平均寿命は14歳とされていますので、もし子犬から飼うとした場合は犬なら66歳を過ぎてしまえば、ペットよりも先に自分が死んでしまう可能性が高まります。

年を取れば体力的にも、入院や老人ホームへの入所など環境的にも、ペットの世話をするのが難しくなります。実際に高齢者がペットを飼育できなくなり、保健所や動物愛護センター、動物保護団体に保護され、引き取られるケースが増えています。新しい飼い主が見つかればいいのですが、老犬・老猫の場合だと譲渡率も下がりますので、殺処分されてしまう可能性も高まります。また、高齢者の孤独死によって取り残されてしまうペットの存在も問題になっています。

そのため保護団体の中には高齢の方への譲渡は条件を設けている場合があります。60歳以上は譲渡不可という団体もあれば、後見人を付ければ70歳までは可という団体もあり、その条件は団体によって異なります。一概に高齢者だからペットは飼えない/飼うべきではないということではありません。どんなことに気を付ければ高齢者でもペットと暮らせるのかについて後半で詳しく紹介します。

高齢者も気を付けたいペットロスの影響

家族の一員としてかわいがっていたペットを亡くしたとき、その喪失感から体調を崩したり、精神的に参ってしまうことがあります。日常生活のあらゆることにやる気が起きなくなってしまったり、食欲が無くなったり、極度に感情的になったり、いないはずのペットの姿を見てしまったり……。若い人であれば体力や精神力に余裕もありますが、高齢になるとそれが体調悪化に直結してしまう場合があります。

ペットは急な病気や事故で亡くなってしまう場合もありますが、健康でも「高齢になれば必ずその時が来る」ということを覚悟して心の準備をしておくことが大切です。一人で抱え込まず、誰かに相談したりカウンセリングに頼ったりすることも考えておくと安心ですね。

犬と高齢者

高齢者でもペットを飼ったほうがいい理由(メリット)

先に高齢者がペットを飼うことの問題点をあげたので、「やっぱり高齢者はペットを飼うべきではないんだ」と思ってしまうかもしれませんが、悪い面ばかりではありません。動物と共に暮らすことは、とても素晴らしいことです。正しく飼育し、自分がいなくなってもその子が幸せに暮らせる準備をしておけばいいのです。

アニマルセラピーは高齢者にどんな効果がある?

動物とふれあうことの良い点として、「アニマルセラピー」という言葉を思い浮かべる方も少なくないと思います。アニマルセラピーは、正確には医療者が治療を目的として計画的に動物が関わる「動物介在療法」(Animal Assisted Therapy)と、ふれあいによる癒やしやQOL(Quality Of Life:生活の質)の向上を目的とした「動物介在活動」(Animal Assisted Activity)に分かれます。「動物介在療法」はまだまだ発展途上の分野ですので、一般的に「アニマルセラピー」と言う場合は、後者を指しています。

山口県にある「岩国医療センター」では、がん患者の身体、精神的苦痛の緩和ケアとしてアニマルセラピー(医師の参加や実施後の検証は限定的に行われているため「動物介在活動」)を導入しており、安全衛生面で問題はなく、患者やその家族は癒しを感じ、医療者とのコミュニケーションの改善が得られたと報告しています。

高齢者の孤独死が社会問題になっている通り、子どもが独立したり、社会との接点になるコミュニティーも持たなかったりする方にとって、ペットは何者にも代えがたい大切な存在となります。一方で、もしもの時に残されてしまうペットのこともきちんと考えなければいけない大切な問題です。

高齢者のペットの飼い方

高齢者がペットを飼うためには、どういったことに気を付ければいいのでしょうか。まずペットショップから飼うことはオススメしません。ペットショップであればお金さえ出せば飼いたい人が何歳だろうと買えますが、ペットショップにいるのは子犬やです。自分の寿命とその子たちの寿命を天秤にかけるようなリスクを負うべきではありませんし、何より子犬は性格や健康の問題が読めないというリスクがあります。

子どもの頃は小さかったのに予想以上に大きく育ったり、散歩が必要だったりするかもしれません。先天的な病気が分かり、日常的なケアや動物病院への通院が頻ぱんに必要となる可能性もしれません。年を取れば取るほど、そういった不測の事態への対応は難しくなります。それに、子犬はとてもかわいいですが、子犬の期間は思っている以上に短いのです。

犬と高齢者

ペットの飼い方の基本

  • 新鮮な水と、種類や年代に適したペットフードを適量与えましょう。
  • 散歩や遊びなどで、十分に運動させましょう。運動不足が続くとストレスを感じ、吠えや噛みつきなど問題行動につながります。
  • ペットの数が増えないよう、繁殖を望まないのであれば不妊去勢手術をしましょう。子宮や卵巣、精巣の病気予防にもなります。
  • かかりつけの動物病院を決め、病気の時だけでなく、定期的にペットの健康診断やワクチン接種などを受けましょう。
  • 逃げたり迷子にならないように飼いましょう。家の出入り時は注意が必要です。また、万が一に備えてマイクロチップを入れたり、迷子札をつけておきましょう。
  • 災害が発生した時に備えて同行避難できるよう準備しておきましょう。

犬を飼ったら畜犬登録と毎年の狂犬病予防注射を受ける必要があります。鑑札と予防注射済票は首輪などに装着するようにしましょう。また、散歩の際はリードをきちんと付けることはもちろん、糞尿はきちんと処理しましょう。

高齢者におすすめの保護犬という選択肢

高齢者がペットを飼うための選択肢の一つとして考えられるのは、保護犬から飼うということです。もちろん保護団体によって60歳以上への譲渡は完全に不可だったり、厳しい条件が付けられることが珍しくありません。しかし、そういった条件をクリアすることは不可能ではありません。

保護犬には子犬もいますが、多くは成犬で、老犬もいます。そして飼いやすく初心者向きなのが7歳以降の犬です。なぜなら7歳にもなると性格が明らかになっており、若い頃のヤンチャも落ち着いているからです。その年齢になると運動量が増えることも無くなりますので、どれくらい散歩が必要になるかも事前にわかります。また、先天的な病気もだいたい分かっているため、日常的にどんなケアが必要かや、これからどんなケアが必要になってくるかも想定しやすくなります。

ぜひ保護犬の里親募集サイト「OMUSUBI」(お結び)も覗いてみてください。

後見人がいれば高齢者でも犬が飼える?

高齢者が犬を飼う上で必要になってくるのは後見人です。保護団体は基本的な条件にしていることが多いですし、ペットショップやブリーダーから買うとしても、自主的に後見人を考えておくことは重要です。ただし、安易に後見人を決めてはいけません。

実際に後見人が必要になるのは、後見人を決めてから5年後、10年後になります。最初に約束したときは後見人もペットを飼える環境にあったとしても、時間がたてばペット不可の家に住んだり、結婚したり子どもができたりで環境が変わって飼えなくなっている可能性があります。自分自身もそうですが、後見人も先のことは不確実です。安易に後見人の約束をせず、お互いに責任と覚悟を持って約束するようにしましょう。

ただ、いくら確実で安心できる後見人を見つけられたとしても、ペットも飼い主が変われば負担になります。後見人はあくまで、もしもの時の話として、最後まで自分が責任を持って命を預かる覚悟で飼うようにしてください。

高齢者がペットを飼うための支援サービスも

犬と高齢者

最近では高齢者がペットを飼うための支援サービスも出てきています。

高齢者向け代行サービス

まず、ドッグトレーナーによるトレーニングは代行サービスの一種と言えます。高齢になれば体力を使うような犬のしつけは難しくなりますので、飼い主の指示をきちんと聞いてくれるようにドッグトレーナーの力を借りのも一つの手です。

散歩を代行してくれるサービスもありますし、送迎をしてくれるトリミング施設もあります。動物病院へ連れて行くのを支援するペット専用のタクシーも各社から出てきていますので、自分ではなかなか難しい場合は、それが病院やトリミングへ行く回数を減らす理由にならないように、愛犬の健康のためにどんどん活用してあげてください。

ペットと暮らせる老人ホーム

老人ホームに入ることが決まったため保護され、新しい飼い主を探すことになった保護犬がたくさんいる一方で、最近ではペットと一緒に入所できる老人ホームも出てきました。そういった施設では飼い主が先に亡くなってしまったとしても、代わりにペットを最後までお世話してくれる仕組みになっています。金額的に決して安いとは言えませんが、飼い主もペットも安心して暮らすための選択肢になるのではないでしょうか。

“万が一”に備えましょう

高齢の方に限った話ではありませんが、突然の事故や病気などでペットとの暮らしが急転してしまうかもしれません。万が一ペットより先に死亡してしまった場合などに備えて、ペットのことを十分に考えておきましょう。

ペットのための遺言を残す

ペットのために遺言書を残しておくこともできます。弁護士や行政書士などに相談して、ペットを誰に託すか、ペットのためにどのように財産を残すかなどを整理し、法的に有効な遺言書を作っておきましょう。また、ペットを他の人に譲り、飼育を託したいと思っている場合は、譲りたい相手から承諾を得ておくことも大切です。

ペットのための信託を利用する

ペットのために信託会社へお金を預けておき、いざとなったら、そのお金をペットのために使用することができる仕組みがあります。飼い主は、あらかじめ、ペットの世話を誰にしてもらうかを決めておきます。預けたお金は、ペットのために使われます。詳しくは弁護士や行政書士などに相談してみましょう。

高齢者がペットを飼うのは難しい……けど、無理ではない!

余生を大好きなペットと共に過ごすというのはアニマルセラピーといった利点があり、理想ではあります。でもそれは、人間側の一方的な話。高齢者がペットを飼うための支援があったとしても、何が起こるか保証できるものはありません。本当に犬や猫の命に責任を持てるのか。よく考えてから迎えるようにしましょう。人も動物も、最後まで幸せに暮らせるといいですね。

第2稿:2017年5月9日 公開
初稿:2016年10月30日 公開

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