犬に噛まれた! 飼い主の責任や治療費など法律を弁護士が解説

もし犬に噛まれてしまったらどうしたらいいのでしょうか。また、愛犬が他人にケガをさせてしまったら? 治療費や保険、トラブルにならないためのしつけなど、動物が好きだからこそ知っておきたい「もしもの時」の対応について杉浦弁護士の解説を交えて紹介します。

犬に噛まれてしまったら

愛犬や他の犬に噛まれてしまった場合、どうしたらいいのでしょうか。必要な傷口の手当て方法や、他人の犬に噛まれてしまった場合の治療費問題など一つずつ確認してみましょう。

怒っている犬

犬に噛まれてしまった時の対応

犬に噛まれてしまった場合、痛みと驚きで手を引っ込めてしまったり、必死に犬を引きはがそうとしてしまったりすると思います。しかし、そういった行動はとても危険です。犬の歯は肉を裂くためにしっかりとした犬歯があります。噛まれたからと身を引くではなく、第三者がいる場合は手伝ってもらい、犬の口を開かせることが先決です。

犬(猫)が犬に噛まれてしまった時も冷静な行動が大切です。興奮して周りが見えなくなっている犬の仲裁で飼い主さんが噛まれ大けがをしてしまうこともあります。

噛まれてしまった後の傷口の処置

傷口の程度によりますが、軽く血がにじむ程度でしたら傷口を流水で洗い清潔なタオルで拭き抑えておきましょう。傷口が大きく、流血している場合は止血が最優先です。直ぐに病院に行きましょう。軽傷であっても細菌が入って症状が悪化してしまうこともありますので、しっかりと病院で診てもらいましょう。

犬に噛まれたら治療費は?

犬に噛まれた場合、噛んだ犬の飼い主に民法上の不正行為責任が成立すると損害賠償請求ができます。その場合、治療費や休業損害、精神的苦痛に対する慰謝料などが賠償の範囲となります。日本の法律は「動物の愛護及び管理に関する法律」も含め、すべて「人のための法律」です。犬や猫などのペットは「モノ」として扱われます。そのため、例えば愛犬が噛まれた場合は愛犬が主体となって治療費や精神的苦痛に対する慰謝料を請求するとはできませんが、自分の「所有物」に対する損害として賠償請求や慰謝料請求をすることになるのです。

飼い主の責任

犬や猫などの愛護動物に限らず、「動物を占有している人」「占有者に代わって動物を管理する保管者」「占有補助者」にも責任の規定が法律で定められています。

民法第718条1項「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその保管をしたときは、この限りではない。」

そのため愛犬が他人を噛んでケガを負わせた場合、飼い主はケガをした人に損害賠償を払う必要があります。その場合の損害には、愛犬が他人の身体に加えた損害だけでなく、物を壊したり、他人の飼育動物を殺傷したりした場合など、他人の「所有物」に加えた損害も含まれます。

杉浦弁護士の解説

損害賠償については大きなケガになってしまった場合、その被害者に払うお金も大きくなります。治療費だけではなく、慰謝料も支払う必要がある場合もあります。例えば、人の腕の見えるようなところに大きな傷跡が残ってしまうような場合などは、慰謝料だけで軽く100万円を超えることもあります。保険に入っていれば安心ですが、そうでない人も多いのではないでしょうか? ただ、相手に「落ち度」があれば、「過失相殺」といって、その分を差し引くことができます。そのための準備は、出来る限り早めに行うのがよいでしょう。その現場を見ていた人がいるときは、その人に話を聞いて、メモに残しておきましょう。

また、多くの自治体では狂犬病などの感染症の関係で、ペット(特に犬)が人をケガさせた場合は、保健所へ届出を行うよう要請している場合があります。この届出で、この事件がどのようにして起こったのかを書いてください。届けを提出したから殺処分になるというわけではありません。

喧嘩してる犬

理不尽だと思う事故も

民法第718条の1項に「ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその保管をしたときは、この限りではない。」と書かれていますが、相当な注意が認められ免責されることは非常にまれで、占有者が注意義務違反ではないことを立証するのは極めて難しいといえます。

事例として、

  • 自転車に乗っていた犬嫌いの子供が、犬を見て驚き転倒し大けがを負った。
  • 犬を見て驚いた老女が驚いて転んでけがをした。
参照:日本愛玩動物協会(2017)『愛玩動物飼養管理士1級教本』

といったことがありましたが、どちらも飼い主に管理義務違反があるとされています。また、「犬を家の庭で遊ばせていたところ、道路から柵越しに手を入れて犬を触ろうとした子どもに犬が噛みついた」という場合も飼い主に責任が発生してしまいます。

参照:『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』第4条第2項「犬の所有者等は、犬をけい留する場合には、けい留されている犬の行動範囲が道路又は通路に接しないように留意する」

弁護士さんに聞いた!「こんな時どうしたら……」

「自分の愛犬が他人にケガを負わせてしまったら……。被害者の手当てをするのは当たり前。でも犬がいるから一緒に救急車に同乗したり病院に付き添ったりできない。どうしたらいいの?」

杉浦弁護士の解説

このような事件が起こってしまった時、被害者やペットの心配でバタバタされるかと思いますので、このようなときにどうすべきかの対処方法をお教えします。

まずは被害者のために救急車を呼んでください。ご自身の携帯電話か、近くの人に頼んでも大丈夫です。救急車が来るまでは被害者の応急処置をしてあげてください。その間、ペットは誰か近くの人に預けるか、リードフックなどで留めておくのがよいでしょう。救急車が来たら、被害者を引き渡してください。被害者と一緒に病院に行く必要まではありません。

法律の話をすると、愛犬が被害者にケガをさせてしまった場合、周りに助けてくれる人がいないような状況で手当てなどをしないで放置するのは、「保護責任者遺棄罪」という罪が成立することになります。そのため、被害者のために何かしら手を差し伸べなければなりません。一般的には、手当ができれば手当を、できないようなケガであれば救急車を呼び、救急車に引き渡せばよいといわれています。ただ、一緒に病院に行く必要まではありませんし、救急車に一緒に乗ることも、拒まれる事案のほうが多いでしょう。

愛犬が人やペットを誤って傷つけてしまった場合重要なのは、初期の対応です。そして、今後このような事件が起らないように予防策を考え、噛まれた人や、飼い主さんのところに菓子折りなどを持参して早めに謝りましょう。

飼育上のトラブルを防ぐために

注意しなければいけないのは動物種や飼育地域など周りの環境にも大きく影響されます。犬であれば、犬種の気質、個体の性格をしっかり理解して適切なしつけを行うことや、散歩やドッグランなどでのマナーなどしつけや工夫で防げるものがあります。猫であれば、完全室内飼いにすることで、近隣トラブルや猫自身も病気を予防することができます。また、最近ではペット保険の中に「賠償責任特約」という保険もありますので、ペット保険と一緒に加入しておくと安心です。

子犬

守れるのは飼い主だけ

愛すべきペットがトラブルを引き起こしてしまわないように、思わぬケガをさせないように守れるのは飼い主さんしかいません。ペット社会、ペットの家族化が進んでいるとはいってもまだまだ法律上「物」扱いで、社会には動物が苦手な人やアレルギーがある人などさまざまです。ペットが暮らしやすい社会のためにも飼い主としてのマナーが大切です。

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第2稿:2018年1月12日 公開
初稿:2015年12月24日 公開

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