犬のブリーダーとは?優良・悪質の違い、子犬を迎えるまでの流れを解説
犬を迎える際の選択肢のひとつに「ブリーダー」があるかと思います。ペットショップで迎えるよりも安いイメージがありますが、悪質なブリーダーも存在するため、安易に金額で決めないようにしましょう。今回は、優良・悪質ブリーダーの見極め方や、日本と海外のブリーダーの違いなど、ブリーダーにまつわることを解説します。
犬のブリーダーとは
犬を繁殖するブリーダーの場合、英語では「a dog breeder」となります。
ブリーダーの主な仕事は、母犬や父犬をお世話し、交配により子犬を出生させ、出生した子犬を販売して収入を得ることです。
ブリーダーは個人経営が多い
ブリーダーは個人経営が多く、会社組織で経営しているケースは全体の10%以下ほどです。個人経営のブリーダーの中でも「専門的」と「副業や趣味」で繁殖に携わる形態が異なります。
子犬の販売ルート
ブリーダー全体の8割程度は、出生した子犬をペットショップやせり市へ卸し、販売を行っています。残りの2割程度が、ブリーダーから直接飼い主さんに譲渡しています。
ブリーダーになるには
犬の繁殖には「遺伝学」「獣医学」「動物行動学」などさまざまな専門知識が必要です。
これらの知識がないと、遺伝的リスクが高い子犬を生み出したり、健康不安や情緒の不安定な子犬を生み出したりしてしまうことがあるでしょう。
専門知識に基づいて、遺伝的リスクを排除するための血統管理や健全な子犬を生育するための飼育体制を整える必要があります。
ブリーダーに資格は必要?
日本にはブリーダーになるための専門資格はありません。一定の飼育環境を整え、開業する地域の動物愛護センターに申請することで、比較的簡単に始めることができます。
ただし、申請には「半年以上の勤務経験」か「動物関連学校の卒業」などの要件があります。
血統証の発行団体
監督官庁へ営業の届出しを行うほか、血統証(血統証明書)を発行するため発行団体に加入する必要があります。血統証の発行団体は「ジャパン・ケンネル・クラブ(JKC)」「日本警察犬協会(PD)」「日本コリー・クラブ(JCC)」「日本ケンネル・クラブ(NKC)」「日本愛犬協議会(JCA)」「日本社会福祉愛犬協会(KC)」などがあります。
最も多く利用されている血統証はJKCです。JKCの血統証は日本で唯一の国際公認血統証明書となり、最もスタンダードといえます。
日本と海外のブリーダーの違い
日本のブリーダーと海外のブリーダーを比較する場合、それぞれの国の法令やペット福祉に対する考え方が大幅に異なるため、単純には比較できません。
イギリス、ドイツ、フランスの場合、ブリーダーは専門性の高い職業で、専門資格が必要です。
開業のハードルにも違いがあり、イギリス、ドイツ、アメリカでは、届出しではなく認可制や許可制であるため、ブリーダーとして適切かどうかを行政が判断します。
また、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカでは、事業者の業法違反は禁固刑や拘束刑など重い罰則規制がありますが、日本の場合、資格制度もなく開業も届出しだけでできます。業法違反の場合も罰金程度の軽微な罰則しかありません。
ブリーダーの違いというよりは、ペット行政によってブリーダーの業界環境やペット産業にこのような違いが生じているといえます。
ブリーダーの質の違い
業界環境の違いにより、ブリーダーの質も大きく異なります。これらのペット行政が進んでいる国に共通して言えることは、ブリーダーは犬の専門家として高い地位にあることです。ブリーダーは遺伝や出産、幼齢犬の生育について、獣医師は獣医学や健康管理についてそれぞれの専門分野を担当して、同等の立場で連携をとり健全な子犬を生み出す努力をします。
一方日本では比較的簡単にブリーダーを始めるケースもあり、専門知識やキャリアの点で海外のブリーダーに及ばないのが実状です。
そんななかでも、優秀なブリーダーは日本にも存在します。安心して子犬を迎えるために、専門知識がある優秀なブリーダーを選ぶことが重要となります。
ブリーダーから迎えるメリットとデメリット
子犬を迎える際、ブリーダーとペットショップ、保護施設から迎える場合の違いを考えてみましょう。
それぞれのショップや施設によって事情が異なるため、あくまで一般論として主な項目に分けて紹介します。
ブリーダー | ペットショップ | 保護施設 | |
---|---|---|---|
同犬種の選択肢(犬の数) | 多い | 少ない | 少ない |
迎える月齢 | 子犬 | 子犬 | 成犬が多い |
両親を見て将来像をイメージする | できる | できない | できない |
犬を見る方法 | 予約、見学 | 展示 | 予約、訪問 |
生体の保証 | ある | ある | ない |
専門的な説明、サポート | 充実 | ショップによって異なる | 施設、団体によって異なる |
利便性(用具などが1カ所でそろう) | ない | ある | ない |
社会貢献性(殺処分軽減への貢献) | ない | ない | ある |
上記のほか、保護団体の場合は、審査などの手続きがあることなどの違いがあります。
優良ブリーダー・悪質ブリーダーの見極め方
ブリーダーの評価に「優良」や「悪質」といった表現が使われることがありますが、一概に優良か悪質かの定義は、極めて難しいといえます。
ここでは、繁殖を行う上で必要な専門知識や飼育管理、対応の観点から、ブリーダーの質を見極めるポイントを紹介します。
必要な専門知識
- 遺伝学の知識(毛色の掛け合せ、遺伝性疾患の排除、成長時サイズ予想)
- 予防医学(衛生管理、ワクチンや投薬、定期駆虫、消毒)
- 健康管理(健康診断、食事量管理、体調チェックのしくみ)
- 性格形成(母犬との接触時間、社会化生育環境、お迎えの月齢の管理)
- グルーミング(適切なケアの実施)
これらの専門知識が不足していると、子犬を迎えた家庭で問題行動や疾病の可能性が高まることにつながります。
飼育管理
- 飼育スペースが不潔、臭い(飼育管理に手が行き届いていない)
- 感染症の治療や予防が不備(衛生管理、健康管理が行き届いていない)
- 先天性の欠点がある親犬に繁殖している(血統管理を行っていない)
- 飼育スペースが狭い(適切運動量、ストレスが無い環境に問題)
- 両親犬が汚れている、あるいは十分なケアがされていない(親犬を見せない)
飼育環境の良し悪しは、分かりやすい判断基準になります。飼育スペースが明らかに汚れていたり動物臭があったりする場合は、不衛生である可能性が高いことを表しています。
見方を変えると不衛生な環境は、世話をする人手が足りていないとも考えることができます。
ブリーダーから迎える際は、犬舎の見学・親犬の確認を行うことで、後々のトラブルを防ぐ一助になります。
対応
- 複数の子犬と十分な時間過ごして選ぶことができる対応
- 子犬の特徴や飼育の質問に対する根拠が明確な応答
- 飼育に必要な事柄や保証、契約内容の丁寧な説明
繁殖にはプロ意識があっても、接客が苦手なブリーダーもいるため、対応だけでの判断は困難です。
ただ、ファーストコンタクトの対応に違和感がある場合は、注意が必要かもしれません。
ブリーダーから子犬を家族に迎えるまでの流れ
ブリーダーから子犬を迎えるときの流れは、以下のような手順が一般的です。
1. 希望の犬種をインターネットで検索
通常ブリーダーは、1~3犬種程度の繁殖を行っています。質的には1犬種だけを専門で繁殖している方が望ましいかもしれません。検索は「犬種名 ブリーダー」でヒットします。掲載されている子犬を見て、価格などの条件が見合えば見学の予約を取ります。
2. 問い合わせをして訪問の予約を取る
見たい子犬の指定や希望のタイプを伝え、日時を調整して見学の予約を取ります。その際、性別や毛色などできるだけ具体的な希望を伝えて、複数の子犬を見せてもらうと良いでしょう。
3. 訪問して子犬を見る
訪問した際は、飼育環境や専門知識があるかを確認することが大切です。お目当ての子犬が元気に飛び回っているか痩せすぎていないか、あるいは、性格が大人しいかなどを良く観察しましょう。
4. 譲渡契約、支払い
気に入った子犬が見つかれば、保証内容など契約条件や付帯費用などを良く確認して契約します。トラブルを防ぐためにも契約書類には、よく目を通しておきましょう。
5. 子犬の受渡し
月齢によっては、契約当日に連れて帰れる場合と適齢になってから改めて迎えに行くケースがあります。家庭での準備が揃ってから、お迎え日を決めましょう。
ブリーダー訪問をする際の注意点
他のブリーダーやペットショップをはしごしないようにしましょう。優良ブリーダーは、衛生管理も徹底しているため、衛生状態が不明な他の動物施設から、感染源となるウィルスや細菌を持ち込まれることを嫌います。
ブリーダー訪問を行う際は、動物施設に立ち寄らないことがマナーです。
優良なブリーダーを見極めましょう
健康で情緒が安定した愛らしい家族を迎えるために優良ブリーダーを見極めることが重要です。
専門家である優良なブリーダーを見つけて、アドバイスを聞いてみるとドッグライフがより楽しいものになるかもしれません。