環境省がペットの災害対策ガイドライン改訂 同行避難と同伴避難の正しい理解を
環境省は熊本地震でのペットとの避難で明らかになった課題をふまえ「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を改訂した「人とペットの災害対策ガイドライン」を発表しました。今回の改定ではガイドラインの名称変更とともに、ペットと飼い主の「同行避難」の考え方が整理されました。
ペットの同室可否は避難所ごとに判断
環境省が25日に開催したシンポジウム「人とペットの災害対策」では、環境省動物愛護管理室の則久 雅司室長が登壇し、今回のガイドライン改訂について説明を行いました。熊本地震から得た教訓とは
2016年に発生した熊本地震では、東日本大震災の経験をふまえて策定された「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」に基いて人とペットの避難が行われましたが、現場では以下のような混乱が起きていました。- 「同行避難」なのか「同伴避難」なのか。ペットの扱いが明確になっていなかった。
- 入院などでペットと一時的に離れる飼い主のための預かり制度が整備されていなかった。
- 各地から来たボランティアがそれぞれ活動し、混乱が生じた。
- 動物分野での広域支援の仕組み作りが進んでいなかった。
- 現地での救護対策本部立ち上げに時間を要した。
今回の改訂では、動物分野の専門家だけでなく人の防災の専門家も参加し、議論が行われました。
「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」改訂のポイント
今回の改訂におけるポイントとして、大きく以下の二つが挙げられます。1. 名称の変更
今回、2013年に策定されたガイドラインの名称「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」が、「人とペットの災害対策ガイドライン」に変更されました。これは「ペットの救護対策」という名称が、災害時に放浪動物を含む「ペットを救うこと」を重要視する印象を与えていたためで、災害時でも「飼い主がペットを適切に飼養することを支援する」という目的を明確にする意図があります。
2. 「同行避難」という考え方の整理
熊本地震では、「同行避難」について以下のような混乱が生じていました。
- 「同行避難」と「同伴避難」の違い。
- 「同行避難」は「義務」なのか「推奨」なのか。
- 「同行避難の受け入れ可否」は誰が判断するのか。
※同伴避難もペットと同室で一緒に過ごすことを意味する言葉ではありません。
今回の改訂では、災害時はペットと同行避難することが基本にあるとしつつ、「同行避難が避難所でペットと一緒に過ごすことを意味するものではない」ということが明確にされました。同行避難した飼い主さんが避難場所でペットと一緒に過ごせるかどうかは、避難場所ごとに判断されますし、状況によっては在宅避難も選択肢となります。災害時もペットとの避難は飼い主が責任を持つことであり、そのためにも日頃からの準備が重要であるとしています。
則久室長はシンポジウムで今回の改訂について、「一人ひとりが動物についてさまざまな価値観を持っているのは当然のこと。それを理解し、互いに寛容な考えをもって接することが人と動物の共生につながる。人と動物の共生のためには、まず人と人の共生が必要です」と説明しました。
熊本地震の経験をもとに進められた改訂
「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」は、2011年に発生した東日本大震災の経験をふまえ、2013年6月に策定されたものです。このガイドラインでは、災害時に飼い主責任による同行避難が行われることを前提としていました。その上で、個人での対応に限界がある事態に備え、支援体制や放浪動物・負傷動物などの救護体制を整備することの重要性も指摘していました。しかし、2016年4月に発生した熊本地震では、同行避難・同伴避難や、物資・医療の広域支援体制について多くの課題が残る結果となり、今回の改訂につながりました。改訂版のガイドラインは環境省ホームページで公開中
改訂版のガイドライン「人とペットの災害対策ガイドライン」は、27日(火)から環境省の動物愛護管理室ページで公開されています。なお、4月上旬ごろに写真や事例などを加えた詳細なガイドラインの公開も予定されています。初稿:2018年2月27日 公開