リビアヤマネコってどんな猫?性格・大きさ・イエネコの祖先と言われる理由を解説
皆さんは「リビアヤマネコ」という猫を知っていますか? ヤマネコの名前が付いている通り野生の猫なのですが、現在ペットとして飼われているイエネコの祖先と考えられています。そう考えると、リビアヤマネコはとても身近な存在に思えてきますね。今回はリビアヤマネコの大きさなどの特徴やなつくかなど性格、飼育している動物園を紹介します。
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リビアヤマネコとは

Photo by yoospicsさん Thanks!
リビアヤマネコとはどんな猫なのでしょうか。まずは、その特徴を紹介します。
砂漠地帯に住む猫
リビアヤマネコは英語で「African Wildcat」(アフリカン・ワイルド・キャット)、もしくは「Dsert cat」(デザート・キャット:砂漠の猫)と言います。リビアヤマネコのリビアは北アフリカに位置する国のことで、英語名のアフリカンは「アフリカの」という意味ですし、デザートは砂漠のことです。つまり、北アフリカやアラビア半島の砂漠地帯に多く住んでいる猫なのです。リビアヤマネコはヨーロッパ大陸に生息する「ヨーロッパヤマネコ」(Felis silvestris, Wildcat)の亜種です。※記事初出時、「全てのwild cat(ヤマネコ)は現在「IUCN」(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources:国際自然保護連合)のレッドリスト(絶滅のおそれがある野生生物のリスト)に掲載されていて、世界的に保護が進められています」と記述していましたが、正しくは絶滅の恐れが低い「低危険種(Least Concern、LC)」に分類されていました。お詫びして訂正いたします。(2018/05/08 16:00)
キジトラそっくりの外見

Photo by mariekespenceさん Thanks!
リビアヤマネコの生息地は日本から遠く、直接目にしたことがある方は少ないと思います。写真で見るとキジトラとそっくりですね。それもそのはずで、現在ペットとして飼われているイエネコの祖先であると言われているのです。
ヨーロッパヤマネコの外見もキジトラに似ていますが、ヨーロッパヤマネコはリビアヤマネコにくらべて毛が長くずんぐりむっくりなのに比べて、リビアヤマネコはスリムでその点もキジトラによく似ています。説明なしで写真だけ見せられたら「キジトラ猫」だと思うかもしれません。

ヨーロッパヤマネコ(Photo by Keimzelle)
リビアヤマネコの被毛はベースの被毛の色が砂のような灰色もしくは薄い茶色で、体全体に褐色から黒の縞模様があります。額の部分にMの字に見える縞模様、目の横からクレオパトラ・ラインと呼ばれる縞模様があり、これらはイエネコに見られる縞模様とそっくりです。
体はイエネコよりも足が長くすらりとしており、耳が大きいので野性味が濃い外見をしています。被毛の色もより砂漠に近い灰色っぽい茶色で、日本でよく見るキジトラよりも全体的に色が薄く、確かに砂漠に溶け込みやすい容姿をしています。
リビアヤマネコの大きさ

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リビアヤマネコの体長は47~60cmで、しっぽの長さは25~38cm、体重は5㎏程度でイエネコとほとんど変わりません。
リビアヤマネコの食生活
リビアヤマネコは野生の猫で狩りをして暮らしています。主に夜間に活動し獲物を探すので、基本的に夜行性です。リビアヤマネコの耳はイエネコよりも少し大きいのですが非常に聴覚に優れていて、小動物の立てる音を聞き逃しません。リビアヤマネコは待ち伏せ型の狩りをし、忍耐強く獲物を待ちます。狩りの獲物は小動物、鳥、爬虫類、虫などです。リビアヤマネコは砂漠地帯に住んでいることもあって、ほとんど水を飲みまず、水分は食べものから摂取します。これは、イエネコにも引き継がれた習性で、猫がなかなか水を飲んでくれないのは先祖に由来するのですね。
リビアヤマネコの性格
リビアヤマネコがイエネコの祖先と考えられるようになったのは2007年に行われたDNAの解析によるのですが、それ以前からイエネコの祖先はリビアヤマネコではないかと推測されてきました。理由は、外見上にほとんど差がないことと、「性格」です。ワイルドキャットと呼ばれる他の野生の猫たちは、幼い頃から育てても野性味が抜け切ることはなく、人間に慣れさせるのが難しいです。しかしリビアヤマネコは他の野生の猫に比べると、幼い頃から人間に育てられると人間に懐くことができるのです。猫が家畜化されたのは農作物を作って暮らすようになった人間との関係が濃厚になったことによると推測されるのですが、リビアヤマネコは人間の前に姿を現したり、人間が近くにいることに他の野生の猫よりも警戒心が薄かったのでしょう。
リビアヤマネコはイエネコの祖先

Photo by yoospicsさん Thanks!
リビアヤマネコはどうして人間と一緒に暮らすようになったのでしょうか。
リビアヤマネコが人と暮らすようになった理由
リビアヤマネコと人との距離が近くなった理由は、人間の農耕が盛んになったことと関係しています。リビアヤマネコの生息地域だった北アフリカや中東地帯は肥沃な穀倉地帯であったので、穀物の生産が盛んになりました。それにともなって穀物を荒すネズミなどの小動物も集まってきてしまいますが、それを捕食してくれたのがリビアヤマネコでした。そのため人々はリビアヤマネコを大切にするようになり、そこから人間との共生が始まったと推測されています。ネコ科の動物はライオンなど一部を除いて群れで生活するのではなく単体で暮らしますね。そのため犬と異なり、人間と主従関係を作ることが難しく、犬のように命じたことをやらせることは困難でした。人間との距離が近くなったのは、「邪魔をしないからネズミを捕ってね」という利害の一致によるものだったので、猫は野生的で気ままな性質を保ったまま人間と一緒に暮らすようになりました。人間と密接な関係を築いている点では犬と同じですが、猫自身の習性と人間との関わり方の違いから、犬とは全く異なった性質の伴侶動物(コンパニオンアニマル)となったのです。
古代エジプトで愛玩動物となる
害獣を捕食するという以外にも猫のかわいさから愛玩動物として飼うようになったのが、古代エジプトです。リビアヤマネコから派生したイエネコは、約4000年前の古代エジプト時代にイエネコという猫種として固定化されたとされています。エジプトの壁画に猫の絵が描かれており、ミイラも発見されています。エジプトでは猫は神の使いとして大事にされ、バステトという猫の女神もいますね。古代エジプトの人々も猫のかわいさにメロメロになり、ネズミを捕るという役割だけでなく、家族として猫を飼うようになったのでしょう。人間にかわいがられ守られることによって、野生の猫としてもどう猛さが減少し、人間とともに生きるイエネコとなったのです。ヤマネコ、イエネコ、野良猫の違い
イエネコであるキジトラとそっくりなリビアヤマネコ。外見はよく似ていますが、リビアヤマネコは自然界の中で生きる野生の猫種です。イエネコは体系的にはヤマネコの亜種ですが、ヤマネコ、イエネコ、野良猫は何が違うのでしょうか。ヤマネコ
リビアヤマネコをはじめとするwild cat(ヤマネコ)は、森や山などの自然界に住み、基本的に狩りをして生活をする猫のことです。イエネコ

イエネコ
イエネコはヤマネコの亜種であり体系的にはヤマネコの一種といえますが、ヤマネコとは全く異なる点が、人間と一緒に暮らすということです。イエネコは人間と一緒に暮らすのが当たり前の動物なのです。猫は捨てられても自分の力で生きていけるという勝手な解釈をしている人がいますが、完全な間違いです。
野良猫

野良猫
野良猫のことを野生の猫と勘違いしている人がいますが、野良猫は分類的にはイエネコです。つまり、人間と一緒に暮らすのが当たり前の動物。だから野良猫であっても人間の生活圏で暮らしているのです。野良猫に対して「野生なんだから自分の力で生きていけ」などという発言も、完全に間違っていますね。野良猫とは飼い主がいない猫のことで、決してそれが普通なのではありません。野良猫もイエネコであり、イエネコは人間と一緒に暮らすのが当たり前なのですが、人間に捨てられたことで本来の生活を奪われた動物であると言えるでしょう。
リビアヤマネコを展示している動物園はある?
残念ながら日本にリビアヤマネコを展示している動物園はありません。世界ではドバイのドバイ動物園やカナダのオークローン・ファーム動物園などで展示されているようです。なお、南アフリカのピラネスバーグ国立公園やボツワナのクガラガディー・トランスフロンティア公園など、生息地まで行き、運が良ければ野生のリビアヤマネコを見ることができます。
愛猫の祖先であるリビアヤマネコを幸せに

Photo by yoospicsさん Thanks!
リビアヤマネコが愛猫の祖先だと思うとがぜん興味がわいてきますね。数千年以上ももほぼ変わらない姿で生き続けてくれていることも感慨深いものがあります。日本にも数は少ないですがツシマヤマネコやイリオモテヤマネコなどヤマネコが生息しています。その子たちが絶滅することなく、生活の場所を奪われことなく、人間と共生できる世界であってほしいと思います。