ペットの往診ってどんなサービス?費用・メリット・デメリットなどを往診専門獣医師が解説
愛犬・愛猫を獣医師に診てもらいたいのに、何かしらの理由で動物病院に連れて行けない場合には、症状を悪化させることにもなりかねません。そういった場合、ひとつの選択肢として「往診」があります。今回は「往診でできること・できないこと」「よくある質問」などを、ホームズ動物往診所院長で往診専門動物病院獣医師の原野が解説します。
ペットの往診のメリット・デメリット
ペットの往診のメリット
- 動物の住み慣れた環境で検査治療を受けられる
- 移動時間や待ち時間がない
- 普段の様子も診てもらえる
19歳のシニア犬と暮らしているので「待ち・移動時間がない」がないことは大きなメリットに感じました。
そのほか家という環境のおかげか獣医師さんとの心の距離が近く感じ、必要な質問や相談をたくさんできたのも往診を利用して良かったポイントです。
ペットの往診のデメリット
- 精密検査や、レントゲン検査、外科手術ができない
- 往診料が生じる
ペットの往診の利用事情
犬猫の往診では、シニアの子や障害のある子に限らず、より広範囲で多様なニーズに対応しています。
実際に往診を依頼する方には、以下のような事情があります。
飼い主の事情
- 仕事で動物病院に行く時間がない
- 育児のために家を空けられない
- 飼い主自身の体調が悪く、家を出られない
- 車などの移動手段がなく動物病院に行くのが困難
- 大型犬や多頭飼いのため、動物病院に連れて行くのが大変
- 動物病院への移動時間や、待ち時間が苦痛
- 個人や動物のプライバシーを尊重し、動物病院に行くのに抵抗を感じる
愛犬・愛猫の事情
- 動物病院に行くと毎回ストレスで体調を崩す
- 動物の生活環境も含めて診てほしい
- 大型犬のため、動物病院内で診察を待つのが大変
- できるだけ住み慣れた環境で療養させてあげたい
- 移動や環境変化による負担やストレスが心配
その他の事情
- かかりつけの病院が休診
- 高齢犬、高齢猫の介護で何をやっていいか分からないから相談したい
- 愛犬・愛猫が亡くなった後のケア方法や、動物霊園に関する相談をしたい
実例
過去に悪性腫瘍を患った13歳のラブラドールで、動物病院にて一通り入院治療も尽くしたものの完治は難しく、ご自宅で一緒に過ごすことを選択した家庭から往診依頼がありました。何度か往診に伺い、病気から生じる吐き気や痛みに対する治療や、床ずれのケアなどをしつつ、家族にしてほしいケアやご飯の与え方などをお伝えしました。
残念ながら亡くなってしまいましたが、ご家族が望まれた形で最後の時間を共に自宅で過ごし、家族みんなに看取られて安らかな最期を迎えました。
19歳の愛犬の背中に大きなできものを見つけたことがきっかけです。
腫瘍なら早めに受診したいものの、ただのできものだったら移動負荷で体調崩すのも怖いことから「往診」を選択しました。
結果、腫瘍ではなかったので愛犬に余計な負担をかけずに済みました。
ペットの往診でできること・できないこと
ペットの往診でできること
- 一般的な内科診察(視診、触診、聴診など)
- 体重測定
- 体温測定
- 尿検査
- 糞便検査
- 血液検査
- 超音波検査機器を用いた簡易検査
- 怪我の手当て
- 健康診断
- ワクチン
- 急性期疾患・慢性期疾患の治療
- 終末期医療
- 点滴・注射
- 薬の処方
※動物の性格によっては一部できないものもあります。
ペットの往診でできないこと
- 強く暴れてしまう犬猫の血液検査
- レントゲン検査
- 超音波機器による精密検査
- 麻酔
- 外科手術
動物病院によって「できること」と「できないこと」は異なります。往診を依頼する際には、必ずどんなことを希望しているか伝えて相談するようにしましょう。
実例
とにかく動物病院や他人が苦手で、動物病院だと麻酔でもしない限り何もさせてくれないという猫の往診依頼を受けたこともあります。ストレスを受けやすい子は、無理に抑えたりせず、注射が難しそうであれば飲み薬で対応するなどしています。
犬猫の性格によって「動物病院に連れていけない」「連れていっても何もできない」と諦めていた飼い主からの依頼も多くあります。
そういうときは往診を検討してみてください。往診医はなるべくできることを見い出し、提案するように心掛けています。
ペットの往診にかかる費用
診察費や治療費とは別途往診料が生じます。
往診料に関しては各々拠点からの距離に応じて設定している病院が多いかと思います。
有料道路やタイムパーキングを利用する際には、その費用も請求対象になります。
40分ほどで体重計測・触診・診断・処置まで完了。トータル8,800円(保険なし)でしたが、割高には感じません。
ペットの往診でよくある質問
一般的な動物病院は往診可能?
一般的な動物病院では来院された患者さんへの対応が主体となるので、往診は不可なところが多いかと思います。ただ、なかには特定の時間に限定して、往診している動物病院もあります。
看護師さんはいる?
往診専門では獣医師1人のことが多いです。検査や治療内容によっては、飼い主さんに犬猫を支えるといった協力を要請します。
当日予約や夜間診療は可能?
予約状況によっては当日や夜間診療も可能ですので、問い合わせしてみましょう。入院・手術が必要になった場合は?
必要に応じて近くの動物病院を紹介します。薬はその場でもらえる?
注射薬、点滴液、内服薬、外用薬など、一般的な薬は往診車に常備しています。どんな準備が必要?
特に準備は必要ありませんが、検査によっては畳半畳から一畳ほどのスペースと電源が必要になります。机や椅子なども用意する必要はありません。
家以外の場所で診ることは可能?
獣医療を行うため、どんな場所でも大丈夫というわけではありません。往診医との相談が必要です。掃除やおもてなしは必要?
掃除などはあえてしていただく必要はなく、おもてなしも必要ありません。まとめ
往診は移動や待ち時間がなく、診療を受けることができます
往診を依頼する際は、別途往診料が発生します
動物病院によってできることとできないことは異なります
往診を依頼する際は、どんなことを希望しているか伝えるようにしましょう
動物病院と往診、ぞれぞれに良いところがありますので「動物病院のかかりつけ」と「往診獣医のかかりつけ」を確保しておき、必要に応じた使い分けをすることをおすすめします。