犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)|原因・症状・かかりやすい犬種・治療法などを獣医師が解説

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アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎皮質から分泌されるホルモンの血中濃度の低下により引き起こされる病気です。臨床症状が非常に多様なので、鑑別診断の対象となる病気が多数存在します。放置すれば致死的な経過をたどる場合もありますが、適切な治療を施すことによって完治が見込め、寿命に影響することなく健康時と変わらぬ生活に戻れます。今回は犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)について、症状や検査・治療法などについて野坂獣医科院長の野坂が解説します。

犬のアジソン病で重要な副腎とは

ボストンテリア

副腎は、左右の腎臓のすぐ近くに1つずつ存在する内分泌組織です。動物の副腎は人間のように腎臓に付着してはおらず、独立して存在します。副腎は「皮質」と「髄質」の2層構造をもっています。

そして、副腎皮質からはグルココルチコイド(コルチゾール)とミネラルコルチコイド(アルドステロン)という2つのホルモンが分泌されています。

グルココルチコイドは体をストレスから守ったり、食欲を増加させたりします。また、ミネラルコルチコイドは体の中の電解質(ナトリウムやカリウム)のバランスを整える役割があります。

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)とは

アジソン病は副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドとミネラルコルチコイドといったステロイドホルモンが不足することによって起きる疾患で、別名「副腎皮質機能低下症」ともいわれます。猫では非常にまれですが、犬でしばしばみられます。

これらのホルモンの分泌不全が起こるとさまざまな症状が出てきます。そして、致死的な症状を呈することもあります。余談ですが、これに対してクッシング症候群は副腎からホルモンが出すぎることが原因となります。

アジソン病にかかりやすい犬種・年齢

ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア

アジソン病はほとんどすべての年齢で発症報告がありますが、比較的若齢〜中高齢(2カ月齢から12歳齢)での発症が多く、オスよりメスで多く発症します。

アジソン病の好発品種

以下の犬種がアジソン病にかかりやすいと考えられています。

  • チワワ
  • ゴールデン・レトリバー
  • ヨークシャー・テリア
  • ロッドワイラー
  • ポメラニアン
  • スタンダード・プードル
  • ベアデット・コリー
  • グレート・デーン
  • ポーチュギース ウォータードッグ
  • ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア

犬のアジソン病の症状

ボストンテリア

臨床症状は以下の通りです。「消化器症状」や「泌尿器系疾患」と判断されてしまうこともあります。症状の重さはストレスの程度や副腎皮質の予備能力などによってさまざまです。

  • 元気消失
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲低下
  • 無気力
  • 虚弱
  • 体重減少
  • 多飲多尿
  • 震え
  • 腹痛

その他に、診察台上の身体検査で、以下のような所見が得られることもあります。

  • 沈鬱
  • 衰弱
  • 脱水
  • 著明な徐脈
  • 腹部疼痛
  • 低体温

アジソン病は、臨床症状に増悪と寛解の波があり、ストレス下で時折症状を起こす傾向があります。したがって、アジソン病に罹患している犬がストレスのかかる環境に曝された場合、臨床症状が突然発症する可能性があります。

たとえば、ホテルやトリミング、旅行などのイベント後に症状が発現することもあります。

犬のアジソン病の検査

ヨーキー

この病気の特徴的な症状はあまりありません。臨床症状が、ほかのいろいろな病気でも認められる症状と重なるからです。 そのため、診断が難しい場合がありますが、ホルモン検査の発達で診断が容易になりました。

主な検査は大きく「血液検査」「血液化学検査(血糖値や電解質の測定)」「副腎が機能しているかどうかの検査」の3つになります。

血液検査

血液検査(CBC)では、白血球数に変化がみられることもありますが、アジソン病に特異的な変化はほとんどみられません。

血液化学検査(血糖値や電解質の測定)

血液化学検査では電解質測定が最も重要で、この症例の約80%ではナトリウム(Na)とカリウム(K)の両方の異常値が観察されます。また、症例の10%ではナトリウム(Na)とカリウム(K)のいずれかに異常値がみられます。症例の残り10%では電解質異常は認められません。

さらに、高窒素血症や低血糖、低クロール血症、高カルシウム血症も認められることがあります。

副腎が機能しているかどうかの検査

アジソン病が疑わしくなれば、ACTH刺激試験を行います。ACTH刺激試験とは、副腎皮質刺激ホルモンをわざと注射し、注射前後の血液中のコルチゾールの量の変化により、副腎が機能しているかどうかの診断をします。

アジソン病の診断をするためには、血液検査で副腎から出るホルモン(コルチゾール)を測り、分泌能力の低下を確認します。例外がみられることもあります。

その他の検査

高カリウム血症により心臓の病変がみられる可能性もあるため、心電図を測定します。さらに、レントゲン検査、超音波検査も行います。

犬のアジソン病の治療

ボストンテリア

犬のアジソン病を治療するには、足りなくなったホルモンを飲み薬として補います。体調がとくに悪い場合は点滴をします。

重度の低ナトリウム血症や高カリウム血症により循環血液量の減少、腎前性高窒素血症、不整脈が起こると「アジソンクリーゼ」と呼ばれる重度のショック状態になります。この場合には、すぐに積極的な治療が必要となります。

犬のアジソン病は症状はさまざまです

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)は、臨床症状が非常に多様なので、鑑別診断の対象となる病気が多数存在します。そして、放置すれば、致死的な経過をたどる場合もある恐ろしい病気です。しかし、アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、治療によって比較的いつもどおりの生活を送ることができるようになる病気といわれています。

普段から愛犬の様子をよく観察することで、早期発見・早期治療につながります。この病気だけでなく、少しでも愛犬の変化や異常に気がついたら、速やかに動物病院へ連絡し、獣医師と診察方法や治療方法について相談しましょう。

参考文献

  • Richardら,Kirk & Bistner's Handbook of Veterinary Procedures and Emergency Treatment
  • Richardら, Small Animal Internal Medicine 4th Edition 2008