猫のスタッドテイル|症状・原因・治療法・予防法などを獣医師が解説
スタッドテイル(尾腺炎、尾腺過形成)という病気をご存じでしょうか? 猫のしっぽの付け根が腫れていたり、脱毛を起こしていたり、悪臭がしたりする病気です。猫のしっぽの背側には分泌腺が多く集まっています。その分泌腺が活発になりすぎると、分泌物がたまり、その部分が肥大したり、被毛がベトベト、ボコボコしたり、脱毛したりします。今回は猫のスタッドテイルの症状や原因、治療法などを野坂獣医科院長の野坂が解説します。
目次
- 猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)とは
- スタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)になりやすい猫種や年齢
- 猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の症状
- 猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の原因
- 猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の治療法
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病名 | スタッドテイル(別名:尾腺炎、尾腺過形成) |
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症状 | しっぽの背側面の皮膚と被毛に「臭い」「黄ばみ・黒ずみなどの変色」「粘稠性」がみられ、炎症を起こしたり、悪臭がしたり、脱毛が起こることがあります。 |
原因 | 何らかのきっかけにより尾腺の分泌が活発になることが原因 |
危険度 | 低。命を脅かすものではありませんが、猫の生活の質を著しく低下させる可能性があります |
猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)とは
猫のスタッドテイルは、「尾腺炎」や「尾腺過形成(Tail gland hyperplasia)」とも呼ばれます。
猫のしっぽの背側面には皮脂腺とアポクリン腺に富む尾上器官(尾腺)があります。しっぽの付け根より少し遠い場所の尾腺の分泌が活発になることが原因です。
スタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)になりやすい猫種や年齢
スタッドテイル(Stud tail)とは、「種付けの雄馬のしっぽ」という意味で、長毛種の未去勢猫の特有の病気といわれていることもあります。しかし、去勢手術や避妊手術の有無に関係なくこの病気は発症します。また、品種や年齢も関係なく発症します。さらに、猫だけでなく、犬にも同様に起こります。
猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の症状
尾の背側面の皮膚と被毛に「臭い」「黄ばみ・黒ずみなどの変色」「粘稠性」がみられることがあります。
進行すると、ワックス状の黒色の分泌物や、尻尾の付け根に膨らみが表れます。そして、病変部を舐めることで脱毛したり、炎症を起こしたり、二次的に細菌感染が生じることもあります。
猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の原因
しっぽの付け根より少し遠い場所の腺の分泌が活発になることが原因ですが、なぜ活発になるのかわかっていません。
原因が解明されていなく、根治するための治療法が見つかっていないので、再発することもあります。
猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の治療法
症状が無い場合は、特に治療の必要はありませんが、患部が重篤である場合は、抗生物質を使用することもあります。
また、バリカンやはさみなどで患部の毛を剃り、シャンプーやクレンジングオイルなどで洗浄した後、消毒を行い、患部を衛生的にするこもあります。
猫のスタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の予防法
狭い場所に閉じ込めないで、自由に行動させることで自然なグルーミングを促すことができます。猫が自分でグルーミングできない場合は、ブラッシングや消毒などを行い、清潔に保ちましょう。猫のスタッドテイルは清潔に保つことが大切
猫の尾腺は、猫のしっぽの付け根部分にあります。そこには分泌腺が多く集まっており、分泌が活発になりすぎると分泌物がたまります。その後、炎症を起こしたり、悪臭がしたり、脱毛が起こることがあります。
原因が解明されていないこともあり、根治術というものがありません。そのため、再発することもあります。尻尾は猫にとって大切な部分です。
病気やケガがないか、普段からチェックしていきましょう。スタッドテイル(尾腺炎・尾腺過形成)の疑いがあれば、動物病院で診察を受けましょう。
参考文献
- Sue, Manual of Skin Diseases of the Dog and Cat, 2009,Wiley-Blackwell; 2nd EDITION