犬のアナプラズマ症|日本初の感染報告、マダニ予防のスポット剤が効かない場合も

犬のアナプラズマ症|日本初の感染報告、マダニ予防のスポット剤が効かない場合も

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日本で初めて犬におけるアナプラズマ症が確認されたとして、2月20日発行の「日本獣医師会雑誌」第69巻に症例報告が掲載されています。アナプラズマ症はマダニが媒介する細菌(アナプラズマ・ファゴサイトフィルム)によって引き起こされる感染症で、感染すると主に発熱や血小板の減少といった症状が見られます。これまで人を含む動物の感染が世界各地で報告されていましたが、日本において海外渡航歴の無い犬の感染報告は初となります。

犬のアナプラズマ症の感染発覚の経緯

「日本獣医師会雑誌」」によると、症例となった犬は当時3歳のシーズーで、公園で散歩した後にマダニが顔に付いていたのを飼い主が見つけ取り除いたものの、数日後から震えや食欲の低下といった症状が見られたことから動物病院での診察を受け、感染が発覚しました。発熱や食欲低下は薬の経口投与によって数日で改善しましたが、血小板が正常値に戻るまでは1カ月ほど掛かりました。その後の検査で症状の再発は見られていません。

感染予防として媒介となるマダニの予防がありますが、感染したシーズーはスポット剤(フィプロニル)によるマダニ予防を月1回実施していました。フィプロニルは咬まれてから24時間以内にマダニを死滅するとされていますが、アナプラズマ症は吸血後数時間で感染するという報告もあり、今回の症例ではフィプロニルの効果が表れる前に感染した可能性があると考えられています。

また感染したシーズーはアトピー性皮膚炎の病歴があり、通常より多い回数のシャンプーによるシャンプー療法を行っていました。これが薬の効果を弱くし、効果の持続期間を短くした影響もあるのではないかと考えられています。感染したシーズーはその後、フィプロニルの塗布を月2回にし、マダニ予防を強化しているそうです。


犬のアナプラズマ症はこれからの診療体制づくり

今回の感染報告は日本の犬として初となりましたが、アナプラズマ症の認知度は低く、これまで感染が見逃されていた可能性もあります。マダニを媒介とした感染症は近年注目されており、2013年には人の感染として日本で初となる重症熱性血小板減少症候群が報告され、現在までに50人近くの死亡例も出ています。ペットだけでなく飼い主も含め、マダニの防除対策や感染後の早期発見につながる診療体制づくりが必要となっています。