猫の歴史|江戸時代にも猫ブームがあった!? ヨーロッパや日本のエピソードを紹介

猫の歴史|江戸時代にも猫ブームがあった!? ヨーロッパや日本のエピソードを紹介

日本では「猫ブーム」と言われるようになってから数年がたち、飼育されているペットの数では犬を抜いて猫が1位となりました。ペットの中でも最も身近な動物である猫ですが、皆さんは猫の歴史をご存じでしょうか? 実は「猫ブーム」は今回が初めてではなく、なんと江戸時代にも「猫ブーム」があったのです。現在ペットとして飼われているイエネコの祖先は、野生の猫でした。なぜ野生の猫が人間と一緒に暮らすようになったのか。どうやって世界中に広まったのか。日本にはどのようにしてやってきたのか。今回は猫の歴史を解説します。

猫の祖先はリビアヤマネコ

リビアヤマネコ
Photo by ryostrichさん Thanks!

現在ペットとして飼われているイエネコの祖先は、野生種のリビアヤマネコという猫です。リビアヤマネコは現在でも中東からエジプトにかけての砂漠地帯に住んでいる野生の猫で、その見かけは毛の色も体の大きさもイエネコのキジトラ猫にそっくりです。

そのため以前から猫の祖先はリビアヤマネコなのではないかと考えられており、近年のDNA解析によってイエネコの祖先はリビアヤマネコであることが確認されています。


人間と猫が一緒に暮らすようになったのはいつ?

シャム猫

野生種の猫であったリビアヤマネコがいつ人間と一緒に暮らすようになったかについては、正確にはまだよく分かっていません。猫が人間と暮らしていたことが分かるものが残っているのは、およそ9500年前にさかのぼります。キプロス島の遺跡から人間と一緒に埋葬されたと考えられる猫の骨が見つかったのです。

キプロス島は島ですから当然海を渡らなければ行くことができません。猫は泳ぐことも可能なので、泳いで島に渡ったという可能性もなくはないですが、もともと砂漠に生きていた猫は水が苦手であり、そのような無謀な行為をしたということはあまり考えられないことです。そのためキプロス島へは人間が連れて行ったと考えられています。キプロス島に連れて行かれた猫が一緒に埋葬されるほど、ペットとしても可愛がられていたのではないでしょうか。

最古の記録で9500年前にさかのぼるということは、実際にはそれより前の時代から猫は人間と一緒に暮らすようになったと考えられますね。


リビアヤマネコが人間と暮らすようになった理由

キジトラ猫

リビアヤマネコとイエネコのDNAを比較してみると実はあまり差がないことが分かっています。リビアヤマネコとイエネコの大きな差はイエネコにはさまざまな毛色があるということと、リビアヤマネコが完全に単体で暮らす動物であるのに対して、イエネコは人間とともに暮らすのができ、人や他の猫、他のペットの存在を認めて共に暮らすことができるという点です。

野生から家畜化され、ペットとなった動物としては他に犬がいますが、犬は群れで生きる動物であるため、人間をリーダー(信頼できる存在)として認め、リーダーの決めたことに従うという特性から使役動物として重宝されるようになりました。そして、用途によって特性を強化される改良が早くから重ねられてきました。

それに対して猫は、近年になって姿かたちを人間の好みに合うように改良された例はありますが、犬のようにコーギーなど牧畜のための犬、ハウンドポインターなど狩猟のための犬というように、その仕事内容によって大きく変えられるということはなく、ずっと祖先からのDNAを持ち続けています。

猫と人間の距離が近づいたのは、人間が穀物の栽培を始めたためです。リビアヤマネコが生息している地域はかつてメソポタミア文明が栄えた場所です。メソポタミア文明ではチグリス川、ユーフラテス川がもたらす肥沃な土地を生かして、世界で初めて穀物の栽培が行われたとされています。穀物の栽培が盛んになると穀物を狙ってネズミなどの齧歯類が増え、それらの害獣を狩ってくれる猫が重宝されるようになったのです。

しかし猫はもともと単体で暮らす動物であり、人に懐いたとしても犬ほど人の指示に従うということはない動物です。そのため、「猫は穀物倉庫に集まるネズミを狩る」「人間はネズミを狩ってくれる猫の存在を認め、邪魔をしない」という共存関係からスタートしたと考えられています。

人間が猫に求めたものはネズミを駆除してくれるという1点であったために、もともとリビアヤマネコが持っていた能力だけで充分役に立ってくれました。そのため犬のような改良加える必要がなく、ほとんど姿を変えることなく人間と一緒に暮らすイエネコとなったと考えられています。



古代エジプトでペットになった

キジトラ猫

猫が人間と暮らしていた痕跡が残っているのは9500年前ですが、確実にペットとして可愛がられていたのはおよそ4000年前の古代エジプトからとされています。古代エジプトではネズミを獲ってくれる猫をとても大切にして神聖視していました。猫のミイラや壁画も見つかっていますし、「バステト」という猫の女神も崇められていました。

バステト神 bastet 猫型の女神 立像【エジプシャン・置物・フィギュア・古代エジプト】

それまではネズミを捕まえてくれる使役動物だった猫ですが、エジプトで家族として愛玩する対象となり、ペットとなったと考えられています。エジプトでペットになった頃の猫はリビアヤマネコにそっくりな外見のキジトラ猫です。古代エジプトにはキジトラ猫しかいなかったとされています。

そのためイエネコの基本はキジトラ猫といえるのですが、その後に茶トラや白黒の猫といったさまざまな毛色の猫が生まれたと考えられています。さまざまな毛色が生まれた背景は突然変異であるとされています。

野生種であった頃はキジトラの柄以外は砂漠では目立つために生きにくい毛色であったために淘汰されてしまっていたのが、人間と一緒に暮らすようになったことにより、そのような猫たちの生存率も上がり、さまざまな被毛の猫が生まれるようになったと考えられています。


交易によって世界に広まった猫

古代エジプトでペットとなった猫が世界中に広まりました。猫をローマ帝国(ヨーロッパ)に持ち込んだのはエジプトと交易をしていたギリシア人やフェニキア人とされています。ヨーロッパでも生息するようになった猫ですが、その後、ローマ帝国の拡大や交易の広がり、キリスト教の布教などによりアジアなど世界中に猫が広まっていったと考えられています。

中世ヨーロッパで起きた猫の受難の歴史

黒猫

エジプトでは神聖視され大切にされていた猫ですが、ヨーロッパでは猫を崇拝するということはありませんでした。ネズミを獲ってくれる動物として重宝していたものの、中世になると猫は迫害され、虐殺されるようになります。中世で巻き起った暗黒の歴史「魔女狩り」の際には、魔女の手先と考えられた猫たちが迫害され、殺されたのです。悲しいことにこの迫害の歴史の影響は現在も残っていて、特に黒猫のことを忌み嫌う風習がある国が、まだヨーロッパにはあります。


日本の猫の歴史

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日本にはいつから猫がいるのでしょうか。

中国から渡来

日本に猫がいつからいるのかは、実のところはっきりとはしていません。一般的に有力な説としては、奈良時代に中国から渡来したと考えられています。仏教の経典をネズミから守るために連れてこられたという説や、当時は猫が珍しかったために贈り物として連れてこられたという説があります。

弥生時代から存在していた可能性

近年になって弥生時代の遺跡から猫の骨が出土したというニュースが報じられました。弥生人たちは大陸から渡来した人々であると考えられているので、その人々と一緒に猫もやってきた可能性があります。

猫という言葉が初めて登場するのは、705年の「日本現報善悪霊異記」です。この中で「狸」に「禰古(ねこ)」という注釈が付けられているのが、初めて「ねこ」という言葉が確認されたものとされています。705年は飛鳥時代です。弥生時代は300年頃に終焉を迎えますので、猫の記述がされた飛鳥時代まで 400年もの時間があるため、弥生時代に渡ってきた猫が日本の猫として生きていたのか、それとも飛鳥時代の交易によって日本に猫がやってきたのかは定かではありません。

江戸時代の猫ブーム

西洋では中世に受難の時代を迎えた猫ですが、日本ではネズミをとってくれる大事な動物、または珍しい愛玩動物として大切にされていました。室町時代までは猫の存在が貴重であったために、ネズミを獲らせるというよりも愛玩動物として大切につないで飼っていることが多かったようです。

江戸時代になるとネズミを退治するためのお守りとして、より一層猫が重宝されるようになります。招き猫が生まれたのは江戸時代ですし、浮世絵にもたくさん描かれるなど、猫は縁起の良い生き物とされていました。

江戸時代になると猫の数も増え、江戸が都市化したことにより猫が生きやすい環境となるなど、庶民が猫を飼うのが当たり前になりました。都市化が進んだ江戸の町はネズミも増え、それを駆除してくれる猫は大事にされたのです。また市井(しせい)の人々の生活が豊かになり、猫を飼ったり浮世絵を楽しんだりする、生活を楽しむ傾向も出てきたために、江戸の庶民は猫をかわいがるようになったと考えられます。

現代の日本の猫は幸せ?

猫はどのようにして人間と暮らし始めて、どのような歴史をたどって広くペットとして飼われるようになったのかを見てきましたが、歴史的に見て現代の猫は幸せに暮らしているといえるでしょうか。

中世ヨーロッパで猫を虐殺していた歴史をかえりみれば、現代ではそのようなことはなくなったので、そのときよりは幸せといえるかもしれません。しかし世界的に見ても、日本の現状を見ても猫の殺処分数はかなりの数にのぼります。

日本でもかつては貴重な動物として大事にされていた猫ですが、猫の数が増えて庶民にも飼われるようになると江戸時代には野良猫の数も爆発的に増えました。それが現代にも続いており、現代では殺処分により野良猫の数を抑制するという方法がとられています。このことを考えると、現代は猫にとって幸せな時代であるとは言い難いでしょう。


猫の幸せな時代が来るように

子猫

殺処分される猫の多くは幼い子猫たちです。これは避妊・去勢の処置をすればその子たちの命を奪うことがなく、また野良猫を増やすことを防ぐこともできるということを示しています。殺処分をして野良猫の数を統制しなければ人間の生活が守れないということであれば、本来であれば長く一緒に暮らしてきた猫たちの命を奪うという方法によらず、管理できるようにするべきでしょう。

猫と人間の関係は共生から始まりました。人間が野生動物であったリビアヤマネコを飼い馴らしたことによりイエネコとなりました。人間はこの先もお互いが幸せになれる共生関係を築いていく努力をすべきですし、共に生きてきた猫の命を奪うべきではないと筆者は考えます。

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