【岩合光昭監督】映画『ねことじいちゃん』インタビュー 猫と人が共に豊かに生きるために
動物写真家の岩合光昭さん初監督の映画『ねことじいちゃん』が2月22日(金)から全国公開されるのに先駆け、ペトことでは岩合光昭監督にインタビューを実施しました。なんと岩合監督の愛猫も出演しているのだとか。岩合監督にしか撮れない猫の表情なども必見の猫好きにはたまらない作品となっております。初映画監督を務めた岩合監督に映画製作の裏話や、タマ役の猫であるベーコンの素顔、映画の見どころについてお聞きしました。
映画『ねことじいちゃん』について
同作はねこまき(ミューズワーク)さん著書の大人気コミック『ねことじいちゃん』を動物写真家の岩合光昭さんを監督において映画化したもの。2年前に妻に先立たれた70歳の大吉が島で飼い猫のタマと暮らすのんびりとした日常を描いた作品です。大吉役を初映画主演の落語家の立川志の輔さん、もう一人の主役であるタマ役をキジトラ模様のアメリカンショートヘアのベーコンが演じ、柴咲コウさんがヒロインとして出演する話題作。2月22日(金)の猫の日より新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開の予定です。
猫ファーストな岩合監督の映画へのこだわり
――どのシーンにも猫がいることが印象的な作品でした。「全シーンに猫がいること」は岩合監督のこだわりでもあり、本作品の見どころの一つでしょうか?
岩合:そうですね、そのようにしました。 僕が作らせていただいた映画は最初から最後まで猫が出てくる映画にしたいと思ったので、映画を観てくださった方には映画の中での猫探しも楽しんでほしいですね。――全シーン猫が登場するだけあって、多くの猫が登場しましたね。
岩合:はい、総勢35匹の猫を連れて撮影に臨みました。――35匹も! 猫の撮影となると、猫への配慮も必要になるかと思いますが、どういった配慮をされていたのでしょうか?
岩合:ドキュメンタリーの世界ネコ歩きでも同じですが、スタッフ間で常に言い合ってるのは「猫の嫌がることをしない」ということです。例えば、「ここにいて」とやってみるのも3回までといったようなことです。「なぜここにいたがらないのか」っていうことを考えながら、猫の居心地の良いように常にスタッフ全員で意識していました。――撮影時間が長い場合は猫たちに対してどういった工夫をされたのでしょうか?
岩合:1匹の猫を朝から晩まで、ということはできないので、スケジュールを組むときに「このパートでこの猫」「このパートではこの猫」とスケジュール組みをしておきました。シーン毎、カット毎でも同様にして行うことで、1匹の猫が長時間撮影にならないように工夫しました。ただ主役のベーコンだけにはどうしても無理をお願いすることがあったのですが、ベーコンはそれに応じてくれるような猫ですごく助かりました。――そういった点がベーコンの他の猫と違うところでしょうか?
岩合:他の猫を確かめているわけではありませんが、ベーコンは自分がやるべきことを僕らの感覚でいうと本当に頑張ってくれました。嫌がっている感じはまったくなかったです。ベーコンが疲れたときはスタッフやキャスト含めて、「ちょっとベーコンを休ませようか」とか「1時間後にしましょう」とか……。ベーコンが出てきたときに再開するといった撮影現場でした。撮影においても、作品としても猫ファーストな映画です。――「猫ファースト」は役者さん全員の共通認識でしょうか?
岩合:そうですね。著名な役者さんたちにもそれはお願いしていて、猫映画ってことを理解していただいています。全員が猫好きだったので助かりました。ただ、私は普段ドキュメンタリーなどで野生の猫を撮っているので、6時間か7時間待ちは慣れているものの、猫のペースに合わせて撮っていたので私以外のキャストさん、スタッフの方々には待ちが長い大変な撮影だったと思います。タマ役はベーコンしかいない
――ベーコンはどんな猫なんでしょうか?
岩合:ベーコンは物怖じしない・動じない猫です。人懐こさにおいては群を抜いてました。演技力もさることながら、見た目も可愛いですよね。丸っこくてぽっちゃりしているように見えますが、平均体重の普通の猫です。人懐こさ、堂々した姿勢、丸っこい見た目に高い演技力……魅力たっぷりだったので我が家に迎えたいほどでした(笑)。――人懐こさが決め手でベーコンがタマ役に?
岩合:「人懐こさ」というよりは、志の輔さんとの「相性の良さ」が決め手ですね。ただベーコンを見たとき、毛柄がキジトラだったので、それだけが気になりました。テレビなどで、明るい毛色の猫が多く使われるのは、キジトラだと引いて撮ると暗く写ってしまうのであまり目立たないという懸念からです。しかし、ベーコンは入室早々、壁際で見ていたスタッフ全員の足もとを挨拶するように巡ったのです。それにはみんなが驚きました。それだけでもいいと思ったのに、志の輔さんと一緒に歩いてもらった時に2回、志の輔さんを見上げてくれて……志の輔さんとの息のピッタリさもあって、スタッフ全員「主役はベーコンしかいない」と意見が一致し、ベーコンに決めました。実際に100匹以上の猫を見たのですが、スタッフ全員の意見が一致したのはベーコンだけでした。
特に猫に好かれていた役者さんは……
――志の輔さんとベーコンは本当の家族のようでした。
岩合:そうですね。二人は本当にすぐに打ち解けていました。出会って間もないのに志の輔さんの膝にベーコンが行ったんです。心を許している証拠でしょう。志の輔さんの胸の上でベーコンが寝ちゃったり、一発撮りで300mほど二人で並んで歩いたり……本当の家族のような距離感だったと思います。――特に猫に好かれていた役者さんはいらっしゃいましたか?
岩合:柴咲コウさんです。どんなに猫が可愛くても「触らない」「程よい距離を保つ」とスタッフ間で徹底していたのに撮影の合間にベーコンが柴咲さんのところに行くんですよ。志の輔さんは「やっぱりオスだから美人が好きなんだな」って。私も同感です(笑)。――柴咲コウさんが猫に好かれる理由は何だと思いますか?
岩合:猫愛に溢れた人柄でしょうか。常に猫のことを考えてくれていたと思います。10匹以上の撮影のとき、一時的に猫の控室からスタッフが出払ったことがあったのですが、柴咲さんが残った猫のことを思ってトイレ掃除してくれていたんです。出番の前に動物のトイレ掃除なんて普通はやりたくないことだと思いますが、自発的にやってくださっていました。それと、映画のワンシーンで子猫が手水鉢のふちで水を飲んでる最中に、滑り落ちそうになるアクシデントがあったのですが、柴咲さんが瞬時に手を出してアドリブを言ってくださったんです。そのシーンはカットせずに使っているので、柴咲さんの猫への愛情が伝わるかと思います。
映画の見どころ
――ちなみに岩合監督の愛猫が出演しているとのことですが、それは本当でしょうか?
岩合:そうなんです。うちの子はタマの子猫時代を演じました。撮影後、子猫の引き取り手を探していると聞いたので手をあげて、兄弟で来てくれていたので、2匹迎えました。――岩合さんの愛猫も登場する映画ですが、ずばり見どころは何でしょうか?
岩合:島の美しさもさることながら、人と猫が暮らしていくっていうのはどういうことなのか、猫が「人をつなげる力」や「人を結びつける力」というのは、僕たちが考える力以上のことがある、そういったことを感じていただける映画に仕上げています。映画館を出るときは一緒に観た誰かと「楽しかったね」と笑顔で出て行ってほしいと思います。――最後に、ペトこと読者へのメッセージをお願いいたします。
猫が好きな方でも、猫に興味持ってない方も連れて来ていただいて、猫たちに興味を持っていただけたらなと思います。この映画を観たら「猫を好きになっちゃった」と言ってもらえたら嬉しいです。エンドロールが流れ始めたら、だいたいのお客さまは出て行かれると思うんですが、最後にも楽しめるシーンがありますので、ぜひ最後の最後まで観てください。映画『ねことじいちゃん』Information | |
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公開 | 2019年2月22日(金)新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー |
出演 | 立川志の輔、柴咲コウ、柄本佑、銀粉蝶 |
監督 | 岩合光昭 |
配給 | クロックワークス 上映時間:103分 |
公式サイト | 映画『ねことじいちゃん』 |
岩合監督の愛猫も出演する本作。都会での暮らしとはまったく異なる小さな島の猫と人の物語です。「島猫は島で生まれて、島の水を飲んで育って、島で果てていく」そんな島猫の一生と、猫と人が紡ぎ出す豊かで愛しい物語をぜひ劇場で感じてきてください。