猫に多い腎臓・泌尿器の病気って? 謎多き理由は猫のルーツにあった!?【専門獣医が解説】

猫に多い腎臓・泌尿器の病気って? 謎多き理由は猫のルーツにあった!?【専門獣医が解説】

腎・泌尿器科を専門にしている日本獣医生命科学大学 臨床獣医学部門 治療学分野I・講師で獣医師の宮川が猫の病気について解説します。第一回は、猫が腎・泌尿器系の病気にかかりやすい理由について。猫といえば、腎・泌尿器の病気にかかりやすい動物です。何が原因なのか、症状や早期発見はどうすれば良いのかなど、詳しく説明していきます。

猫を飼う上で気を付けたい病気が「慢性腎臓病」。でもその原因は謎!?

猫の腎臓病


猫は「慢性腎臓病」という腎臓の病気になってしまう子が多いです。この病気はどこの国でも猫の死因の1~3位という上位に入ります。特に高齢の猫で多く、米国の研究では10歳を超える猫の約10~30%が慢性腎臓病になっているという報告もあります。

一方、犬では腎臓の病気は猫ほど多くなく、死因別では10位くらいに位置しています。犬でも少ないわけではないですが、猫では突出して多いように思えます。

なぜなのでしょう?

実は、その理由は謎なんです。

これだけ多くの猫が腎臓の病気で苦しんでいるのに、猫で多い理由は誰も解明できていません。理由がわかれば予防ができ、予防ができれば、腎臓の病気で苦しむ猫も少なくなるでしょう。では、なぜ全くわからないのでしょう?

猫の腎臓病の早期発見が難しい理由は「たんぱく質」にあった

人の腎臓病は比較的早く見つけることができます。それは、人の腎臓の病気の多くは「たんぱく尿」という異常を早くから示すためです。

健康診断では尿検査を受けますよね。これは尿の中のたんぱく質の量を測定する意味もあります。健康な状態では尿の中にたんぱく質はほとんど検出されません。でも腎臓の病気になるとたんぱく質が尿中に出てくるようになります(すべての腎臓の病気で出てくるわけではありません。人では出てくるタイプが多いということです)。

犬でも腎臓の病気の半分がこのタイプです。しかし、猫ではたんぱく尿が病気の早期から出てくるタイプの腎臓病が非常に少ないのです。そのため、猫では腎臓の病気は早く見つけることが難しく、血液や尿、超音波検査などの画像検査で異常が出るときや、食欲がない、やせてきた、吐いてしまうといった症状が出たときには、すでに病気が進行してしまい原因がわからなくなっているのです。

では、そもそも猫が腎臓病になってしまう原因は何なのでしょう?

猫が腎臓病になってしまう原因は、泌尿器の病気が関係している?

猫の腎臓の病気の発症原因はさまざまです。いろんな原因が知られていますが、猫で腎臓病が多い理由にはなりません。ちなみに、猫では泌尿器(尿管、膀胱、尿道)の病気も圧倒的に多いです。こういった病気は、下記のような症状を示します。

  • 血尿
  • 頻尿
  • 尿が出ない
  • トイレに行くと鳴きながらおしっこをしている(痛いため)

これらのような症状を示します。私見ですが、私は「このことが猫で腎臓の病気が多い理由なのでは?」と考えています。

ここ数年で大学病院に来院した腎臓病の猫の8割が同時に泌尿器の病気になっていました。特に、腎臓や尿管の結石症、腎臓の細菌感染症です。これらの病気の発生は腎臓の組織を破壊し、それが持続してしまうと慢性腎臓病に進行してしまいます。慢性腎臓病という病気になってしまった猫の多くは過去にこのような泌尿器の病気になっていたことが多いようです。すべての猫でそうだというわけではないですが、泌尿器の病気は腎臓の病気に直結します。

猫に泌尿器の病気が多い原因はルーツにあった!?

実は猫で泌尿器の病気が多い理由も明らかになっていません。単純に考えると、猫は尿が濃いということが一つの理由かもしれません。それは、イエネコが砂漠の動物から家畜化されたことが関係しています。砂漠では水を十分に摂取することが難しいですから、尿を濃くする(少なくする)ことで体から失われる水分の量を少なくしていたのです。

その名残りからか、猫は人と比べてかなり濃い尿をしています。尿が濃いことは、たとえば結石の原因となるミネラルが濃縮して存在するということになり、尿量が少なく膀胱に貯まっている時間も長いことから、その成分(結晶)が集まって結石になることが起きやすいです。

猫で最も多い泌尿器の病気「特発性膀胱炎」は、ストレスに注意

猫で最も多い泌尿器の病気は「特発性膀胱炎」ですが、この発症要因としてストレスが関連していると考えられていますが、他にも「尿が濃い」ということが挙げられています。猫は尿を濃くすることができるという特性を持つために、泌尿器の病気になりやすいと言えるわけです。

イエネコにとって尿が濃いことは悪いことばかりのようですが、必ずしもそうとは言えません。濃い尿は細菌が住みにくい環境を作り出すため、細菌感染による膀胱炎などになりにくいという利点があるのです。年齢が進むと(少なくとも10歳以上)、自然と尿を濃くする力が低下していき、だんだん薄い尿をするようになります。そのため、10歳を超える猫では細菌感染による膀胱炎が増えるようになります。

定期的な尿のチェックが健康管理の秘訣です

つまり尿が濃くても薄くても、泌尿器の病気になってしまうリスクがあるのです。だからこそ、泌尿器の病気を早く見つけ、早期に治療していくことが将来的な腎臓の病気の発症を抑えることにつながります。

泌尿器の病気は早ければ、1歳未満から発症することがありますので、健康に見えても定期的に泌尿器の病気を検査していくことは非常に重要です。若い頃は特発性膀胱炎や結石症という尿が濃いことが発症要因である病気に注意し、高齢になってきたら感染症といった尿が薄いことが要因である病気に注意する必要はあります。

猫砂だとわかりにくいことも多いですが、毎日のおしっこの量、におい、色、回数に注目していると、泌尿器の病気を早く見つけることができると思います。

次回は、猫の膀胱炎について詳しくご説明できればと思います。

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