犬ブルセラ症ってどんな病気? 繁殖を考えている方は特に注意が必要

皆さんは「ブルセラ症」という病気を聞いたことはありますでしょうか。畜産の分野ではよく知られた感染症で、人間にも感染する人獣共通感染症です。一言でブルセラ症といっても細菌によって宿主となる動物が異なり、今回はその中から「ブルセラ・キャニス」という犬に感染する細菌について紹介します。

「ブルセラ症」とは

ブルセラ症は世界中に分布するブルセラ属の細菌に感染して起こる病気です。日本において人の場合は感染症法で4類感染症として、家畜(牛、めん羊、山羊、豚)の場合は家畜伝染病予防法で家畜伝染病として指定されています。それぞれ、診断した医師・獣医師は地方自治体に届け出をする必要があります。
近年の日本では感染報告はほとんど無く、家畜で年に数頭、人の感染も年に数人いるかいないかという状況です。犬の感染は報告が義務付けられていませんが、まれにブリーダーなどの繁殖施設で大量感染した際に報告があるようです。
人に感染して発症した場合は、発熱や頭痛、倦怠感などの風邪に似た症状が数週間続きます。夜間に発熱し、朝には下がることから「波状熱」とも呼ばれます。致死率は低く、人から人への感染もまれです。ただ、一部の国では生物兵器として研究されていたこともあるようです。

「犬ブルセラ症」とは


ここからは「犬ブルセラ症」について、9月25日(日)に開催された「第18回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会」の講義「犬と猫の繁殖の基礎」(講師:日本獣医生命科学大学 堀達也教授)をもとに紹介します。
犬と猫の繁殖の基礎のスライド

メスには流産や不妊のリスク


犬ブルセラ症の感染は東京では少なくなっているものの、地方ではまだ感染例があるそうです。犬の場合の原因菌は「ブルセラ・キャニス」で、感染してもすぐに大きな症状が出ることはありません。
オスの場合は精巣がちょっと腫れたり、前立腺炎になったりといった症状がでることがあるそうですが、メスの場合は妊娠しなければ感染するだけで発症はしません。妊娠すると流産したり、不妊症になってしまいます(このことから、ブルセラ・キャニスは「犬流産菌」と呼ばれることもあるようです)。
そのため不妊手術をせずに繁殖を考えている方は、感染していないか、また感染する危険がないか十分に注意する必要があります。
犬ブルセラ症についての説明

治療法は?


ブルセラ菌は細胞の中に入ってしまうため、治療が非常に困難です。抗生物質で治療しても出て行かないことが多く、減ったと思っても状態が悪くなるとまた増えてしまいます。一度感染すると治療が非常に難しい細菌と言われています。ただ、長期的に治療を続けた結果、妊娠したという報告もあるそうです。

注意すべきこと


交配の際は感染の有無を確認する


ブルセラ・キャニスは細菌ですので、簡単に犬から犬に移ります。ブリーディング場で感染が拡大し、何度妊娠しても流産してしまうことが起こるため、一般の飼い主がブリーダーに交配を依頼した際、ブルセラ菌の感染がないかの検査を求められることがあるそうです。
交配前に審査しておくべきことのスライド

人への感染は流産の際に注意


人への感染は少数例とは言え、可能性がありますので注意しなければいけません。特に流産した犬がいた場合、胎子を素手で触ってはいけません。ブルセラ菌に感染していれば胎盤がぐじゅぐじゅになっているのですぐに分かるそうです。