犬の歯の構造とは?生え変わりの時期や本数などを獣医師が解説
犬の歯は人間とは違う構造のため、虫歯になりづらいですが、歯周病予防のため、デンタルケアは重要です。今回は犬の歯の構造や犬の歯が茶色だったり、黒ずんだりしている場合の考えられる原因、乳歯から永久歯への生え替わりで気を付けるべき点などを日本小動物歯科研究会所属獣医師の椎名が解説します。
人間と犬の歯の違い
人間の歯の特徴
私たち人間は雑食動物であり、肉以外にも穀物なども食べるため、奥歯は平らな形をしています。顎関節も上下に開閉するだけでなく水平方向に動くことで、すり潰すような動きをすることができます。これにより奥歯でしっかりと嚙み砕いてすり潰し、消化しやすくしてから飲み込むことが可能になっています。
犬の歯の特徴
犬は肉食動物として生まれた動物のため、歯の形や顎の動きが人間とは大きく異なります。
犬の歯は全部で永久歯が42本あり、乳歯は28本です。生えている場所によってさまざまな形をしていて、前から「前歯(切歯)」「犬歯」「前臼歯」「後臼歯」に大きく分けられます。
倒した獲物は「裂肉歯」という鋏状に噛み合わさる奥歯で丸呑みできる大きさに噛み切り、人間のように咀嚼はせずにそのまま丸呑みします。
裂肉歯は、その噛み合わさり方が「シザーバイト」とも呼ばれ、上下顎とも奥歯の中で一番大きな歯で、犬歯とともに犬の食事に最も重要な歯の一つになります。
犬の歯の構造と着色について
犬の歯の構造自体は基本的に人と一緒です。正常な歯は白く、表面がツルツルしています。
他の歯と違う色がある場合、表面が茶色(黄色)・黒のときは歯垢・歯石の付着が考えられます。歯自体が赤かったり、黒かったりするときは歯の中心の神経が通っているところの異常の可能性があります。
毎日のデンタルケアと定期的な動物病院での歯科検診で、大切な家族のお口の健康を守ってあげてください。
犬の歯の生え替わりと起こりやすい問題
歯の生え替わりの時期
犬も人間同様に乳歯と永久歯があります。生後2カ月ほどで乳歯が生えそろうと、4カ月〜7カ月ほどで永久歯へ生え替わります。犬の歯の生え替わりは切歯から始まり、奥歯の前の方、犬歯、奥歯の後ろの方という順番で起こります。下顎の歯が先になるのが一般的ですが、生え替わりの時期や順番などは個体差がありますので、順番が違ったからといってすぐに心配する必要はありません。
乳歯遺残のリスク
永久歯への生え替わりの時期に起こりやすい問題として「乳歯遺残(にゅうしいざん)」があります。これは乳歯が抜けないまま、永久歯が生えてきた状態で、特に小型犬に多く見られます。
見た目にも歯並びが悪くなりますし、乳歯と永久歯の間は歯垢や歯石がたまりやすく歯周病の原因にもなります。
目安として、永久歯が乳歯の半分の高さまで伸びているのに乳歯が抜けない場合は、歯に詳しい獣医師に診察してもらうことをおすすめします。
犬は虫歯になりにくい?
犬は虫歯になりにくい動物です。その理由は以下の3つです。
虫歯菌が繁殖しづらい
人の唾液は弱酸性(pH6.5~7.0)であるのに対し、犬や猫の唾液はアルカリ性(pH8.5~9.0)のため、虫歯菌が繁殖しづらい環境です。虫歯菌の栄養があまりない
犬猫は唾液中にアミラーゼという消化酵素をほとんど含まないため、例えばジャガイモなどに含まれるデンプンを糖に分解しません。これにより、虫歯菌の栄養になる糖があまり口の中にとどまらないのです。
虫歯菌が留まりづらい歯の構造
人の歯は、歯と歯が平面で近接した構造をしているため隙間に虫歯菌がとどまりやすくなっています。一方、犬や猫の歯は、はさみ状をしているため、隙間が大きく空いて虫歯菌がとどまりづらい構造になっています。
虫歯になりにくいとはいえ、口腔内トラブルがないわけではありません。犬は2〜3日で歯垢が歯石に変わるといわれています。そのため、人間よりはるかに歯周病になりやすい動物です。
歯磨きで愛犬の歯周病ケアを
歯周病予防のために大切なのは、歯ブラシでの歯磨きです。どうしても歯ブラシが苦手な犬には、指サックタイプのものや歯磨きシートを使った歯磨きでも一定の効果がありますので、諦めずにやってあげてください。
歯磨きの頻度は1日1回以上を心掛けましょう。
奥歯は、犬歯とともに、特に歯垢・歯石が付着しやすいので、最もケアが必要な場所です。
幼犬の時期に飼い主が口を触ることを慣らしておけば、成犬になってからも歯磨きがしやすくなります。
まとめ
犬の歯は4カ月〜7カ月ほどで永久歯に生え替わる
乳歯遺残の可能性がある場合は動物病院へ
犬は虫歯になりにくいが、歯周病になりやすい
毎日の歯磨きがオススメ
犬は人と違って、虫歯になりにくい口内環境ですが、歯周病にはなりやすい動物です。
日頃からデンタルケアを行うことで、予防していきましょう。