犬に噛まれたときの対処法とは? 飼い主の責任や実例などを紹介
犬に噛まれたとき、もしくは愛犬が人を噛んでケガを負わせてしまったときはどうすればいいのでしょうか。治療費や保険、トラブルにならないための予防など、動物が好きだからこそ知っておきたい「もしもの時」の対応について杉浦弁護士の解説を交えて紹介します。
この記事の解説者
杉浦 智彦弁護士
横浜弁護士会所属弁護士。同志社大学法学部を卒業し、京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻(法科大学院)を修了。関西の法律事務所で経験を積んだ後、2015年横浜パートナー法律事務所に入所。注力分野は「債権回収に苦労しない仕組みづくりの提案」と「債権回収業務」。最近では趣味が高じて、ペット関連の法律相談も始めている。
犬に噛まれたら
犬に人が噛まれた時の対応
犬に噛まれた場合、痛みと驚きでとっさに手を引っ込めたり、必死に犬を引きはがそうとしたりするかと思います。しかし、急に引くのはとても危険です。犬の歯は肉を裂くためにしっかりとした犬歯があります。噛まれたからと身を引くではなく、第三者がいる場合は手伝ってもらい、犬の口を開かせることが先決です。
犬が動物を噛んだときの対応
犬や猫などの動物が犬に噛まれた時も冷静な行動が大切です。興奮して周りが見えなくなっている犬の仲裁で飼い主が噛まれ大ケガをすることがあります。噛まれた後の傷口の処置
傷口の程度によりますが、軽く血がにじむ程度であれば、傷口を流水で洗い清潔なタオルで拭き抑えておきましょう。傷口が大きく、流血している場合は止血が最優先です。すぐに病院に行きましょう。
例え軽傷であっても、動物に噛まれた場合は細菌が入って症状が悪化してしまうこともありますので、しっかりと病院で診てもらいましょう。
愛犬が他人、他人のペットを噛んだら
飼い主の責任
犬や猫などの愛護動物に限らず、「動物を占有している人」「占有者に代わって動物を管理する保管者」「占有補助者」にも責任の規定が法律で定められています。動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその保管をしたときは、この限りではない。
「民法」第718条1項
そのため愛犬が他人を噛んでケガを負わせた場合、飼い主はケガをした人に損害賠償を払う必要があります。
その場合の損害には、愛犬が他人の身体に加えた損害だけでなく、物を壊したり、他人の飼育動物を殺傷したりした場合など、他人の「所有物」に加えた損害も含まれます。
杉浦弁護士の解説
治療費だけではなく、慰謝料も支払う必要がある場合もあります。例えば、腕や顔といった見えるようなところに大きな傷跡が残るような場合は、慰謝料だけで軽く100万円を超えることもあります。
保険に入っていれば安心ですが、そうでない人も多いでしょう。
現場の写真を撮影したり、目撃者がいるときは目撃者との会話を録音したりしましょう。必要があれば、目撃者の連絡先を聞いてもいいかもしれません。
この届出で、この事件がどのようにして起こったのかを書いてください。届けを提出したから殺処分になるということはありません。
1. ケガの状態により、損害賠償額は変わる
損害賠償については大きなケガになってしまった場合、その被害者に払うお金も大きくなります。治療費だけではなく、慰謝料も支払う必要がある場合もあります。例えば、腕や顔といった見えるようなところに大きな傷跡が残るような場合は、慰謝料だけで軽く100万円を超えることもあります。
保険に入っていれば安心ですが、そうでない人も多いでしょう。
2. 現場の写真を撮影・目撃者に話を聞いておく
相手に落ち度があれば「過失相殺」といって、その分を賠償金から差し引くことができます。現場の写真を撮影したり、目撃者がいるときは目撃者との会話を録音したりしましょう。必要があれば、目撃者の連絡先を聞いてもいいかもしれません。
3. 保健所に必ず届け出る
多くの自治体では狂犬病などの感染症の関係で、ペット(特に犬)が人をケガさせた場合は、保健所へ届出を行うよう要請している場合があります。この届出で、この事件がどのようにして起こったのかを書いてください。届けを提出したから殺処分になるということはありません。
理不尽だと思える事案も
民法第718条の1項に「ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその保管をしたときは、この限りではない。」と書かれていますが、相当な注意が認められ免責されることは非常にまれで、占有者が注意義務違反ではないことを立証するのは極めて難しいといえます。事例として、以下のことが実際に過去に起こっています。
- 自転車に乗っていた犬嫌いの子供が、犬を見て驚き転倒し大けがを負った。
- 犬を見て驚いた老女が驚いて転んでけがをした。
参照:日本愛玩動物協会(2017)『愛玩動物飼養管理士1級教本』
どちらも飼い主に管理義務違反があるとされています。また、「犬を家の庭で遊ばせていたところ、道路から柵越しに手を入れて犬を触ろうとした子どもに犬が噛みついた」という場合も飼い主に責任が発生します。
参照:『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』第4条第2項「犬の所有者等は、犬をけい留する場合には、けい留されている犬の行動範囲が道路又は通路に接しないように留意する」
初期対応の重要性
自分の愛犬が他人にケガを負わせたら、冷静な行動を心がけましょう。杉浦弁護士の解説
法律の話をすると、愛犬が被害者にケガをさせた場合、周りに助けてくれる人がいないような状況で手当てなどをしないで放置するのは、「保護責任者遺棄罪」という罪が成立することになります。
そのため、被害者のために何かしら手を差し伸べなければなりません。一般的には、手当ができれば手当を、できないようなケガであれば救急車を呼び、救急車に引き渡せばよいといわれています。
愛犬が人や他人のペットを誤って傷つけてしまった場合、重要なことは初期の対応です。そして、今後このような事件が起らないように予防策を考え、噛まれた人のところに菓子折りなどを持参して早めに謝りましょう。
1. 救急車を呼ぶ
まずは被害者のために救急車を呼んでください。ご自身の携帯電話か、近くの人に頼んでも大丈夫です。救急車が来るまでは被害者の応急処置をしてあげてください。2. ペットは周りに託す
その間、ペットは誰か近くの人に預けるか、リードフックなどで留めておくのがよいでしょう。救急車が来たら、被害者を引き渡してください。被害者と一緒に病院に行く必要まではありません。法律の話をすると、愛犬が被害者にケガをさせた場合、周りに助けてくれる人がいないような状況で手当てなどをしないで放置するのは、「保護責任者遺棄罪」という罪が成立することになります。
そのため、被害者のために何かしら手を差し伸べなければなりません。一般的には、手当ができれば手当を、できないようなケガであれば救急車を呼び、救急車に引き渡せばよいといわれています。
愛犬が人や他人のペットを誤って傷つけてしまった場合、重要なことは初期の対応です。そして、今後このような事件が起らないように予防策を考え、噛まれた人のところに菓子折りなどを持参して早めに謝りましょう。
トラブルを防ぐための予防策
注意しなければいけないのは動物種や飼育地域など周りの環境にも大きく影響されます。犬であれば、犬種の気質、個体の性格をしっかり理解して適切なしつけを行うことや、散歩やドッグランなどでのマナーなどしつけや工夫で防げるものがあります。
猫であれば、完全室内飼いにすることで、近隣トラブルや猫自身も病気を予防することができます。
また、最近ではペット保険の中に「賠償責任特約」という保険もありますので、ペット保険と一緒に加入しておくと安心です。
まとめ
犬に噛まれたら、口を開かせることが先決
ケガの程度によっては病院へ
愛犬が他人や他人のペットを噛んだ場合は初期対応が重要
トラブルが起きる前に、犬のしつけや保険加入など対策を
愛すべきペットがトラブルを引き起こさないように、思わぬケガをさせないように守れるのは飼い主さんしかいません。
ペット社会、ペットの家族化が進んでいるとはいっても、まだまだ法律上「モノ」扱いで、社会には動物が苦手な人やアレルギーがある人などさまざまです。ペットが暮らしやすい社会のためにも、飼い主としてのマナーが大切です。
第3稿:2020年5月29日 公開
第2稿:2018年1月12日 公開
初稿:2015年12月24日 公開
第2稿:2018年1月12日 公開
初稿:2015年12月24日 公開