犬の歴史|オオカミから犬へ、ペットから家族へ。進化する犬と人の関係性

犬の歴史|オオカミから犬へ、ペットから家族へ。進化する犬と人の関係性

犬は古くから人間のパートナーとして、共に暮らしてきました。狩猟犬や牧羊犬、最近では盲導犬や警察犬など、犬は人の生活には無くてはならない存在です。現在は家族の一員となった犬が、いつから人と暮らすようになり、どのように関係を変化させてきたのか、その歴史を解説します。

犬の起源はオオカミ?

オオカミの親子

犬の起原は諸説あり、以前はジャッカルやコヨーテから派生したのではないかという説もありました。しかし近年のDNA解析で、オオカミが起源であることが明らかになってきました。

犬の祖先であるオオカミは群れで狩りをする動物です。人が定住生活をする前の遠い昔、オオカミの一部が獲物を追って移動する人の群れの近くにいると、残り物にありつけることに気付きました。

だんだん両者の距離は近くなり、人が定住生活を始めるようになった頃には人の群れの一員として、付かず離れず暮らすようになったのです。オオカミは約30〜40万年前から人との共存を始めていたようです。

オオカミから犬がどのように派生したのかはまだ明らかになっていませんが、北半球に広く分布するタイリクオオカミの亜種が犬であるという説が有力とされています。

なお、犬は学名で「Canis lupus familiaris」(カニス・ルプス・ファミリアーリス)と呼びます。カニスはラテン語で「イヌ」、ルプスは「オオカミ」、ファミリアーリスは「家庭の」を意味します。

オオカミに近い犬種

柴犬

犬にはさまざまな種類が存在しますが、実は柴犬秋田犬などの日本犬は遺伝的にオオカミに近いとされています。

同じように、以下の犬種も遺伝的にオオカミに近いとされています。


犬の歴史

牧畜犬

犬が家畜化され人と暮らすようになったのは約2万〜1万5000年前と考えられていますが、考古学上で確認される最古という意味では1万4000年前となっています。それは日本列島が大陸から離れ、現在の形になるよりも前のことでした。

1万1000年前の遺跡からは人と犬が共に埋葬された墓が発掘されており、早くも犬をただの家畜としてではなく、大切な家族と認識していた人がいたことがうかがえます。ただ、多くは狩猟犬や住居を守る番犬として共に暮らしていました。

その関係性が大きく変わっていくのが農耕・牧畜が始まった約7000年前、新石器時代のことです。人の技術進歩に伴い、犬に求める役割も増えていきました。牧羊犬や軍用犬、そして愛玩犬など、それぞれの役割に特化した交配が行われ、さまざまな犬種が生まれていったのです。


日本における犬の歴史

犬は日本でも、古くから猟犬や番犬としての役割を担う「家畜」として人と共に暮らしていましたが、奈良時代や平安時代の頃になると次第に「ペット」として飼われるようになりました。もっとも、その頃はまだ現代のようなペットとしてだけではなく、騎馬武者が馬を操って犬を弓矢で射止める武術「犬追物」や、犬同士を戦わせる「闘犬」など、人を楽しませるサーカスの動物のような存在としても扱われていました。

江戸時代になると、動物愛護の先駆けとも言われる五代将軍徳川綱吉によって出された「生類憐みの令」(※)が有名です。当時、江戸・浅草には「ちんや」という狆(チン)の繁殖業者(ブリーダー)がおり、大名や豪商に狆を販売していました。動物が大好きだった綱吉は、100匹もの狆を飼っていていたとされます。

それだけでなく、綱吉は現在の中野区役所近くに約30万坪(東京ドーム約20個分)の犬屋敷を造り、そこに約8万匹の犬を飼っていました。現在、中野区役所の前には、当時犬屋敷があったことを伝える石像が残されています。

ちなみに、「ちんや」は明治13年に料理屋に転向し、現在も同じ屋号を使ってすき焼き屋として営業しています。

※実際には「生類憐みの令」という固有の法があったわけではなく、複数の法(御触れ)を総称して「生類憐みの令」と呼ばれています。



犬の生態

吠えるオオカミ

犬はオオカミから派生した動物ですので、オオカミに非常に近縁であり、その生態もよく似ています。しかし人との暮らしを選んだ犬は次第に群れで狩りをする必要が無くなり、人から分け与えられる物を主食にするようになりました。

そのため元々は肉食動物だったのが、人の食べ物を効率良く消化吸収できるように腸が進化して長くなり、肉食寄りの雑食動物へと変わりました。ちなみに、猫も犬と同様に家畜・ペット化された動物の代表的な存在ですが、犬よりもその歴史が短いため、現在も変わらず肉食動物です。

オオカミといえば、崖の上で月に向かって「遠吠え」するイメージを持つ方も多いと思いますが、遠吠えは仲間同士のコミュニケーション手段として使われています。犬でもシベリアンハスキーなど遠吠えをする犬種もいますが、その数は少なく、ほとんどの犬種で代わりに「吠える」という行動が出るようになりました。

一方で、オオカミと同じような行動として残っているものは、「テリトリーを守る本能」「マーキング」「穴を掘る行動」「埋める行動」「犬同士の挨拶」「ボディーランゲージ」などが挙げられます。


犬と人の関係性は「ペットから家族」へ

犬

犬は「家畜からペット」になり、今では「ペットから家族」へと時代とともに人との関わりを変えていった動物です。しかし、根底にある犬と人の関係性は、昔も今も変わっていないのではないでしょうか。

犬は私たち人に喜びと笑い、癒やしを与え、助け合って生きることを教えてくれています。家族の一員として暮らす家庭犬も、人のために働く犬も、パートナーとしての人と犬の関係性に変わりはありません。

ただ、残念ながら世界では人の大切なパートナーの「命の処分」が行われています。犬と人の関係性は、人の身勝手さで命まで奪われる世界となってしまいました。

これからも犬と人の関係性が良いものであり続けるためには、私たちは歴史から学び、行動に移さなければいけません

日本もまだまだ新しい家族を待つ犬がたくさんいます。ペットショップで迎える前に、まずは保護犬を迎えることを考えてみてください。


まとめ

犬と飼い主

私たちの家族の一員として多くの人に愛され、親しまれるようになった犬は、今ではたくさんの品種が存在します。古くから人と共に暮らしてきた犬が、どのような歴史や生態を持っているのか。犬のことをより深く理解することで、愛犬との絆はより深まるでしょう。

参考文献
・大森理絵、長谷川寿一『人と生きるイヌ-イヌの起源から現代人に与える恩恵まで』The Japanese Journal of Animal Psychology(2009)

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