【獣医師執筆】犬の白血病|原因・症状・治療法・余命・予後について解説

【獣医師執筆】犬の白血病|原因・症状・治療法・余命・予後について解説

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白血病は血液のがんとも呼ばれ、犬では少ない病気です。残念ながら治る可能性は低く、急性の場合は特に予後が悪く数日で末期となり最期を迎えることもあります。今回は犬の白血病について、症状やステロイドや抗がん剤を使った治療法、食事の注意点などを獣医師の佐藤が解説します。

犬の白血病とは

トイプードル

犬の白血病は、白血病細胞と呼ばれるがん細胞が血液や骨髄の中で増えて正常な血液が作れなくなり、免疫力が落ちたり臓器が正常に機能しなくなったりする病気です。「血液のがん」とも呼ばれます。がん化した細胞の種類によって急性と慢性、リンパ性と骨髄性に分けられ、多く見られるのは急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病、ALL)です。

分類 種類 病名
急性 リンパ性 急性リンパ芽球性白血病(ALL)
骨髄性 急性骨髄性白血病(AML)
慢性 リンパ性 慢性リンパ性白血病(CLL)
骨髄性 慢性骨髄性白血病(CML)

犬の白血病の好発犬種

急性リンパ芽球性白血病は5〜6歳前後の若〜中齢犬でよく見られ、シニア犬(老犬)になると慢性リンパ性白血病(CLL)が見られるようになります。白血病は犬のがんの中ではまれな病気です。


犬の白血病の症状

ミニチュアシュナウザー

急性リンパ芽球性白血病は、リンパ球の元になる未熟な血液細胞(リンパ芽球)が遺伝子異常によって白血病細胞になり、骨髄で急速に増える病気です。骨髄で本来つくられるはずだった血小板や好中球、赤血球が減少し、白血病細胞が全身を循環することで以下のような症状が見られます。

  • 貧血
  • 食欲不振/体重減少
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 元気がない/ぐったりしている
  • 歯ぐきや舌が青白い
  • 発熱
  • 多飲多尿
  • 呼吸数や心拍数の乱れ
  • 出血しやすい/あざができやすい
  • リンパ節、脾臓、肝臓の肥大

慢性リンパ性白血病

慢性リンパ性白血病は急性リンパ芽球性白血病と異なり、成熟したリンパ球ががん化して白血病細胞になります。徐々に正常な細胞と入れ替わるため完全に発症するまで数カ月から数年かかり、以下のような症状が見られます。

  • 貧血
  • リンパ節、脾臓、肝臓の肥大
  • 元気がない/ぐったりしている
  • 出血しやすい/あざができやすい

ただし、実際は飼い主さんが症状で気づくより血液検査で偶然見つかることのほうが多いでしょう。検査でわかった時点では目立った症状が現れていないケースも少なくありません。

犬の白血病の原因

白血病は遺伝子異常によって発症しますが、どの犬種でも発症する可能性があり、なぜ異常が起きるのか明確にはなっていません。原因がわからないため、予防法もありません。ただし、遺伝子が損傷する要因として放射線や有毒物質(殺虫剤やタバコの煙など)、ウイルス感染などは発症リスクを高める可能性があります。

犬の白血病の検査方法

診察を受けるジャックラッセルテリア

白血病の診断では、血液検査で白血球や赤血球、血小板の数を調べたり、顕微鏡を使って細胞の数や種類を調べたりします。確定診断を行うためには骨髄検査(骨髄吸引または骨髄生検)を行いますが、全身麻酔が必要になるためシニア犬(老犬)など状態によっては行わない場合もあります。

他にも触診でリンパ節が腫れていないかを確認したり、脾臓や肝臓などの肥大がないか超音波検査やCT検査をしたり、リンパ球の中に特定の種類の細胞(T細胞やB細胞など)が多数を占めていないかクローナリティー解析と呼ばれる検査で調べたりします。

犬の白血病の治療法

急性白血病は進行が非常に早く、すぐに治療を始めないと数日で末期を迎える可能性があります。そのため抗がん剤やステロイドを使った化学療法で白血病細胞を減らし、確認できなくなる寛解を目指します。貧血がある場合は輸血を行い、食事が摂れない場合はカテーテルを使って流動食を投与する経管栄養を行います。

慢性白血病は進行が遅く、リンパ球数が増加したり症状が現れたりして治療を始めるまで1年以上かかる場合もあります。定期的な血液検査で血球数を測定し、治療が必要になれば抗がん剤やプレドニゾンなどの内服薬を投与します。

白血病の食事療法

PETOKOTO FOODS

食事やサプリメントで白血病を治療することはできません。治療中は免疫力が下がり感染症のリスクが上がりますので、新鮮なごはんでしっかりエネルギーを摂ることが重要です。細菌が繁殖しやすい生肉や生野菜は避けてください。

犬の白血病の予後

急性白血病の予後は良くありません。治療をしなければ余命は数日から数週間、抗がん剤がうまく効いたとしても良くて半年、長くても1年以内に最期を迎えてしまいます。慢性白血病も寛解は難しいものの、急性白血病より長く生きることはできます。生存期間は平均して半年から1年、2年以上になるケースもあります。

まとめ

ヨークシャーテリア
白血病は血液細胞ががん化する血液の病気
急性の場合は予後が悪くすぐに治療が必要
慢性の場合は血液検査で偶然わかることが多い
原因不明で予防することは難しい
白血病は人ではよく知られた病気ですが、犬ではあまり多くありません。しかし、発症してしまうと治る可能性はとても低く、急性の場合は数日で命を落としてしまうこともあります。生存期間を長くするためには、早く治療を始めることが重要です。定期的な健康診断を欠かさず、日頃から愛犬をよく観察して異変があればすぐ気づけるようにしましょう。

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