猫が下痢をした場合に考えられる原因や対処法などを獣医師が解説
猫の飼い主さんでしたら、愛猫の下痢は誰もが経験する症状です。しかし、下痢といっても、形状も水っぽいものから泥状のものまであり、その他便の量や回数、血や粘膜が混じっているか、どんな色なのか、嘔吐や体重減少があるかなどによってさまざまな原因が考えられます。今回は猫が下痢をする場合に考えられる原因と病気について、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師の佐藤が解説します。
猫の下痢とは
一言で「下痢」といってもその原因はさまざまです。しかし、主要な原因は「大腸性下痢(大腸の異常)」か「小腸性下痢(小腸の異常)」の2つが考えられます。
これは検査は必要になりますが、軟便、水様便など水分量、色でわかる場合があります。例えば大腸性下痢であれば血が混じった赤い下痢やゼリー状の物質のついた粘液便が出ます。
小腸性下痢の場合は黒、もしくは茶色の暗色系の下痢を出すことがあります。形態は軟便や水様便などさまざまで、同時に体重が減る傾向にあります。
もし、下痢や便の際に愛犬が鳴くようであれば、大腸小腸ではなく肛門の異常が考えられます。
猫が下痢の場合に考えられる原因と病気
前述した通り、猫が下痢をする原因はさまざまありますが、考えられる原因としては以下の7点が挙げられます。
- ストレスによるもの
- 異物誤飲によるもの
- フードによるもの
- 薬物によるもの
- 感染症によるもの
- 内臓疾患によるもの
- その他
ストレスによるもの
環境の変化に弱い猫は、家の引越しや留守番などの環境の変化によるストレスでも下痢になることがあります。そのため、猫のストレスになっている原因を、可能な限り取り除いてあげてください。異物誤飲によるもの
変なモノを食べて起こる症状は「嘔吐」が主体ですが、腸まで異物が移動している場合は、下痢の症状が出てきます。重症化する場合もあるので、気になる方は動物病院に行きましょう。フードによるもの
腐った食べ物や消化に悪いフードを食べてしまったり、冷たいフードを食べると下痢の原因になります。また、今まで食べたことのないものや、体に合わないものを食べると食物アレルギーと似たような反応を示し、その症状が下痢として発症することがあります。薬品によるもの
誤って飲んでしまった薬や、治療で飲んでいる薬などからも下痢が引き起こされることがあります。特に治療用の薬に含まれる抗生物質によって、腸内細菌のバランスが崩れてしまい、下痢になってしまうこともあります。また、気をつけなければならないのは、ネズミや害虫駆除のためのホウ酸団子などの化学薬品を、ネズミなどを通して摂取してしまうことです。
感染症によるもの
細菌、ウイルス、寄生虫疾患からも下痢が起こります。内臓疾患によるもの
膵臓の機能異常などで、下痢を起こすことがあります。また、腸などの腫瘍においても同症状が見られます。その他
まれではありますが、寒さによってお腹が冷え、腸の血流が損なわれて機能低下を起こし、下痢を引き起こしたり、水を飲みすぎて下痢を引き起こしたりすることもあります。ただ、後者の「水の飲みすぎ」は猫にとって珍しいことなので、ほぼ潜在する病気があって、その病気によって喉が乾き、下痢という症状を引き起こしている可能性があるので、早急に動物病院で診てもらいましょう。
猫が下痢をしたときの対処法
基本的に下痢をしたあと、愛猫がいつもと変わらず元気であれば様子をみても構いません。下痢だけでなく「食欲不振」や「嘔吐」といった他の症状を呈していたら病院に連れていきましょう。
原因不明の下痢の場合もありますが、早期発見・早期治療につながる可能性もあります。
また、「猫が下痢をしたら腸を休ませるために絶食させる」という方もいらっしゃいます。腸を休ませることは有効ですが、原因が「腸であるとき」に有効のため、判断が難しいところです。
もし絶食させるとしても成猫の場合で半日程度にして、1歳未満の子猫の場合は栄養が必要な時期ですので絶食させずに必ずご飯は与えてください。
猫の下痢は冷静な応急処置が大切です
ペットが健康な状態を維持するためには、獣医師が最善の治療をすることはもちろん、飼い主の皆さんがペットの異変を察知することが必要です。
しかし、動物の病気を判断することはとても難しいことです。愛猫への知識を増やせば、最悪の事態を防ぐ手助けになることは間違いありません。
愛猫への知識をつけていただきながら、気になることがあれば早急に獣医師に相談しましょう。