
犬の粘液便とは?注意したい便の状態や原因などを獣医師が解説
便は健康のバロメーターです。毎日良質なうんちであれば言うことありませんが、腸内環境は日々変わるもの。便の表面にゼリー状物質が付着していたことはありませんか? その状態の便のことを「粘液便」といいます。いつもと違う便の状態に、動物病院に連れて行くべきか悩む方も多いかと思います。今回は粘液が混じった便、通称「粘液便」について獣医師の新川が解説します。
病態 | 粘液便 |
---|---|
症状 | 便とともにゼリー状の半透明〜透明な流動物が付着、もしくは混ざって排出される |
原因 | 吸収不全や腸粘液の分泌過多など |
危険度 | 低。高頻度で繰り返し見られる場合は病気が潜んでいる可能性があるため、動物病院で診てもらいましょう。 |
犬の粘液便のメカニズム

粘液便に付着したゼリー状の流動物は「腸粘液」と考えられており、腸から分泌されています。
腸粘液は、健康な状態でも吸収が不完全で、便とともに排出されることがあります。
反対に病的状態でも腸粘液の分泌過多になり、吸収不全が起きると、そのまま便と一緒に「粘液便」として排出されることがあります。
犬の粘液便で動物病院へ連れて行く基準

高頻度の犬の粘液便は動物病院へ
健康時でも粘液便は見られます。そのため、粘液便のみがまれに見られる場合には、しばらく様子を見てもらって大丈夫です。しかし、高頻度で粘液便に遭遇したり、便色の変化があったり、食欲不振や嘔吐、軟便、下痢等の他の症状を伴ったりする場合には、病気が潜んでいる可能性がありますので、一度動物病院で診てもらうことをおすすめします。
注意したい犬の粘液便の状態
正常の便は、淡い茶色から黄土色で、持ち上げても変形しない程度の適度な水分含量や固さのものです。食べ物や腸内環境によって微細な差があります。以下に便の色ごとの状態を示しますので、当てはまるようであれば、獣医師に相談してみましょう。
黄色 | 善玉菌が多い便(弱酸性) |
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濃茶褐色〜茶褐色〜深緑色 | 高脂肪食を摂取した後の便(アルカリ性) |
白色 | 消化液が不足している(膵外分泌不全)、カルシウムを多量に摂取した後の便 |
赤色 | 直腸や肛門周辺で出血があるサインです |
黒色 | 上部消化管(胃、十二指腸、小腸)で出血がある可能性があります |
犬の粘液便の対処法

粘液便が見られたら以下の項目を確認・実行してみてください。
- 他の症状がないか確認
- 消化の良いフードに変える
- 補助食品の活用
- 粘液便を繰り返すようであれば病院へ
1. 他の症状がないか確認
「便の色や固さ」「形」「付着物や肉眼で確認できる異物の存在の有無」「その他消化器症状の有無(軟便、下痢、嘔吐、食欲不振など)」を確認してください。異常がある場合には獣医師の診察を受けましょう。
上記に挙げたような症状がなく、便に粘液が付着していても、元気や食欲はいつも通りの場合は、しばらく経過観察で良いでしょう。
2. 消化の良いフードに変える
おやつを控えて消化の良いフードに変えることで、胃腸への負担が減ります。ペトコトでは、オリジナルのウェットフード「PETOKOTO FOODS」をオススメしています。
一時的に胃腸が疲れている可能性がありますので、しっかりと体を休ませて様子をみてあげてください。
3. 補助食品の活用
乳酸菌やオリゴ糖など整腸作用が期待できるサプリメントを日常で使用することで、腸内環境が整いやすくなります。4. 繰り返すようであれば病院へ
特に症状は無く、元気や食欲がいつも通りでも、高頻度で粘液便がある際には受診しましょう。診察時には、必要に応じて「糞便検査」や「血液検査」「レントゲン」「バリウム造影検査」「内視鏡検査 「組織検査」「試験開腹」などの検査を行い、原因を探索するようになります。
判明した原因に応じて、それぞれに適したケアを飼い主さんと相談しながら進めていくことになります。
犬の粘液便は頻繁なら動物病院へ!

粘液便に付着したゼリー状の流動物は「腸粘液」です
健康な場合でも粘液便が排出されることがあります
頻繁に粘液便が見られる場合は動物病院へ
愛犬の小さな変化にも気づくことが、早期発見・早期治療につながり、愛犬のためになります。異常を見つけたら、動物病院に連れて行きましょう。
参考文献
- I van der Gaag.The histological appearance of large intestinal biopsies in dogs with clinical signs of large bowel disease.Can J Vet Res. 1988 Jan; 52(1): 75–82.
- 高橋迪雄監訳:獣医生理学 第2版 ,文永堂出版
- 日野 常雄, 浅沼 成人.2004:イヌ・ネコの腸内細菌と健康.ペット栄養学会誌, 7(3):139-152
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女性獣医師は、獣医師全体の約半数を占めます。しかし、勤務の過酷さから家庭との両立は難しく、家庭のために臨床から離れた方、逆に仕事のために家庭を持つことをためらう方、さらに、そうした先輩の姿に将来の不安を感じる若い方も少なくありません。そこで、女性獣医師の活躍・活動の場を求め、セミナーや求人の情報などを共有するネットワーク作りを考えています。

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