聴診器を使って愛犬・愛猫の異変を早期発見 使い方や心音の聞き方を循環器認定医が解説
獣医師が診察時に身に付けている聴診器は、動物を診察する上で必ず行う身体検査で必要になる道具です。身体検査は問診、視診、打診、触診、そして聴診器を使用する聴診があり、この聴診で聴診器を使用し、診断を進めていきます。聴診器は獣医療を行う上で必要不可欠の医療道具です。今回は、この聴診器によって犬や猫の何がわかり、そして何を守ることができるのかについて、白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問獣医師で獣医循環器認定医の佐藤がわかりやすくご説明いたします。
聴診器は主にどのようなことを診断するのか
聴診器を使って分かる疾患は主に呼吸器、循環器、消化器の三つが挙げられます。
呼吸器疾患
聴診器を使って「空気の通り道である気管」「酸素の交換をする肺」の状態を呼吸音から推察することで、気管、肺における異常を早期に発見します。呼吸音は非常に聞き取りにくく、正常か異常かを判断するにはトレーニングが必要です。循環器疾患
聴診器を使って「心雑音」「不整脈」を聞き分け、心臓病を見抜きます。心拍数から心臓の正常音に雑音が混じるかどうかを判断し、全身の異常を早期に見つけることも可能です。正常音は「ドッ、クン」が一回の心臓の音で、異常があるとその音のどこかに「ザーッ」という雑音が混ざります。心拍数を正確に聴取することもできます。犬と猫の正常な安静時心拍数
必ず、安静時に心拍数を測ることが重要です。- 犬:70-160回/分 どの犬もこの心拍数が正常回数です。
- 猫:140-220回/分 この回数を上回っても、下回ってもいけないということになります。
消化器疾患
聴診器で腸蠕動音(ちょうぜんどうおん)を聞き、腸の動きが正常かどうかを判断します。腸蠕動音は食前か食後などによっても異なり、個体差もあるので聞き分けるにはトレーニングが必要です。愛犬・愛猫を守るために行う聴診
主に、心拍数の上昇で病気を早期発見することができます。もちろん正常な場合での興奮や緊張、外気温が暑い、加齢などのケースを除いての話です。心拍数が上昇する可能性がある病気としては、
- 発熱(熱中症)
- 心臓病
- 不整脈
- 痛み
- 貧血
- 炎症
- 腫瘍
- 低酸素症
- 甲状腺疾患などの代謝性疾患
- 心臓病
- 心筋炎
- 不整脈
- 甲状腺機能低下症
- 薬物
- 電解質異常
- 消化器疾患などの迷走神経緊張
- 高血圧
- 腎不全
心臓病を患っている犬や猫を飼われている飼い主さまは、心臓の聴診が必ず役に立つと思います。なぜかというと、心臓病を患っている場合、進行すると心拍数が上がることがわかっているからです。進行するとリズムが乱れ、不整脈まで出てしまいます。さらに進行すると心拍数は落ちてきます。心拍数を毎日数えることで、心臓病の進行度合いが把握できるのです。
心臓の正常音と心雑音を聞き分けるにはトレーニングが必要ですが、回数を数えたり、リズムを聞いたりすることはすぐにでもできます。もちろんトレーニングを積んで心雑音を早期に判断したり、肺の音を聞き分けたりするまで上達していただけると、愛犬・愛猫の異常を早期に発見することができます。
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どんな聴診器を買えばいい?
聴診器にはさまざまな形や大きさのものがあります。飼い主の皆さんは専門的に使いこなす訳ではありませんので細かな構造まで知る必要はないかと思いますが、ある程度理解をしておくと購入時に迷わなくて済むと思います。
聴診器は構造的に動物の胸に当てる部分をチェストピースと呼びます。
聴診する部位
聴診器を当てて心拍数を計測する部位は、心臓がある中心部分(左側胸部分)です。聴診器を使いこなして異変を早期発見
大事なことは、愛犬・愛猫の正常な心拍数や呼吸数を把握することです。そのために、毎日同じような環境で同じ時間に計測して、平均を取ってください。すぐに正常な数値がわからなければ、かかりつけの先生に計測して教えてもらってください。ただ、病院ですと緊張して1〜2割増加しているのでご注意を。飼い主さまが家で聴診器を使いこなせるようになれば、愛犬・愛猫の異変を早期発見できるようになることは間違いないでしょう。