犬が大きな音で吠えるのは関節や骨の痛みが原因かも!? 海外研究から報告
雷や花火の音など、大きな音が聞こえた際に愛犬が騒いだり震えたり、隠れたりした経験をお持ちの飼い主さんは少なくないと思います。そういった反応はワンちゃんの繊細な「性格」が原因だと思われていましたが、実は原因の一つとして「体の痛み」があるかもしれないということが分かってきました。ブラジルの研究チームが犬の騒音に対する反応と筋骨格系の痛みを持つ犬との関連を調べた論文を発表していますので、獣医師の福地が解説します。
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大きな音に驚く犬はどこか痛いかも?
実は人の場合では、騒音を単に「うるさい」と思うだけでなく、さまざまな身体症状を表すことが知られています。この騒音に対して体に不利益な状態が生じやすいかどうかを騒音感受性といいます。これは今まで人間でのみ言われていたことですが、犬においても騒音によって聴覚に関係する以外の身体症状が出ることが今回の研究報告でわかったのです。
参照:『騒音感受性とCAS質 問紙を利用した 性格尺度との関連に関する研究』(昭和医学会雑誌/55巻/1995年/4号)
筋肉と骨の痛みの有無で騒音に対する反応が違う?
研究チームは20匹の犬を対象に飼い主さんから犬種、性別、性格などの情報を聞き、犬種や雌雄に偏りのない構成で調査を行いました。20匹の内訳は以下の通りです。- 筋肉と骨に疾患を持つ犬10匹(平均年齢5.7歳)
- 股関節異形成の犬5匹
- 変形性骨関節症の犬4匹
- 腰椎の脊椎症を持つ犬1匹
- 明らかな痛みを起こす疾患を持たない犬10匹(平均年齢4.7歳)
恐怖や不安の症状としてよくみられたのは震えと物陰に隠れる行動で、花火に対して恐怖や不安を示したのはどちらの群れでも7匹ずつでした。そのほか痛みのある犬が不安や恐怖の症状を表した音として、銃声や飛行機、車、バイク、人混み、子ども、風の音が挙げられました。
犬が反応した騒音の種類(出典)
騒音に対する不安行動は鎮痛薬で改善する?
痛みのあるグループの全ての犬には鎮痛薬の投与が勧められ、痛みのあるグループ8匹と痛みの無いグループの全ての犬に精神薬の投与が勧められました。鎮痛薬の投与が行われた犬の全てには騒音に対する恐怖や不安の症状は改善しましたが、1匹だけ股関節形成不全の犬は飼い主さんが鎮痛薬の投与を拒否したため改善がみられませんでした。このことからも、体の痛みは騒音に対する恐怖や不安の反応を大きくすることが考えられます。大きな音に不安な反応をする子は疾患の疑いも
筆者も雷が聞こえるとおもらしをして家中荒らし回る犬を経験したことがあります(この時は精神的なものだろうという結論になり、精神安定剤を処方しました)。今回の調査では花火に対する反応は痛みがあるグループとそうでないグループで同じくらいでしたので、音に対して過剰に怯えたり隠れたりする行動をとるからといって、その原因が痛みにあるとは限りません。しかし可能性として痛みが原因の場合も考えられますので、急に吠えるようになった場合は、「うちの子、吠え癖が付いちゃったみたい」で済まさず、一度病院で骨や関節をみてもらうと良いかもしれませんね。調査概要
- 調査期間:各犬の観察期間についての明記なし。
- 対象者:身体検査や画像検査で骨筋肉疾患と痛みがあると診断された犬10匹と明らかな痛みがないと考えられる犬10匹。
- 調査方法:各犬が遭遇した騒音(飼い主が判断した)に対しての反応を分析。
- 詳細:『Noise Sensitivities in Dogs: An Exploration of Signs in Dogs with and without Musculoskeletal Pain Using Qualitative Content Analysis』
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