【獣医師執筆】猫がコーヒーを飲むのはNG!カフェイン中毒の症状や致死量、応急処置を解説
毎日コーヒーを飲んでいる方は少なくないと思いますが、猫にとってカフェインが含まれるコーヒーは危険な飲み物です。今回は猫が間違ってコーヒーを舐めてしまった際に考えられる症状や致死量、応急処置を紹介します。
目次
- 猫にとってコーヒーが危険である理由
- カフェインが含まれている食べ物(カフェインの含有量)
- 猫がコーヒーのカフェイン中毒で考えられる症状
- 猫にとってのコーヒーの致死量
- 猫がコーヒーを飲んでしまった場合の治療法
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猫にとってコーヒーが危険である理由
コーヒーにはカフェインが含まれています。カフェインは興奮作用を持ち、精神刺激薬の一つともされています。みなさんも眠気覚ましのために飲むことがありますよね。カフェインは覚醒作用だけでなく解熱鎮痛作用、利尿作用も示します。猫がカフェインを摂取すると直接的に心筋や中枢神経系を刺激します。
カフェインで目が覚める理由
カフェインはアデノシンという鎮静作用を持つ物質に似た構造を持ち、体内に入るとアデノシンの吸収を邪魔してしまいます。アデノシンは興奮を抑えるために分泌されるもので、ブレーキのような役割を持っています。カフェインはアデノシンのブレーキを効かなくさせてしまうため、結果的に興奮状態が続いて私たちは覚醒したと感じるのです。カフェインが含まれている食べ物(カフェインの含有量)
よく知られている飲み物と言えばコーヒーですが、玉露や紅茶、ウーロン茶、コーラなどにも含まれています。
カフェイン含有量(100mlあたり)
- 玉露:160mg(茶葉10gに60℃の湯60mlを加え2.5分浸出)
- エスプレッソコーヒー:140mg
- ドリップコーヒー:135mg
- インスタントコーヒー:60mg(インスタントコーヒー粉末2gを熱湯140mlに溶かす)
- 栄養ドリンク:50mg
- ココア:45mg
- 紅茶、抹茶:30mg
- 煎茶、ウーロン茶、ほうじ茶:20mg
- コーラ:10mg
出典:全日本コーヒー協会
猫にとって麦茶はどうなの?
ほうじ茶などは茶葉から抽出したお茶にはカフェインが含まれていますが、麦茶は大豆の種子を煎じて作った茶外茶のため、カフェインは含まれず危険はありません。ただ、猫が気を付けるべき成分はカフェイン以外にもありますので、注意点を理解した上で与えるようにしてください。猫にとってコーヒーゼリーはどうなの?
コーヒーゼリーにもカフェインは含まれており、100mlあたりの含有量は40mgほどと言われています。ドリップコーヒーなどと比べると少ないですが、食べせないほうがいいでしょう。コーヒー牛乳も同様にカフェインが含まれているのはダメですし、牛乳自体も猫に推奨されていません。猫にとってコーヒー豆もダメ?
コーヒー豆には重量の1〜2%程度のカフェインが含まれていると言われています。そのため、豆であっても食べさせないようにしましょう。猫がコーヒーのカフェイン中毒で考えられる症状
- 頻脈
- 呼吸促迫
- 過度の興奮
- 振戦
- 痙攣
- 不整脈(心室性期外収縮)
- 全身性のうっ血あるいは出血
頻脈、呼吸促迫、過度の興奮、痙攣、心室性期外収縮などという症状を引き起こすとされています。また、冠動脈や肺動脈をはじめ、全身の血管が拡張することにより、うっ血や出血を起こすこともあります。
猫にとってのコーヒーの致死量
猫は1kgあたり150mgのカフェインが致死量だとされています。そのため5kgの猫の場合、750mgを摂取すると危険ということになります。コーヒーだと500ml、缶コーヒー1本が200mlくらいですので、2本以上で危険ということになります。
誤飲したとしても量を考えれば死に至る確率は低いですが、人でも一口で体調を崩してしまう人がいるように、猫によって重症化するスピードは違います。猫にとって危険な成分には変わりませんので、猫が間違ってコーヒーを飲んでしまった場合は、いつ・何を・どれくらい飲んだかを確認して、すぐ動物病院に連絡しましょう。
猫がコーヒーを飲んでしまった場合の治療法
カフェインに解毒剤は存在せず、治療は苦痛を和らげることを目的とした支持的なものになります。血液検査や尿検査をすることが一般的です。催吐(さいと)は、摂食後数時間(4〜6時間)経過していても効果的とされています。催吐が十分効果的でない場合や禁忌の場合は、胃洗浄が有用とされています。
猫がコーヒーを飲んだ場合の対処法・応急処置
飼い主さんが処置をすることで重病化する恐れもあるため、必ず動物病院の先生に診てもらいましょう。獣医師が的確な判断をすることが重要ですので、飼い主さんが正しい説明をする必要があります。まずは中毒物質の種類の特定と摂取経路を明らかにしてください。
その上で動物病院へ連絡し、誤飲したもののパッケージあるいは残りを持っていくようにしましょう。致死摂取量は体重や状態によって変わるため、誤飲した場合は念のため動物病院に電話することを推奨しています。何より、猫の手が届く場所にコーヒーを置かないよう気をつけましょう。
参考文献
- ロジャー・W.ゲフェラー、ショーン・メッソニア(2005)『犬と猫の中毒ハンドブック』学窓社
- 阿部又信(2008)『小動物栄養学』ファームプレス
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