【獣医師執筆】猫にぶどうを食べさせるのはNG!理由や食べた場合の対処法を解説
猫にぶどうを食べさせてはいけないというのをご存じの方も多いと思いますが、実はぶどうの何の成分が猫の体に悪影響をおよぼしているのか、詳しいことはまだ研究中のため判明していません。レーズンなどの加工品を含め、ぶどうを摂取すると中毒症状を引き起こし、急性腎不全まで発症してしまう危険性があるのです。すべての猫が発症するわけではありませんが、危険性を考慮すると基本的に与えるべきではありません。
猫がぶどうを食べるのはNG
猫がぶどうを食べると中毒症状により急性腎不全を引き起こす可能性があります。実はぶどうのどのような成分が中毒につながるのかは現在も研究が進められている途中で、詳しいことは分かっていません。現在分かっていることは、「猫によっては重度の中毒になること」「ぶどうの皮は果肉よりも中毒の原因になること」です。
猫がぶどうを食べた場合の中毒症状
ぶどうの中毒症状は食べてから2〜5時間の間に現れることが多いそうです。症状が出ていなくても、ぶどうを食べたことが発覚したら可能な限り早く病院に連絡をしましょう。獣医さんの指示に従い、家で様子を見るか病院での受診が必要かを判断します。
- 嘔吐や下痢
- 食欲不振
- 元気がない
- 水をたくさん飲む
- お腹を痛がる
- 乏尿(ぼうにょう:尿の排泄量が減ってしまうこと)
ぶどうによる中毒症状の例
レーズンやぶどうジュースなどの加工品は?
レーズン、干しぶどう、ぶどうジュースなどの加工品も猫には食べさせるべきではありません。ぶどうは猫にとって食欲をあおるほどの嗜好性はないと言われています。しかしレーズンなどはパンや人間のお菓子に入っていることも多いため、目を離した隙に食べてしまう可能性もあります。食卓にぶどうやマスカット、レーズンパンや干しぶどう置いてある時は、誤って食べてしまわないようにしっかりと注意しましょう。猫がぶどうを食べると重度の中毒症状を引き起こし、急性腎不全を発症させる可能性が高いことが分かっています。しかしその厳密な原因は分かっていないので、今の段階で「加工品なら……」と与えてしまうのはリスクがあります。
中毒症状を引き起こす目安の量は?
中毒症状を引き起こす摂取量の目安は体重1kgに対し10〜32gと言われています。しかしぶどうの中毒を起こす原因は詳しく解明されていないので、少量であっても食べさせるべきではありません。日本獣医師会のぶどうによる中毒の犬の症例レポートには「発症は必ずしも摂取量だけに依存するわけではなく,発症例の摂取量を超えるブドウを食べても発症しない犬がいることも報告されている」と表記されています。
このレポートは犬の症例ですが、猫にも当てはまる可能性は十分考えられます。中毒症状はぶどうの摂取量にだけに左右されるわけではなく、ぶどうの種類や生産環境、健康状態が影響するのでしょう。
猫は腎臓病になりやすい?
猫は腎臓病になりやすいと言われていて、腎不全が原因で死んでしまう猫はガンに次いで多いのが現状です。しかしなぜ腎臓病になりやすいのかは、いまだにはっきりとした理由は分かっていません。現在ペットとして飼われている猫のルーツは砂漠で暮らしていたリビアヤマネコという猫だったと考えられていて、水分量の少ない地域では体から失われる水分を最小限にするため、尿を濃く、少なくすることで調整していたと思われます。
また、猫は年齢とともに毒素を尿として排出させる役割のあるネフロン(腎小体とそれに続く1本の尿細管のこと)の数が減少し、毒素を排出できないため血液中に老廃物がたまったり、水分を捨てすぎて脱水症状になってしまったりします。そのため猫は高齢になるほど腎臓への負担が大きくなっていくのではないかと考えられます。
ペトことでは腎臓病・泌尿器疾患に詳しい獣医師による記事も公開されています。猫を飼っている方にとって腎臓病は早期発見が難しい、心配の種のような病気です。正しい情報を確認し、打てる予防策を行っていきましょう。
猫がぶどうを食べてしまった時の対処法
八仙会動物医療研究部などの研究チームがぶどうを摂取し、急性腎不全を発症して死亡した犬の事例を報告しています。その症例によると、乏尿(ぼうにょう)や無尿まで症状が悪化した犬の場合の生存率は乏尿では24%、無尿の場合は12%とかなり低くなっています。現在では乏尿、無尿の症状があり急性腎不全が疑われる場合は積極的に透析(腎臓の機能を人工的に行うこと )などの治療が推奨されているようです。
猫の臨床報告はあまりあがっていないため、犬とどのような差があるのかは判明していません。しかし有害であるという事実があることをしっかりと認識しておくことが大切です。ぶどうやレーズンなどを食べてしまったことが分かったら、すぐに動物病院に連絡をしましょう。ぶどうを摂取後1時間ほどはぶどうの毒性が吸収されていない場合があるので、嘔吐を促す治療で様子を見ることができるかもしれません。しかし決して個人の判断で様子を見たり、嘔吐を促す行為したりはせず獣医さんの指示に従ってください。
猫にぶどうは与えない、食べてしまったら病院へ
ぶどうの何が猫にとって有害かはまだ研究が進められていますが、腎不全を引き起こしてしまう可能性が高いことは認識され始めています。ぶどうは犬やネコには与えず、もし誤って食べてしまった場合は「うちの子は大丈夫」なんて思わず、すぐに病院にいきましょう。万が一のことを考えて行動することが大切です。
参考文献
- PETMD「Human foods that are dangerous for cats」
- PMC「Household Food Items Toxic to Dogs and Cats」
- 日本獣医師会雑誌「ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1例」
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