マタギ犬(熊犬)とは?歴史や秋田犬や岩手犬などの種類を紹介
私たち人間の狩りをサポートしてきた犬がいたことをご存じでしょうか?それらの犬は「マタギ犬」と呼ばれ、古くは平安時代から狩猟のパートナーとして活躍してきました。今回はマタギ犬の歴史や、秋田犬をはじめとするマタギ犬の種類などを紹介します。
マタギ犬の「マタギ」とは?
マタギとは、東北地方・北海道で昔ながらの方法を用いて集団で狩猟を行う人のことを指し、秋田県の「阿仁(あに)マタギ」が有名です。現代においては単にマタギ郷として有名な土地に生まれ、鉄砲を生業とする猟師のことを指すようです。
古くは東北地方の言葉で「猟師」を意味する「山立(やまだち)」と呼ばれており、それが訛って「マタギ」になったいう説もあります。
主に熊の他に「アオシシカモシカ」「ニホンザル」「ウサギ」なども獲物としていました。
カモシカやニホンザルが禁猟となったことで熊やイノシシ、鹿を狩猟するように変わってきましたが、森林の減少やカモシカの禁猟化により本来的なマタギ猟を行う人は減少しています。
マタギ犬は狩りのパートナー
マタギ犬とは、マタギが熊やイノシシ、鹿を狩る際に連れていた犬のことを指します。国際的に認められた用語ではないため、英語表記はありません。
マタギ犬は、品種改良を積極的に行ってこなかったため、縄文時代の犬の特徴を示す遺伝子を多く残しているとされています。
マタギ犬として活躍した犬種
正式にマタギ犬を祖先に持つ犬は「秋田犬」と「北海道犬」のみとされていますが、以前は以下の8犬種が存在していたとされています。- 会津犬
- 津軽犬
- 秋田犬
- 仙台犬
- 越路犬
- 岩手犬
- 相馬犬
- 高安犬
禁猟化により、マタギが減るに連れマタギ犬の個体数も減少していきました。
現在は「秋田犬」と「岩手犬」だけが生き残っているとされています。また、東北地方・北海道だけでなく四国犬のもとになった「土佐犬」もマタギ犬として活躍していました。
北海道犬
北海道のマタギ犬は、縄文時代にアイヌ民族が東北地方から北海道へ移住した際に同伴し、厳しい環境に適応したものが残ったとされています。
1869年(明治2年)にイギリスの動物学者によって「アイヌ犬」と命名されました。
アイヌ犬は1937年(昭和12年)に文部省によって、天然記念物に指定され「北海道犬」と命名されました。
秋田犬
忠犬ハチ公でも有名な秋田犬は、1630年代に東北地方の中型獣猟犬を大型化して生まれたとされています。
しかし、それからは闘犬や警備犬として育てられてきました。大正時代になって固有種として保存する運動が起こり、地方名をつけて「秋田犬」と呼ばれるようになりました。
1931年に政府が日本犬の保存の必要性を認め、日本犬で初めて秋田犬が天然記念物に指定されました。
岩手犬
あまり耳馴染みのない犬種ですが、秋田犬と並び、秋田から岩手にかけての山々で猟をしていたマタギによって使われた猟犬です。「南部犬」とも呼ばれてきました。はじめは「秋田犬」の中型という立ち位置でしたが、秋田犬が闘犬にも利用されたことから区別されてきました。
マタギの減少によって岩手犬も少なくなり、今では希少な犬となっています。
四国犬
Photo by stellar.collisionさん Thanks!
闘犬として有名な「土佐犬」の元になった犬です。1937年に国の天然記念物に指定されました。
かつては、高知県付近の山岳地帯で熊やイノシシを狩る「マタギ犬」として活躍していました。
天然記念物のマタギ犬を後世に!
人間の猟をサポートしてきたマタギ犬。歴史あるマタギ犬が後世にも生き続けられるよう、大切に育てていきたいですね。