【獣医師執筆】猫のうんちの回数(頻度)・色・硬さから健康状態を知る方法|不調の見極め方と対処法
猫のうんちは飼い主さんが回数や色、硬い・柔らかいといった変化をチェックしやすい健康のバロメーターです。黒い、白い、血が付いている場合は緊急性が高く、病気の早期発見につながるかもしれません。理想的なうんちの見分け方や注意すべきうんちについて、獣医師の佐藤が解説します。
猫の理想的なうんちとは
飼い主さんが愛猫の健康状態を知る手段として「うんちを見る」ことはとても大切です。しかし、「うんちの何を見ればいいのかよく分からない」という飼い主さんも多いはず。うんちが適切かそうでないか、以下の点に注目していただくといいでしょう。
- うんちの回数
- うんちの水分量
- うんちの色
猫の理想的なうんちの回数・頻度
うんちの回数は猫によって異なり、1日1回の猫もいれば2回、3回とする猫もいます。大事なのは1日の回数よりも、その回数が毎日変わらず安定しているかということです。いつも1日1回の猫が急に3回したり、逆に3回の子が1回になったりしたら注意が必要です。猫の理想的なうんちの水分量
うんちの形や大きさは立派なものほど安心感を与えるかもしれませんが、望ましいのは栄養がしっかり吸収されて小さく硬くなったうんちです。ゆるい場合は注意が必要です。猫の理想的なうんちの色
色は食材によっても変わるため、黄土色や茶色系であればそれほど気にする必要はありません。食べている食材と同じ色がうんちで出てきます。ただし、真っ白や真っ黒のうんちは緊急性が高い可能性があります。赤い血が付いたうんちも要注意です。猫のうんちはなぜ臭い?
猫の飼い主さんから「うんちの臭い」についてご相談を頂くことがよくあります。実際、犬と比べて猫のうんちのほうが臭い傾向があるのですが、その理由の一つに「食べ物」が挙げられます。雑食動物の犬と違って猫は肉食動物。消化に時間がかかった肉(タンパク質)が大腸で発酵するせいで腐敗臭が強くなるのです。一方で添加物が多く含まれたり、品質に問題のある食材が使用されることが臭くなる原因にもなるため、添加物が最低限で、新鮮な食材を使用したご飯を選ぶようにしましょう。
猫のうんちがゆるい・柔らかいときに考えられる原因・病気
猫のうんちがゆるい(軟便)、もしくは下痢をしている場合、小腸か大腸に以下のような異変が起きていると考えられます。下痢はさまざまな要因で起こりますが、誤飲・誤食をしたり、血便が続いたり、食欲や元気が無くなったりする場合は緊急性が高い可能性があります。様子見をせず、できるだけ早く動物病院に相談してください。原因 | 対処法 | |
---|---|---|
食事 | 質の悪いフードや古くなったフードなどの酸化した油 | 質の良いフード、ウェットフードなどへの変更 |
食物アレルギー | 除去食試験を受けて確定した場合は原因となる食材を避ける | |
感染症 | パルボ、ジステンパーなどのウイルス | 抗生物質の投与、対症療法など |
回虫、条虫、鉤虫、糞線虫、ジアルジア、コクシジウムなどの寄生虫 | 駆虫薬の投与 | |
基礎疾患 | 慢性腸症、腫瘍、膵炎、膵外分泌不全、肝疾患など | 各疾患の治療 |
原因 | 対処法 | |
---|---|---|
食事 | 新しい食事に腸内環境が対応できていない | 元の食事に戻す。頻繁に変えたり、一気に変えたりせず、少しずつ置き換える |
食材に含まれる食物繊維が過剰 | さつまいもやとうもろこし、おからなど食物繊維の多い食材を避ける | |
食物アレルギー | 除去食試験を受けて確定した場合は原因となる食材を避ける | |
誤飲・誤食(中毒) | 吸着剤(活性炭)の投与、内視鏡による除去、開腹手術など | |
薬 | 抗生物質など | 乳酸菌製剤の服用 |
ストレス | 環境の変化、ストレスによる過敏性腸症候群など | ストレス要因の除去 |
感染症 | サルモネラ、大腸菌、カンピロバクターなどの細菌 | 抗生物質の投与 |
鞭虫などの寄生虫 | 駆虫薬の投与 | |
基礎疾患 | 慢性腸症(炎症性腸疾患)、腫瘍など | 各疾患の治療 |
猫のご飯の切り替えは大切
キャットフードで普段と違った形状やフードに切り替える場合は、少量ずつ切り替えることが大切です。腸内環境を慣らしてあげないと、一定期間うんちがゆるくなります。フードを変えたら下痢になったとフードのせいだと勘違いされる方も多いですが、実際は切り替え方が重要ですので、少量ずつ切り替えるようにしましょう。ドッグフードの切り替え方と同じですので、下記の動画をぜひご覧ください。
猫がうんちをしないときに考えられる原因・病気
猫がうんちをしない場合、そもそも食事をしていないことでうんちが作られていないか、以下のような問題が起きて出ない可能性が考えられます。
- 機能性便秘:大腸や直腸に異常がある
- 器質性便秘:物理的に便が通過できない
- 症候性便秘:病気の症状として起こる
- 薬剤性便秘:薬の副作用で起こる
便がいつまでも体に留まると排出されるはずだった細菌や老廃物などの毒素が体内に取り込まれ、敗血症による多臓器不全が起こる可能性があります。嘔吐や震え、ぐったりしているといった様子が見られる場合はすぐに動物病院へ行くようにしてください。
綿棒で刺激するのはNG
うんちを促すために綿棒で肛門を刺激する方法が紹介されることもありますが、動きが予測できない猫を相手に肛門や腸内を傷付けてしまう可能性がありますのでお勧めしません。病院で原因を探り、獣医師の指示に従うようにしてください。まとめ
回数や形が安定しているのが理想的なうんち
下痢で食欲や元気が無い場合は要注意
便秘も続くときは病院へ
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