犬はどうやって学習してる? 古典的条件付けとオペラント条件付けとは

犬はどうやって学習してる? 古典的条件付けとオペラント条件付けとは

日頃私たちと生活を共にしてくれる犬はとても賢い動物です。私たちの言ったことを理解し、指示に従ってくれる犬たちですが、どのように物事を理解しているのでしょうか。しつけが上手くいった人も上手くいかない人も、犬の学習の仕方について理解することで、より犬とのコミュニケーションが取りやすくなるはずです。今回は、犬の学習理論である、「古典的条件付け(レスポンデント条件付け)」や「オペラント条件付け」についてドッグトレーナーのぺぇが解説します。

犬の学習とは

犬は日々、飼い主さんの何気ないな行動や反応を見て学習しています。「なんでこんなことするんだろう?」「どうして吠えてしまうんだろう?」「なぜ叱っているのに直らないんだろう?」飼い主さんから見ると「問題行動」でも、犬から見ると「学習した成果」だったりするのです。
犬の学習の仕方は大きく分けて二つ、「古典的条件付け」と「オペラント条件付け」というものがあります。

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)

よだれを垂らす犬

「パブロフの犬」という言葉を聞いたことはありませんか? 犬に「ベルの音を聞かせてから食事を与える」という行動を繰り返すことによって、犬は「ベルの音=食事」と学習します。そうすると、ベルの音を聞くだけで唾液が分泌されるようになります。これが古典的条件付け(レスポンデント条件付け)の代表的な研究として知られています。

ベルの音(条件刺激※1)+食事(無条件刺激※2)=口の中に唾液が広がる(無条件反射※3) ベルの音(条件刺激)=口の中に唾液が広がる(無条件反射)という感じになります。

(※1)条件刺激=何の意味を持たない音や物など (※2)無条件刺激=食べ物など直接的なもの (※3)無条件反射=無条件刺激に対する体の反応

この古典的条件付けは人でも同じです。
梅干しを見る(条件刺激)+梅干しを食べる(無条件刺激)=口の中に唾液が広がる(無条件反射) 梅干しを見る(条件刺激)=口の中に唾液が広がる(無条件反射)という感じになります。
日常的によくある例ですと、飼い主さんがビニール袋をガサガサすると犬が喜んで走り寄ってくるという事があります。ビニール袋のガサガサする音(条件刺激)を聞いた後におやつ(無条件刺激)をもらえると学習した犬は、おやつが入っていない袋のガサガサする音を聞くだけで無条件反射が起こる事があります。
また、家の鍵の音を聞いて反応することも多いと思います。出かける支度をして、鍵を持った音を聞くと犬はソワソワして後追いをして落ち着かない。このような場合、犬は「鍵の音が聞こえると飼い主さんはお出かけしてしまう」「お留守番をしなくてはならない」「飼い主さんがいなくなってしまって悲しい」と経験から学習してしまい、鍵の音を聞くと寂しくなってしまうのです。

オペラント条件付け

古典的条件付けに対してオペラント条件付けとはいったいどんなものなのでしょうか。オペラント条件付けは、犬(動物)が自発的に行動を起こすように学習させるもので、代表的な実験ではレバーを押すと餌が出てくる仕組みの箱にネズミを入れ、ネズミ自身で考えレバーを操作させるというものがあります。この実験から、「操作する」という「operate」の名前が付けられました。
オペラント条件付けは、「刺激の有無」と「行動頻度の増減」を組み合わせて4種類にわけることができます。

ポイント1

  • 何かが起こる(刺激あり)=「正」
  • 何かが消えてなくなる(刺激なし)=「負」
  • 行動頻度の増加=「強化」
  • 行動頻度の減少=「罰・弱化」

「罰」という漢字から「体罰」と勘違いされやすいということで、最近は「強化」に対して「弱化」といわれることが多くなってきました。オペラント条件付けは、犬にとって嬉しいこと・楽しいことによって行動頻度が増える(強化)と嫌なこと・不愉快なことによって行動頻度が減る(罰・弱化)が、刺激が起こる(正)もしくは刺激が消える(負)の組み合わせによって考えられます。
オペラント条件付けの表

ポイント2

「強化=褒め、罰(弱化)=叱る」と勘違いされてしまうのですが、あくまでも犬から見て嬉しかったことであるか、嫌だったことで区別します。犬が吠えている時に飼い主さんが名前で「〇〇ちゃん! ダメ!」と叱ったとします。その犬にとって、名前を呼ばれることや飼い主さんから注目してもらえることが嬉しいと感じた場合、飼い主さんが叱っているつもりでも犬にとっては褒められていることと同じで、その行動を強化することになってしまいます。

オペラント条件付けの考え方を練習

正の強化(何もしていない→何かした→嬉しいことが起きた)

例:「おいで」と呼ばれて行ったらオヤツがもらえた。
この場合「おいで」が刺激で、「行く」という行動の結果ご褒美がもらえます。「呼ばれて行く」という行動が増加したので、行動直後のご褒美が犬にとって「強化子(※1)」となり、おいでで行くという行動が「強化された」となります。

正の罰(弱化)(何もしていない→何かした→嫌なことが起きた)

例:「おいで」と呼ばれて行ったらシャンプーをされた。
「おいで」という刺激に対して、「行く」という行動の結果シャンプーをされました。「呼ばれて行く」という行動が減少したので、行動直後のシャンプーが犬にとって「罰子(※2)」となり、おいでで行くという行動が「弱化された(罰)」となります。

負の罰(弱化)(楽しいことをしていた→何かした→楽しいことが消えた)

例:ドッグランで楽しく遊んでいたら「おいで」と呼ばれて行くとリードをつけられてドッグランから出された。
「おいで」という刺激に対して、「行く」という行動の結果楽しい状態が終わってしまいました。「呼ばれて行く」という行動が減少したので、行動直後のドッグラン終了が犬にとって「罰子」となり、おいでで行くという行動が「弱化された(罰)」となります。

負の強化(嫌なことがある→何かした→嫌なことが消えた)

例:叱られていた時にお腹を出して見せたら、叱ることをやめてもらえた。
飼い主さんに叱られるという嫌な刺激に対して、「お腹を見せる」という行動をした結果、嫌な刺激から開放されました。「お腹を見せる」という行動が増加したので、行動直後に叱られている状態から開放されることが犬にとって「強化子」となり、お腹を見せるという行動が「強化された」となります。

強化子と罰子とは

女性と犬
「強化子」とは強化刺激ともいい、行動頻度を上げるために有効的な刺激のことをいいます。強化子は二つの分類に分けることができ、フードやオヤツ、おもちゃ、においを嗅ぐことなど犬が本能的に求めるものを「無条件強化子」といい、名前やクリッカーなどの音、飼い主さんが褒めてくれる声など、学習によって好きになったものを「条件強化子」といいます。
「罰子」とは嫌悪刺激ともいい、花火の音、叱られること、チョークチェーンなど実際に犬にとって嫌やなことや嫌な物のことです。
犬にとって強化子も罰子も「それが何であるか」というのは、結果を見ないと正確なことはわからないのです。ゴールデンレトリーバーなどの水が好きな犬種であれば、シャンプーは「嬉しい・楽しいこと」かもしれませんが、水が嫌いな犬にとってシャンプーは「嫌なこと」になってしまいます。愛犬にとって何が強化子で、何が罰子なのかある程度把握しておくことも大切です。

「問題行動」も犬の立場になると理由がわかる

飼い主さんが困ってしまう問題行動も、犬の立場になるとしつけ方のヒントがわかってきます。事例を挙げて考えてみましょう。

チャイムで吠える理由

犬が自宅に来てすぐはまだ何も学習をしていない状態ですので、チャイムの音に反応して吠えることは少ないと思います。時間をかけて、犬はチャイムの音を聞いたあと飼い主さんがどんな反応をするのかなど観察して学習していくからです。

チャイムで吠える時

1玄関に向かって吠える犬、2飼い主さんに向かって吠える犬の2パターンがあります。どちらも同じチャイムに吠える行為でも意味が違うのです。

1玄関に向かって吠える犬が学習した内容

犬はチャイムの音の後に知らない人、もしくは家族や友人が家にやってくると学習しています。この場合、知らない人が入ってくることを警戒して吠えているのか、それとも家族や友人を歓迎して喜んで吠えているのかによって意味も変わってきます。
吠えることで知らない人が玄関先から立ち去ったと学習した犬は、吠えれば知らない人がいなくなるので立ち去ってもらうために吠える行動が増えてしまうのです。(負の強化)
また、抱っこをすると吠え止む場合。チャイムの音の後に吠えると、飼い主さんが抱っこをしてくれるので抱っこをしてもらいたくて吠えてしまう場合もあります。(正の強化)
歓迎して吠えてしまう犬の場合も、チャイムの音で吠えると大好きな人たちが自分を可愛がってくれると学習しているので吠える行動が強化されています。(正の強化)

2飼い主さんに向かって吠える犬が学習した内容

犬はチャイムの音がすると、飼い主さんが慌ててインターホンの所や玄関へ行ってしまうと学習しています。飼い主さんの急な動きや反応を見て本能的に吠えてしまった時、飼い主さんに声をかけてもらったり抱っこしてもらえた経験がある犬に多い行動です。
チャイムの音の後に吠えることで飼い主さんに構ってもらえると学習しています。(正の強化)

飛びつきしちゃう理由

犬は嬉しくてつい飛び付いてしまったり、何かしてほしい時にピョンピョン飛び付いて要求したりすることもあります。飛び付いてしまう犬は、飛び付くことで飼い主さんが撫でてくれたり、しゃがんで相手をしてくれたり、おやつを食べさせてくれたりと日常の中で強化されてることが多いのです。お留守番から帰宅すると喜んでる飛び付いてくる犬に飼い主さんはつい「ただいまー!」と相手をしてしまったり、犬と遊ぶ時など飛び付いてくる犬におもちゃを投げてしまったりと飛び付くことでメリットを無意識のうちに与えてしまっているのです。(正の強化)

消去や消去バーストとは

「消去」とはこれまで学習した内容とは別の学習を新たに追加する手続きのことです。消去と聞くと、「スマホのデータを消去してしまった!」など完全に消し去ってしまう意味で使われることが多いと思いますが、ここでの消去とは学習した全てを消し去るのではありません。この学習理論で使われる「消去」という言葉は「強化をやめる手続き」で、消去する際に生じる過剰な要求行為等を「消去バースト」といいます。 例:飼い主さんの食事中にいつも犬におやつをあげていたとします。しかし、おやつを与えなかった時の吠えがひどくなってきてしまったので、吠えをやめさせたい時。
ここでの吠えの原因とは、飼い主さんの食事中におやつがもらえていたのに、もらえないこと。吠えの強化子はおやつなります。吠えを消去しようとすると。

  1. 食事中におやつをあげるのをやめてみます。(消去)

  2. 犬は物凄く吠えて要求をします。(消去バースト)

  3. そのままあげるのをやめていると吠える回数や頻度が徐々に減っていく

決して「吠える」行動が消し去るわけではありませんが、徐々に減っていくようになります。しかし、「消去」には「消去バースト」というリスクが発生します。犬からすると、食事中におやつをもらえることは当たり前で当然のことだったのです。それが急にルールが変更されてしまったので、意味の分からなく、不満と不安が爆発してしまい要求の吠えなどが増えたりエスカレートしたりします。
吠えをやめさせたい場合には飼い主さんが吠えの消去バーストに耐え抜く必要があります。消去バースト中に、おやつをあげてしまうと「これだけ吠えればもらえるのか」と学習してしまい、今までよりも余計に吠えがひどくなってしまいますので、消去を使う場合にはそれなりの覚悟が必要です。

犬の立場に立って考えてみる

男性を見上げる犬
専門用語がたくさん出てきて、難しく感じる所もあるかもしれませんが学習理論のコツが掴めると犬とのコミュニケーションが今まで以上に取れるようになります。「なんでこんなことするんだろう?」「どうして吠えてしまうんだろう?」「なぜ叱っているのに直らないんだろう?」という疑問も学習理論を用いて紐解いていくと原因が簡単に見えてきます。まずは、犬自身が学習した行動を客観的に理解することで様々な行動の改善などにつながるのではないでしょうか。
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