【トレーナー解説】犬のしつけに活用できる古典的条件付け・オペラント条件付けを解説
私たちの言ったことを理解できるほど賢い犬たちですが、どのように物事を理解しているのでしょうか。犬の学習方法を理解することで、より犬とのコミュニケーションが取りやすく、トレーニングが入りやすくなるでしょう。今回は、犬の学習理論である「古典的条件付け(レスポンデント条件付け)」や「オペラント条件付け」について、具体例を交えながらドッグトレーナーの西岡が解説します。
犬の学習方法は主に2種類
犬は日々、飼い主さんの何気ない行動や反応を見て学習しています。
「なぜこんなことするんだろう?」と、飼い主から見ると問題行動だったとしても、犬にすれば学習した成果といっても過言ではありません。
犬の学習の仕方は大きく分けて2つ。「古典的条件付け」と「オペラント条件付け」があります。
古典的条件付け(レスポンデント条件付け)
「古典的条件付け」とは、ある行動(反応)が、刺激の呈示により受動的に引き起こされることをいいます。有名なのが「パブロフの犬」という実験です。
犬に「ベルの音を聞かせてから食事を与える」という行動を繰り返すことによって、犬は「ベルの音=食事」と学習します。そうすると、ベルの音を聞くだけで唾液が分泌されるようになります。
オペラント条件付け
「オペラント条件付け」は、ある行動が「強化」という機能によって、能動的に学習されることをいいます。代表的な実験では、レバーを押すとごはんが出てくる仕組みの箱にネズミを入れ、ネズミ自身で考えレバーを操作させるというものがあります。
「古典的条件付け」と「オペラント条件付け」の違いは、受動的か能動的かを基準に区別されていると考えれば良いでしょう。
つまりパブロフの犬の話に続きをつけるとすれば「ベルが鳴って唾液が出る」までの部分は古典的条件付けであり、その後「飼い主に駆け寄っていってことにより食事にありつけた」のなら、ここはオペラント条件付けとなります。
「オペラント条件付け」のパターン
「オペラント条件付け」にはいくつかのパターンがあります。例をもとに考えてみてください。
強化子により強化される(行動が増える)パターン
パブロフの犬の例でいくと「行動」は飼い主に駆け寄ることです。「刺激」はベルが鳴ったことです。ベルが鳴る「刺激」があって、飼い主に駆け寄る「行動」をしたときに、犬にとって嬉しい「食事」が出てきたことが学習されています。なので、次回ベルが鳴ればまた犬は駆け寄るでしょう。
このように嬉しかったことは「強化子」と呼ばれます。つまりこのパターンを整理すると以下のようになります。
刺激:ベルが鳴る
行動:飼い主に駆け寄る
強化子:食事がもらえる
→また駆け寄る(強化された)
罰子により弱化される(行動が減る)パターン
では、これがもし、ベルが鳴り、駆け寄った時に、犬が嫌いなシャンプーをされたとします。この犬はシャンプーが嫌いなので、次にベルが鳴っても、行かないようにしようと学習します。
このように、犬にとって嫌悪感を感じることを「罰子」と呼びます。つまりこのパターンを整理すると以下のようになります。
刺激:ベルが鳴る
行動:飼い主に駆け寄る
罰子:シャンプーをされる
→もう駆け寄らない(弱化された)
オペラント条件づけのパターン練習
では、次の例はどんなパターンなのか考えてみましょう。「飼い主に叱られていた時に、お腹を出したら、叱るのをやめてもらえた。」
これまでは「食事がもらえる」や「シャンプーをされる」など追加で何かが起きてきましたが、今度は「叱られる」というすでに起きていることが「減った」わけです。
「犬が嫌だと思うことが減ったこと」も、食事と同じように犬にとって嬉しいことであり「強化子」と捉えて正解です。つまり、整理すると以下のようになります。
刺激:飼い主に叱られた
行動:お腹をみせた
強化子:飼い主が叱るのをやめた
→またお腹を見せる(強化された)
では、もしこの犬が「叱れることは、かまってもらえることで嬉しい!」と感じていたなら、どうなるでしょうか?
刺激:飼い主に叱られた
行動:お腹をみせた
強化子:飼い主が叱るのをやめた
→もうお腹は見せない(弱化された)
犬にとって嬉しいことは強化子となり行動は「強化」され、犬にとって嫌なことは「罰子」となり行動は「弱化」されます。その犬にとって「嬉しいのか」「嫌なのか」がポイントです。
強化子と罰子とは
強化子とは
「強化子」とは行動頻度を上げるために有効的な刺激のことをいいます。強化子は2つに分類することができ、フードやオヤツ、おもちゃ、においを嗅ぐことなど犬が本能的に求めるものを「無条件強化子」といい、名前やクリッカーなどの音、飼い主さんが褒めてくれる声など、学習によって好きになったものを「条件強化子」といいます。
罰子とは
「罰子」とは嫌悪刺激ともいい「雷」や「花火の音」「叱られること」「チョークチェーン」など実際に犬にとって嫌なことや嫌なもののことです。犬にとって強化子も罰子も「それが何であるか」というのは、結果を見ないと正確なことはわかりません。
ゴールデンレトリーバーなどの水が好きな犬種であれば、シャンプーは「嬉しい・楽しいこと」かもしれませんが、水が嫌いな犬にとってシャンプーは「嫌なこと」になります。
愛犬にとって何が強化子で、何が罰子なのかある程度把握しておくことが大切です。
「問題行動」も犬の立場になると理由がわかる
飼い主が困る問題行動も、犬の気持ちを考え、行動の理由を探るとしつけ方のヒントがわかってきます。例えば、チャイムの音に吠える犬について考えてみましょう。
チャイム音で玄関に向かって吠える場合
<考えられる理由>
犬はチャイムの音の後に知らない人、もしくは家族や友人が家にやってくると学習しているでしょう。この場合、知らない人が入ってくることを警戒して吠えているのか、それとも家族や友人を歓迎して喜んで吠えているのかどちらかでしょう。
いずれにしても、吠えることで知らない人が玄関先から立ち去る、もしくは、吠えると大好きな人たちが自分を可愛がってくれると学習しているのであれば、吠える行動は強化されます。
<しつけ方法>
いずれの場合においても、しつけの方法としては「チャイムが鳴っても、何も起こらない」ことを学習してもらうしかありません。家にいるときにあえて、何度もチャイムを鳴らし、鳴っても誰もこないことを学習させると良いでしょう。
チャイム音で飼い主に向かって吠える場合
<考えられる理由>
犬はチャイムの音がすると、飼い主が慌ててインターホンの所や玄関へ行くと学習しているでしょう。飼い主さんの急な動きや反応を見て本能的に吠えてしまったとき、飼い主さんに声をかけてもらったり抱っこしたりしてもらえた経験がある犬に多い行動です。
チャイムの音の後に吠えることで、飼い主さんにかまってもらえると学習していることで、強化されていると考えられます。
<しつけ方法>
吠えられても、愛犬を抱きかかえたり、アイコンタクトをとったりせず、犬に何もしないことを繰り返すことで、吠えても何もしてもらえないと学習してもらいましょう。消去や消去バーストとは
上記のように、これまで犬の行動によって起きていた強化子を消すことを「消去」といいます。つまり、これまで学習した内容とは別の学習を新たに追加する手続きのことです。
「消去」が表す「強化をやめる手続き」によって生じる、過剰な要求行為等を「消去バースト」といいます。
例えば、先程の例でいえば、チャイムが鳴って何も起きない場合、吠えがひどくなることがあるでしょう。これが消去バーストです。
この「消去バースト」に耐え抜いた時、吠える行動は徐々に減っていくでしょう。
しつけの途中で「消去バースト」によりエスカレートすることもありますので、消去を使う場合にはそれなりの覚悟が必要です。
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犬の立場に立って考えてみる
専門用語がたくさん出てきて、難しく感じる所もあるかもしれませんが学習理論のコツが掴めると犬とのコミュニケーションが今まで以上に取れるようになります。
「なぜこんなことするんだろう?」という疑問も、学習理論を用いて紐解いていくと原因が簡単に見えてきます。
まずは、犬自身が学習した行動を客観的に理解することで、さまざまな行動の改善などにつながるのではないでしょうか?
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