猫のいびきがうるさい?考えられる原因や治療法などを獣医師が解説

猫のいびきがうるさい?考えられる原因や治療法などを獣医師が解説

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猫ちゃんは基本的には鼻呼吸でガス交換をしています。いびきはこの呼吸が妨げられている可能性もあります。人間の場合だと、放置しがちですが急に愛猫がグーグーいびきをかきながら熟睡していたら、不安になりますよね。今回は猫のいびきについて、どのようなものがあるかなど獣医師の福地がご紹介します。

症状 いびき
原因 短頭種気道症候群(短頭種の場合)、鼻咽頭ポリープ、鼻炎、異物、腫瘍などが考えられます。
危険ないびき 起きている時からズーズーといった異音が混じった呼吸をしていたり、寝ているときもずっとはっきりとしたいびきをしていたり、急に大きないびきになった場合は受診をおすすめします。
危険度 無害な場合もありますが、病的ないびきの場合、猫の生活の質を著しく低下させてしまいます。状態によっては命をも脅かす可能性があります。

猫のいびきのメカニズム

猫

いびきは鼻と口腔の続きである咽頭(のど)の部分で、空気が振動することで起こります。この空気の振動は咽頭を構成している何らかの物体によって空気の流れが乱れて振動し、音として聞こえるようになります。

また、呼吸に合わせて聞こえる音の中には呼吸器の病気によって引き起こされている場合もあるので注意が必要です。

猫のいびきの原因

猫

急に愛猫がいびきをかいた場合、原因として以下の5点が考えられます。

  • 短頭種気道症候群(短頭種の場合)
  • 鼻咽頭ポリープ
  • 鼻炎
  • 異物
  • 腫瘍

短頭種気道症候群(短頭種の場合)

「スコティッシュフォールド」や「ペルシャ猫」「ヒマラヤン」「エキゾチックショートヘア」など、鼻が潰れ気味の短頭種の猫ちゃんでは鼻の穴が小さかったり、咽頭を構成する一部である軟口蓋(人間でいうのどちんこ)が通常よりも長い場合があります。

この軟口蓋は食べ物が気管にいかないようにする作用がありますが、長すぎると空気が気管の一部を塞ぐようになってしまいます。

このため短頭種の猫ちゃんでは寝ているときのいびきの他に呼吸のときに普段から「ガーガー」という音が聞こえたりします。興奮や室温が高いときには体の酸素がたくさん消費されるため、この呼吸しづらそうな症状も悪化します。

鼻咽頭ポリープ

若い猫で多くみられる腫瘤です。猫ちゃんの耳管や中耳のあたりで発生して鼻咽頭や外耳道に向かって大きくなってきます。

ポリープが鼻咽頭で大きくなると、空気の流れも妨げられるために「ズーズー」といったいびきのような呼吸の音がしたり、寝ているときも大きないびきをしたりします。

サラサラの鼻水から緑っぽい色の鼻水がみられることも多いです。兄弟姉妹の子猫に発生することも多く、遺伝性の病気の可能性があると考えられています。


鼻炎

「猫カリシウイルス感染症」や「猫ヘルペスウイルス」などの「猫風邪」を引き起こすウイルス感染症では鼻腔に炎症を起こし大量の鼻水を発生させるため呼吸を阻害していびきや呼吸の時に「ズーズー」という音が聞こえるようになります。


異物

草、骨、草木のとげなどを鼻に吸い込んでしまっているときにも「ゲーゲー」などの呼吸音が聞こえるようになります。

腫瘍

高齢の猫ちゃんでは腫瘍の発生率も上がってきます。リンパ腫や扁平上皮癌などが鼻腔にできるといびきや普段から呼吸音が聞こえるようになります。

無害ないびきと危険ないびき

猫

いびきをかいているからといって、必ずしも病気が疑われるわけではありません。無害ないびきと、危険ないびきをそれぞれ紹介しますので、ご自宅の猫ちゃんのいびきがどちらに近いかで、動物病院での受診を検討してください。

無害ないびき

起きているときは呼吸の音はほとんどせず、静かな場所で寝ている猫ちゃんに耳を近づけて「ピーピー」や「プープー」、あるいは「クークー」や「スピースピー」など、小さく高い音のいびきでぐっすり寝ているようであれば寝息の範囲と考えられます。

危険ないびき

起きている時からズーズー、ブーブー、ガーガー、あるいはヒーヒーといった呼吸をしていたり、寝ているときもずっとはっきりとしたいびきをしているときは上述した病気による症状の一つの可能性があります。

いつもは小さな寝息程度の呼吸音しかしないのに急にはっきりとした大きないびきになったとき「くしゃみ」「咳」「開口呼吸」が見られる際は呼吸が妨げられているサインで、治療が必要になるかもしれないので、受診をおすすめします。


猫のいびきの治療法

猫

原因によって、治療法は変わります。

短頭種気道症候群

鼻を一部切開して空気の通りをよくするほか、軟口蓋(喉ちんこ)を短くする手術を行います。

鼻咽頭ポリープ

ポリープを取り除くための外科手術が必要になります。

鼻炎

ウイルス感染症によるものでは消炎剤の点鼻薬を使うことがあります。細菌感染もある場合は抗菌薬の点鼻薬も使用します。

炎症が酷く長引いた場合は鼻腔の中の構造も溶けて変わってしまうことがあるため、そうした場合は外科手術をすることもあります。

異物

異物を取り除くための外科手術が必要になります。異物による傷から細菌が感染して膿瘍を作ることもあります。その時は抗菌薬で治療します。

腫瘍

抗がん剤と腫瘍を切除するための外科手術を行います。

日頃から、異変に気がつけるようにしましょう

猫

寝ていてかすかに「プープー」という音が聞こえるのは可愛らしく微笑ましいですよね。

起きているときにも空気の流れが妨げられていそうな呼吸音がしていたり、いびきが大きくはっきりと聞こえたりするときは、今回紹介したような呼吸器疾患の恐れがあります。

普段から寝ている時や起きている時の呼吸の様子を注意してみてげると変化にも気づきやすくなります。


参考文献