猫の巨大結腸症|症状・原因・治療法を獣医師が解説

猫の巨大結腸症|症状・原因・治療法を獣医師が解説

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猫の巨大結腸症は、慢性的な便秘や神経の異常などによって便が結腸(大腸)に溜まり、重度の便秘によって結腸が肥大化してしまった状態のことです。治療が難しい場合は手術で結腸を切除します。症状や原因について、獣医師の佐藤が解説します。

猫の巨大結腸症とは

太った猫

結腸とは大腸の一部で、小腸で消化できなかった食物繊維が腸内細菌のエサになったり、水分を吸収して便を作ったりする場所です。その結腸が何らかの原因で膨張し、排便困難になった状態を巨大結腸症と呼びます。原因不明であることが少なくありません。

治療は便を柔らかくする薬の使用や食事療法などを行いますが、慢性化して便秘の解消が難しい場合は結腸の切除手術を行います。

巨大結腸症になりやすい猫種

巨大結腸症は犬ではまれですが、猫では起こりやすい症状です。年齢や性別、猫種に限らずどの猫でも起こる可能性がありますが、シニア猫(老猫)で起きやすい傾向があります。

ちなみに日本ではあまり見られない品種ですが、マンクスという猫は遺伝的に便秘になりやすいとされ、巨大結腸症にもなりやすい猫種と言えます。


猫の巨大結腸症の症状

猫

巨大結腸症は便秘が主な症状です。便秘が悪化することで、以下のような症状も見られるようになります。

  • 食欲不振
  • 血便(鮮血)
  • トイレの回数が増える
  • しぶり(排便姿勢を繰り返す)
  • 嘔吐
  • 体重減少
  • 元気がなくなる、動かなくなる
  • イライラする、大きな声で鳴く

猫の巨大結腸症の原因

猫

巨大結腸症はさまざまな原因によって起こりますが、便秘が大きく関係しています。原因として考えられるのは以下の通りです。

  • 慢性の便秘
  • 水分の摂取不足・脱水
  • 繊維質の少ない食事
  • 腸管内異物
  • 下半身麻痺
  • 骨折や腫瘍による骨盤狭窄
  • 結腸の神経異常
  • 会陰ヘルニア
  • 薬の副作用

猫の巨大結腸症の治療法

猫

巨大結腸症の治療はまず内科治療でアプローチし、改善が見込めない場合は外科治療に移行します。

巨大結腸症の内科治療

巨大結腸症の場合、お腹の触診に加えてレントゲン(X線)検査による画像診断で結腸の状態、便の量などを確認することができます。この際に骨折や腫瘍などの原因を発見できるかもしれません。

便秘が骨折や腫瘍によって引き起こされている場合(続発性巨大結腸症)は、それらを治療することで改善に向かいます。ただ、猫の巨大結腸症の多くは原因不明(特発性巨大結腸症)です。

内科治療では以下のような治療を状況に応じて選択します。

  • 便を柔らかくする薬や消化管の動きを促進する薬の使用
  • 腹部のマッサージ
  • 便の摘出
  • 浣腸
  • 点滴
  • 食事療法(高繊維食)
  • ​​

慢性的な便秘では定期的に動物病院へ来ていただき、便を摘出する必要があります。改善に向かえばいいのですが、薬の効きが悪くなり、腸の機能も低下してしまった場合は外科治療へ移行します。

巨大結腸症の外科治療

外科治療では、結腸を切り取る手術(結腸切除術)を行います。結腸の大部分を切除することになるため生涯にわたって軟便になってしまうこともありますが、時間とともに通常の排便に落ち着くことも少なくありません。

猫の巨大結腸症の予防法

PETOKOTO FOODS

巨大結腸症は便秘が主な原因となりますので、便秘の予防が巨大結腸症の予防につながります。以下のような点に注意していただくといいでしょう。

  1. 水分摂取
  2. 食物繊維
  3. ビオフェルミン
  4. ヨーグルト
  5. オリーブオイル

1. 水分摂取

水分摂取が苦手な子であれば、「水が飲める場所を増やす」「ドライフードをウェットフードに変える」といったことを試してみてください。鶏のササミを煮出したスープを水代わりにしたり、ごはんにトッピングしたりするのもいいでしょう。

2. 食物繊維

軽度の便秘であれば食物繊維の摂取が有効です。カボチャやサツマイモ、炊いたお米などをいつものごはんにトッピングしてあげるといいでしょう。

注意点は食物繊維の種類です。食物繊維は水に溶けやすい水溶性と溶けにくい不溶性に分けることができます。不溶性は腸の運動を活発にして便の流れを良くしますが、便に含まれかさ増しする効果もあるため便秘の場合は余計に便の動きを悪くしてしまう(詰まりを悪化させてしまう)可能性があります。

水溶性は水分を含んでゲル状になる性質があるため、固まった便に潤いを与える効果があります。猫が食べられる食材で水溶性の食物繊維を多く含むものは、海苔が挙げられます。海苔はミネラルを多く含むため与え過ぎもよくありませんが、おやつとして少量を与えるのはいいでしょう。いずれにしても獣医師に相談しながら与えることをお勧めします。


3. ビオフェルミン

腸内環境が悪くなること便秘につながりますし、便秘になると悪玉菌が増えて腸内環境が悪くなります。猫用の乳酸菌製剤が販売されていますので、それを整腸剤として飲ませるといいでしょう。

人間用のものであればビオフェルミンR(耐性乳酸菌整腸剤)、ビオフェルミンSを1日2回飲ませても大丈夫です。1回あたり1/4錠を目安にしてください。

4. ヨーグルト

ヨーグルトにも乳酸菌が含まれますが、効果は限定されるかもしれません。正常なときに予防や健康維持を目的として与えるのがいいでしょう。

5. オリーブオイル

オリーブオイルに含まれるオレイン酸は、腸のぜん動運動を促進してくれます。また、潤滑油として便の流れを良くする効果も期待できます。普段のごはんにトッピングしてあげるといいでしょう。

綿棒の使用は要注意

生後1〜2週間の子猫であれば濡らした綿棒で肛門を軽くつつくことで、排便を促すことができます。ただし、肛門の中まで入れるのは危険ですのでやめましょう。生後2週間を過ぎた猫にもオススメできません。

まとめ

猫
巨大結腸症は便秘が主な原因
内科治療で難しいと切除手術の場合も
便秘予防が巨大結腸症の予防になる
巨大結腸症は犬では珍しく猫ではよく見られます。原因不明であることが少なくありませんが、便秘が関係していることが多く、便秘の予防が巨大結腸症の予防につながります。普段から水分量や食物繊維の多い食事を与えるなど、猫ちゃんのお腹の中が活発になるようにケアしてあげてください。