犬の描き方をプロが解説! 骨格を意識したデッサン手法から、顔の特徴を出すコツまで
犬の絵を描くのは簡単そうで、意外と難しいもの。でも、ポイントを押さえれば簡単にかわいいワンちゃんの絵を描くことができるようになります。ちょっとしたメモの挿絵に描いてみるだけで一気に可愛い雰囲気が出ますし、愛犬のグッズに名前と一緒に描けば、個性が出てより愛着がわきますよね。今回は、誰でも習得できる犬の描き方を、スペイン在住デザイナーの関根が紹介します。
デッサン手法を使った犬の描き方
絵の描き方に、「絶対にこう描かなければいけない」という正解はありません。犬の絵を描く際も、例えば「輪郭から捉える描き方」もあるのですが、今回はより実用的でいろいろなポーズに応用が効く描き方として、「骨格を意識した描き方」を紹介します。骨格を意識して犬を描く
まず、下の図は犬の骨格を横から見たものです。犬の骨格を大まかに捉えると以下のようになります。
黄色と青色、赤色の3色を使って、犬の体を大きく頭、胸、腰の3箇所に分けています。そして胸の部分には前足、腰の部分には後ろ足が付け加えてあります。犬の絵を描く際に覚えておきたい基本の構造はこれだけです。この構造をガイドラインとして、そこに肉付けしていくイメージで描いていきます。
犬は小型犬や大型犬などサイズの違いや犬種の違いによって細かい描き方が変わってきますが、基本は同じです。今回は日本でお馴染みの中型犬として、柴犬を例に紹介します。イメージしやすいように、最初に完成形をお見せしておきますね。少し斜めの角度で正面を向いて座っている柴犬君です。
1. 頭、胸、腰の位置を決める
それでは、座っている柴犬を描いてみましょう。まずは頭、胸、腰の位置を決めるところからです。こちらを見て座っているということは、頭と胸が手前に、腰は後ろに配置されることになりますよね。このとき真横から見た配置よりも遠近感が生まれるように、頭を少し大き目に描くのがうまく描くコツです。2. 前足と後ろ足の位置を決める
続いて先ほどの骨格と同じになるように、胸に前足を、腰に後ろ足を描き加えます。これが土台になりますので、バランス良く配置されているかでこの後の完成度が大きく変わってきます。3. 耳と顔のガイドラインを描く
うまくできたら、次は頭の部分に耳と顔を描き込む際のガイドラインとなる線を追加していきます。顔の描き方については、後ほどもう少し丁寧に解説します。4. ガイドラインに沿って輪郭を描く
そろそろ犬っぽさが出てきて、完成形がイメージしやすくなったと思います。ここまでできたら、骨格やパーツのガイドラインをなぞるようにして滑らかな曲線で輪郭を描いていきます。白紙の状態からいきなり描き始めると、どこかのパーツが大き過ぎたり、小さ過ぎたりしてしまいがちです。ガイドラインがあることで、バランスを崩すこと無く輪郭を描くことができるようになります。
5. 表情や細かい特徴を描いて完成
輪郭ができたら、最後に表情や尻尾の特徴など細かい部分を描き込んで完成です。犬が正面を向いた顔の描き方
骨格を意識することで犬の全身をバランス良く描けるようになったと思います。続いては、顔のディテールです。愛犬の顔の特徴を表現したいけど、絵にすると実物よりも温和な雰囲気が欠けてしまったり、勇ましさが足りなくなってしまったり、特徴をうまく表現するのが難しいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。犬の顔を描く時も、全身の時と同じようにパーツを意識して描いてみてください。下の図は、犬のパーツの位置を変えて描いたものです。表情が違って見えるはずです。
どこが違うか分かりますでしょうか。左と右で異なる点は、青い線と赤い線の長さです。青い線は目からマズルの付け根までの距離、赤い線はマズルの長さを意味しています。黄色く横に入っている線は目の位置、そして目と目の間の距離を表しています。
左のイラストは、青と赤の線が短く目の距離が離れているため、屈託がなくおっとりした印象を受けると思います。
右のイラストは、青と赤の線が長く、目の距離が近いため、利発で聡明な印象を受けると思います。
子犬と成犬を描き分けるコツ
絵で「子どもらしさ」「大人らしさ」を表現する場合、人なら髪型や化粧やヒゲ、メガネなどで表現することもできますが、犬の場合はそういったパーツに限りがありますので、悩みどころだと思います。そこで犬の場合は目の大きさと顔の重心を変えることで、子犬と成犬の描き分けが可能になります。下の図は、左右で重心と目の大きさを変えたものです。
左のイラストは、目が大きく、パーツの重心が顔の下の方にあります。さらに顔のパーツを横長の楕円の中に収める配置にすることで、額を広く見せ、童顔や子犬の特徴を表現することができます。
右のイラストは、目が小さく、パーツの重心が上の方にあります。左とは反対に、縦長の楕円の中にパーツを収める配置にすることで、額を狭く見せ、大人な雰囲気を表現することができます。
目の描き分けやふさふさ感の出し方
コツさえつかむことができれば、単なる丸の中に目と鼻を入れていくだけでも表情を描き分けていくことができます。下の図の上段では、目と目の離れ具合、目尻の向きで「おっとりした感じ」と「キリッとした感じ」の印象が異なっていると思います。下段では、毛並みのニュアンスを出すために、土台の線から垂直方向に毛を描いています。表情との組み合わせで「ふわふわとした柔らかい感じ」と「ヤンチャな感じ」の印象が異なっていると思います。
このように、それぞれの特徴を組み合わせていくことによって簡単に描きたい犬像のイラストに近付けることができます。
愛犬をよく見て、特徴をとらえる
今回は柴犬を例にして解説しましたが、基本はどの犬種も同じです。3点の部位からなる体の構造と、いつも豊かな表現で楽しませてくれる愛犬の表情。もっとじっくり観察してみたら、今まで気が付かなかった新たな表情が発見できるかもしれません。ぜひこの機会に、新しい視点で愛犬をイラストにしてみてはいかがでしょうか。