【獣医師執筆】猫がイカを食べるのはNG!理由や食べた場合の対処法を解説

【獣医師執筆】猫がイカを食べるのはNG!理由や食べた場合の対処法を解説

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「猫がイカを食べると腰を抜かす」という話を聞いたことがある方もいると思いますが、生のイカに含まれるチアミナーゼがビタミンB1欠乏症を引き起こしてしまうためです。生で食べてはいけない理由や与える際の注意点を解説します。

猫にイカを与えてはいけない理由

イカ刺し

猫がイカを食べるときの注意点はいくつかありますが、特に注意が必要なのは生のイカを食べたことによって起こる「ビタミンB1(チアミン)欠乏症」です。

ビタミンB1欠乏症の危険

生のイカにはビタミンB1の分解酵素チアミナーゼが含まれるため、「ビタミンB1欠乏症」になり、後ろ足のふらつきなど神経症状が起こります。それが「猫がイカを食べると腰を抜かす」と言われる理由です。チアミナーゼは熱に弱く、加熱したイカであればビタミンB1欠乏症の心配はありません。

ビタミンB1欠乏症の症状と対処法

初期症状では食欲低下やよだれが多くなり、その後けいれん発作や運動機能障害につながっていきます。適切な治療を行えば1日程度で回復が見込めますが、重症な伸筋硬直や昏睡状態になっても治療が行われなかった場合は48時間以内に死に至る可能性が高いとされています。ビタミンB1欠乏症は人間では「脚気」(かっけ)と呼ばれ、白米だけでビタミンが不足する食事をしていた江戸時代には多くの死者が出たそうです。

※参照:左向敏紀、大島誠之助(2014)「禁忌食(その4)魚介類(チアミナーゼ)」ペット栄養学会誌,17(1):44-45、「脚気の発生」(農林水産省)

寄生虫「アニサキス」

アニサキスは、サバやイワシ、カツオ、鮭、イカ、サンマ、アジなどの魚介類の内臓に寄生します。鮮度が落ちると内臓から筋肉に移動してしまうため、口にしてしまう可能性があります。人間だと嘔吐や激しい痛みを伴い、犬や猫にも同様の症状を起こす可能性があります。アニサキスは熱に弱いので、加熱すれば死滅します。

猫が生のイカを食べてしまった時の対処法

ビタミンB1欠乏症は長期的に偏った食生活を続けることで起こるものであり、間違って猫が生のイカを食べてしまったとしてもすぐ問題になることはありません。ただし、どのくらいの量・期間が重篤な症状に発展するのかは個々の体質によって異なります。

大量に食べてしまった場合やいつもと違う様子が見られる場合は、飼い主さんの判断で様子見をせず、必ず動物病院に連絡をして指示を仰ぐようにしてください。猫は自分の異常を隠す習性がありますので、飼い主さんが見てわかるほどの異変は緊急度が高い可能性があります。

猫にイカを与える際の注意点

イカ

食物アレルギー

魚介類も食物アレルギーを引き起こす可能性があります。初めて与える際は少量にして、アレルギー症状が出ないか注意しましょう。アレルギーが疑われるのは以下のような症状です。
  • 下痢や軟便
  • 嘔吐
  • 発熱
  • 元気がない

黄色脂肪症(イエローファット)

イカには、魚同様DHAやEPAなど多くの不飽和脂肪酸が含まれおり、与えすぎると黄色脂肪症を引き起こしてしまう可能性があります。黄色脂肪症とは、猫の腹部などの皮下脂肪が酸化し炎症を起こす病気です。猫が腹部を触られることを嫌がったり、歩き方がおかしかったりするときは病院に連れて行きましょう。

人間用の加工品はNG

「あたりめ」(するめ)や「さきいか」は加熱してあっても消化しやすいものではなく、人向けの味付けがされていて、塩分など多いことがあるので与えないようにしましょう。

まとめ

猫

生のイカはビタミンB1欠乏症やアニサキスの危険があるため与えない
加熱してあってもアレルギーや与えすぎ、人向けの味付けには注意

生のイカにはビタミンB1欠乏症のリスクがありますので、イカ刺しなど欲しがっても与えないようにしてください。ただし、イカには猫にとって大切なアミノ酸タウリンが豊富に含まれ、イカの成分を使ったキャットフードやおやつであれば、安心して食べさせることができます。

参考文献


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