
キャットフードの正しい選び方を栄養管理士が解説【獣医師監修】
キャットフードの選び方として「総合栄養食を選ぶ」「ウェットフードを選ぶ」「愛猫に合ったごはんを選ぶ」「原材料表示をチェックする」「誰のためのフードかを知る」といったポイントがあります。佐藤獣医師監修のもと、ペット栄養管理士が各ポイントを詳しく解説します。
1. 総合栄養食を選ぶ

フード選びの基本中の基本は「総合栄養食」を選ぶことです。総合栄養食とは「それだけを食べ続ければ栄養の過不足が起こらないごはん」で、一般的にはAAFCOというアメリカの団体が策定した栄養基準に準拠したごはんのことを指します。
総合栄養食の他には「一般食」や「療法食」があり、一般食は主におやつのことで、副食や間食、栄養補完食などと表記されることもあります。栄養バランスには偏りがあるため、主食として毎日のごはんにすることはできません。
療法食は病気のケアを目的としたもので、ダイエットや消化器ケア、腎臓ケア、結石予防などがあります。何かしらの栄養を制限しているごはんですので基本的に総合栄養食ではありません。獣医師の指示に従って与えるようにしましょう。
2. ドライフードよりウェットフード

総合栄養食は水分量の違いでドライフードやウェットフードなどの種類があります。ドライフードは飼い主さんの利便性を高めるために開発されたものですが、猫の健康を考えるならウェットフードのほうがより適切です。
猫の祖先は砂漠で暮らしていたリビアヤマネコだと言われています。リビアヤマネコは乾燥した環境で生きていくため、尿の排出を抑えて体内の水分でやり繰りする仕組みを持っていました。その名残りから、猫は犬に比べて水分補給がおろそかになりがちです。
腎臓病や膀胱炎、結石などのリスクを減らすためにも、猫には積極的に水分補給をしてもらわないといけません。ウェットフードなら食事をするだけで水分補給ができますし、水だけを飲むより食事から摂った水分のほうが吸収率が高いことが分かっています。
実際、ウェットフードよりドライフードのほうがシュウ酸カルシウム結石の発症リスクが3倍も高かったという調査結果もあります。猫に長生きしてもらうために、できればドライではなくウェットタイプのごはんを選んでいただければと思います。
※参照︰「小動物の臨床栄養学 第5版」
3. 愛猫に合ったごはんを選ぶ

猫のごはんはウェットフードがお薦めと書きましたが、ドライしか食べない子にウェットだけを与え、何も食べないとなったら本末転倒です。特に猫は食べないと決めたら体を壊すまで我慢してしまう傾向があります。好みも含めて愛猫に合ったごはんを選ぶのは大切なことです。
その上で、総合栄養食もさまざまな種類がありますので愛猫に合ったごはんを選ぶようにしてください。例えば年齢別に子猫のごはん、シニア猫(老猫)のごはん、猫種ごとに作られたごはんもあります。
アレルギー症状が出る子はアレルゲンを含む食材を避けましょう。よく、「アレルギー検査を受けて陽性だった食材は食べてはいけない」と考える飼い主さんがいますが、症状が出ていなければ食べて問題ありません。間違って食の選択肢を狭めてしまわないように、ご注意ください。
なお、「美味しそうに食べるから愛猫に合っている」と考えるのは注意が必要です。「美味しい」と「体に良い」は、イコールとは限りません(体に悪いものほど美味しいですよね……)。猫も「美味しい」を優先させてしまう子のほうが多いと思いますので、まずは「飼い主さんが体に良いごはんを選ぶ」、その中で「猫が美味しいと思うごはんを見つける」というのが正しいごはん選びの順番です。
4. 原材料表示をチェックする

体に良いごはんと言われても、どの商品も「体に良いごはん」として売られているはずですから、何を見て良い・悪いを判断すればいいのか迷われる方も多いでしょう。判断基準の一つとして「原材料表示のチェック」が挙げられます。
4-1. 主原料は肉類か
猫は肉食動物ですから、雑食の人間や犬より多くのタンパク質を摂る必要があります。ですから、まずは原材料の最初に書かれている材料が肉かどうかを確認しましょう。猫にとっても炭水化物は大事なエネルギー源ではありますが、肉より優先順位が高くなることはありません。原材料表示は基本的に含む量が多い順に書かれていますので、最初にトウモロコシや小麦粉などの炭水化物が書かれているものは避け、チキン、ビーフ、フィッシュのような肉や魚が書かれているものを選びましょう。
4-2. ◯◯ミールが使われていないか
原材料の最初に肉や魚が書かれていたとしても、「チキンミール」のように「◯◯ミール」と書かれているものはお薦めしません。ミールとは肉骨粉のことで、文字通り肉や骨をごちゃ混ぜにして粉末にしたものです。家畜のエサとしてよく利用されます。ミールは絶対に体に悪いということではありませんし、安い飼料を作ると考えれば価値のあるものと言えます。しかし、問題は何がごちゃ混ぜになっているかわからないところにあります。家族が食べるごはんですから、飼い主さんが「これなら安心して食べさせられる」と自信を持って言えるごはんを選んであげましょう。
4-3. 余計な添加物が使われていないか
添加物は体に悪いというイメージを持たれがちですが、添加物のお陰で食中毒にならずに済んでいるという事実も忘れてはいけません。添加物を考える上で重要なのは「なぜその添加物は使われているのか」という「添加する目的」です。ドライフードに酸化防止剤は必要でしょうし、ウェットフードに保存料は必要でしょう。でも、「ウェットフードなら酸化防止剤は必要ない」とも言えますし、「冷凍されたウェットフードなら保存料は必要ない」とも言えます。
安いフードには「着色料」が使われていることがありますが、それは猫ではなく人が見て楽しむために添加されています。「香料」や「動物性油脂」は食いつきを良くするために添加されますが、「香り付けでもしなければ食べてもらえない」とも言えるのです。
5. 誰のためのキャットフードか

着色料は人のために添加されていると書きましたが、残念ながらキャットフードの中には同じように「猫のため」ではなく、売ることが一番の目的になっているものもあります。そういったフードを選ばないようにするためにも、以下の点に注意するといいでしょう。
- どんな会社が作っているか
- 専門家がレシピを作っているか
- どんな食材・添加物が使われているか
- 科学的に正しいことを伝えているか
5-1. どんな会社が作っているか
販売サイトや商品サイトにはいろいろな「良いこと」が書かれていると思いますが、なぜそんなことを言っているのか目的を知るためにも、それを書いているのがどんな会社なのか、メーカーサイトを確認することが大事です。猫愛が伝わってくる会社が作るごはんのほうが安心できますよね。5-2. 専門家がレシピを作っているか
よく「獣医師監修」と書かれていることがありますが、獣医師はあくまで動物のお医者さんですので、「獣医師=栄養学の専門家」とは限りません。獣医師であれば「獣医栄養学専門医」など栄養学の専門家であることを証明する資格を持っている人がレシピを作っているかを確認しましょう。5-3. どんな食材・添加物が使われているか
原材料表示や商品サイトなどを見て、どんな食材が使われているか、どんな添加物が使われているかを確認しましょう。そういった情報を分かりやすく伝える姿勢を持っているかも大事なポイントです。5-4. 正しいことを伝えているか
専門家がレシピを作っていたとしても、メーカーは売ることを一番の目的にして飼い主さんの不安を煽ったり、科学的な根拠もないのにもっともらしく伝えたりする場合があります。最近だと「グレインフリーフード」が良い例です。グレインフリーフードは、穀物にアレルギーのある子には有効ですが、グレインフリーだから猫の体に良いという科学的な根拠はありません。それなのにすべての猫に良いと思わせるような売り方をしていたら、猫のことを一番に考えているメーカーとは言えないでしょう。
まとめ

総合栄養食を選ぶ
ウェットフードを選ぶ
愛猫に合ったごはんを選ぶ
原材料表示をチェックする
誰のためのフードかを知る
気になることがあれば専門家に聞いてみよう!

InstagramのPETOKOTO FOODSアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛犬のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。
アカウントをフォローする
関連記事