犬の大腸炎とは? 症状や原因、治療法などを獣医師が解説

何らかの原因によって大腸に炎症が起こることを「大腸炎」といいます。便に真っ赤な血やゼリー状のものがついている便が見られるときは、大腸炎の疑いがあります。不慣れな食べ物や異物の摂取、ストレス、寄生虫感染や細菌感染など原因はさまざまです。今回は犬の大腸炎の主な原因や症状、治療について獣医師の小泉が解説します。

病名 大腸炎
症状 下痢、ゼリー状の粘膜がついた便、血便など
原因 食べた物やストレス、細菌感染などさまざま
危険度 中。すぐに命にかかわる病気ではありませんが、体力のない子犬や老犬には注意が必要です。

犬の大腸炎の症状

上目遣いする犬

大腸炎の主な症状は下痢です。大腸性下痢の特徴として以下の項目が挙げられます。

  • 便の量はいつもと同じくらい、もしくは軽度に増加する
  • 便の回数はいつもの3倍以上に増加する
  • しぶり(便がでないのに排便姿勢をとる)や便失禁がみられることもある
  • ゼリー状の粘膜が便に付着する
  • 血液が出る場合、赤い鮮血が見られる
  • 嘔吐がみられる場合もある
  • 食欲は変化がないことが多いものの、重症な場合は減少する

一時的な下痢や少量の血便で命にかかわるようなことはありませんが、出血が多い場合や、嘔吐や下痢が著しい場合には脱水症状などで命に関わることもあります。

特に体力のない子犬や老犬の場合、脱水症状を起こしやすいので注意しましょう。


犬の大腸炎の原因

笑顔の犬

「食べ物」や「ストレス」「細菌感染」などが原因として考えられます。

さまざまなことが原因となるため、原因の特定が困難なこともあります。具体的な例を以下に挙げてみます。

食べた物が原因の例

  • 誤食、食中毒(おもちゃ、ゴミ等)
  • フードやおやつの食べ過ぎ
  • フードの急な変更、食べ慣れないものを与えた
  • 冷たい食べ物を過剰に与えた(氷など)

ストレスが原因の例

  • ペットホテル、トリミングなどに預けた
  • 知らない場所へ行った
  • シャンプーが嫌いな犬にシャンプーをした
  • 見知らぬ人が家に来た
  • 家の近くで工事などがあり大きな音がしている
  • 気候の変化(寒暖差、台風、雷など)

その他の原因として考えられるもの

  • ウイルス、細菌、寄生虫の感染
  • アレルギー
  • 腫瘍(直腸ポリープ、リンパ腫など)
  • 直腸内異物、毛球、外傷
  • 炎症性腸疾患

犬の大腸炎の治療法

遊びたそうなビーグル

一時的な大腸炎の場合

食べ物やストレスなどが原因と考えられる場合には、体力のある成犬ならば半日程度、絶食し、腸を休ませます

その後、いつも食べているドライフードをふやかしたものや、病院で処方される消化の良いフードなどを少量から与えます。

多くの場合、整腸剤や腸の粘膜を保護する薬を使用して大腸粘膜や蠕動運動の回復を図ります。

繰り返す大腸炎の場合

現状出ている症状に対する対症療法を行います。

脱水症状がみられる場合には皮下補液、検便で悪玉菌が多ければ抗生物質、寄生虫感染が見られる場合には駆虫薬を使用します。

自宅での対処法と注意点

眠そうなフレンチブルドッグ

ビオフェルミンは効果がない?

ビオフェルミンは動物用とヒト用があります。

動物用とヒト用で配合されている成分はやや異なりますが、ヒト用のビオフェルミンを犬に与えても大きな問題はありません。

大腸炎をはじめ、お腹の調子を崩している時に与えてみてもよいでしょう。しかし、あくまで整腸剤ですし、すべての下痢に効果があるものではありません

原因が寄生虫や細菌感染などの場合には、その原因を治療しなければ下痢は治りません。

下痢とともに元気がない、何度も吐いている等、他の症状が見られたり、長引いたりしている場合には、自己判断せず動物病院へ連れて行きましょう。


正露丸はNG

「下痢には正露丸を」と考える方もいるかもしれませんが、犬は正露丸に含まれる木クレオソートという成分で中毒を起こすので、絶対に与えないでください。

まとめ

顔をくっつける二匹の犬

大腸炎の原因はさまざま考えられます
大腸炎の主な症状は下痢です
子犬や老犬の場合、脱水症状を起こしやすいので要注意
下痢を繰り返したり、他の症状も見られる場合は動物病院へ

一時的な下痢ならば大きな問題は無いことが多いですが、下痢は重篤な疾患の一部として現れている場合も多くあります。

そのため、「発熱している」「ぐったりしている」「嘔吐や下痢が激しい」「一旦おさまったけれども同じ症状を繰り返す」などの症状がみられる場合、早めに動物病院を受診してください。

体力が少ない子犬や老犬の場合は、様子を見ることなく早急に動物病院へ連れて行きましょう。


参考文献

  • 岩﨑利郎, 辻本元, 長谷彦監川篤修, 日本獣医内科学アカデミー編 (2005) : 第4章 消化器疾患 1. 消化管の解剖と機能(5)大腸の解剖, 獣医内科学小動物編, p.138.
  • 岩﨑利郎, 辻本元, 長谷彦監川篤修, 日本獣医内科学アカデミー編 (2005) : 第4章 消化器疾患 2. 消化器疾患臨床徴候(7)下痢, 獣医内科学小動物編, p.141-142.
  • 『犬猫の消化管内寄生蠕虫の生態と駆除法』今井壮一
  • 松本真実 (2015): 血便の症例, CLINIC NOTE No.122, P.25.
  • 藤川真美子(2015): ミニチュア・ダックスフンドの炎症性結腸直腸ポリープ, CLINIC NOTE No.122, P.33.


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