犬の正常な耳垢とは?異常の見分け方などを獣医師が解説

犬の正常な耳垢とは?異常の見分け方などを獣医師が解説

Share!

犬の耳の中を見たことはありますか? 「耳が臭う」「耳が赤い」「耳を痛がる」「耳だれが出ている」などがない場合、あえて見ることはないと思いますが、正常を知ることで異常に気づくことができるため、健康なときこそ愛犬の耳を観察することをおすすめします。今回は犬の耳垢について獣医師の大塚が紹介します。

犬の耳垢について

柴犬

人間と同様、犬の耳の中にも排泄物(耳垢)がたまります。

正常の耳垢は白〜薄茶色、乳白色で、質感はサラサラ〜多少ベタつく程度です。臭いはなく、量も少量です。

犬がたまに見せる、顔をプルプルっと振る仕草で、耳垢が遠心力で外に出てくるようになっています。

正常・異常な犬の耳垢の見分け方

犬

正常な耳垢と異常な耳垢を見分けるためには「量」「臭い」「色」「形状」を観察します。

正常であれば、左右の耳からは同じような耳垢が同量程度出るはずです。「片方だけ色が違う」「量が多い」などの症状が見られる場合は、病気が潜んでいる可能性があります。

耳垢と一緒に耳の形状を観察することも大切です。いつもより(または、片方だけ)、「腫れている」「赤い」「熱っぽい」「痛がる」など目に見えた症状や「後肢で耳をかく」「頭をプルプルっと振る回数が多い」「耳の周囲に脱毛がある」なども犬が耳に違和感を感じているサインです。

色ごとの異常な犬の耳垢と考えられる病気

横になっている犬

こげ茶色の耳垢

マラセチアや酵母が原因の可能性が高いです。健康でも常在する酵母ですが、過剰に増えると、外耳炎を起こします。

独特な酸っぱい臭いがし、とてもベタついています。

黄色い耳垢

細菌感染を起こした結果、外耳炎となり、膿んでいる状態です。これも悪臭を放ちます。固まっている場合もあれば、ドロドロと流れ出てくること(耳だれ)もあります。

黒い耳垢

耳ダニ(耳疥癬)が原因の可能性が高いです。ダニの一種が耳の中で繁殖した場合は、黒っぽい耳垢が出ることが多いです。目を凝らしてみると、動いている耳ダニを観察することができます。


犬の耳垢を予防する耳掃除ケアについて

見上げる犬

犬の耳掃除の必要性

耳を清潔に保つことで外耳炎などの病気を予防することができるだけでなく、異常があった場合の早期発見につながります。

耳掃除の仕方については関連記事をご覧ください。


犬の耳掃除の頻度

耳掃除をし過ぎると耳の中で炎症が起きたり傷付けたりする場合がありますので、やり過ぎに注意して下さい。

頻度としては、個体差がありますが、週1回〜2週間に1回程度でかまいません。汚れていない場合は月に1回ぐらいで良いでしょう。

一般的に、垂れ耳・耳の中に耳毛が生える犬種は、通気性が悪く、細菌や酵母が繁殖しやすいため、こまめな耳掃除が必要です。

綿棒で奥の方までこするのはNG

綿棒を使って、奥の方までこするのは絶対にやめましょう

実は、犬の耳の構造は人間のそれとは少し異なり、途中で90度曲がっています。綿棒を使っても逆に汚れを中に押し込むことになってしまいます。そして、曲がった先に入った汚れはもう綿棒では取れません。

さらによく見えない範囲を綿棒でこすることは外耳道を傷つける恐れがあります。綿棒を使うとしても、目に見える範囲、耳介の部分にある耳垢に対してだけにしましょう。

愛犬がどうしても耳掃除を嫌がる場合は、動物病院に相談してください。飼い主さんと愛犬の信頼関係を崩してまで、耳掃除をする必要はありません。

まとめ

見つめる犬

正常な場合、犬の耳垢は自然に出てくる
正常な耳垢は、少量で臭いはなく、白〜薄茶色、乳白色でサラサラ〜ベタつく程度
異常な耳垢を見分ける場合は、量・臭い・色・形状を確認
耳掃除は週1回から2週間に1回程度が理想。汚れていなければ月1回でもOK
綿棒で中のほうまでいじることは絶対にNG

これからは今までよりも愛犬の耳を気にかけてもらえたらと思います。異常な耳垢を発見した際には、長引かせないためにも早めの受診をおすすめします。


参考文献

  • 石田 卓夫 (監修)『勤務獣医師のための臨床テクニック』チクサン出版社 (2004/10/1)
  • Nelson DVM, Richard W. , Couto DVM, C. Guillermo (著)『Small Animal Internal Medicine』Mosby(2013/12/16)

Spcial Thanks:獣医師として、女性として、 両立を頑張っているあなたと【女性獣医師ネットワーク
女性獣医師ネットワーク
女性獣医師は、獣医師全体の約半数を占めます。しかし、勤務の過酷さから家庭との両立は難しく、家庭のために臨床から離れた方、逆に仕事のために家庭を持つことをためらう方、さらに、そうした先輩の姿に将来の不安を感じる若い方も少なくありません。そこで、女性獣医師の活躍・活動の場を求め、セミナーや求人の情報などを共有するネットワーク作りを考えています。